66
竜退治を終え、年末も近いので拠点でゆっくりしていた。アルツは依頼を受けたがっていたが、依頼そのものも時期的なものもあって少なくなっている。ギルド自体は運営しているが、依頼する側はまた別だ。
そうして、俺は年末の城でのパーティーの時期までゆっくりしていた所に来客が訪れる。
「お邪魔します、お兄ちゃん」
「ここがハルトの買った家か。宿屋かと思ったぞ」
「大きいわね。もう少し連れてくればよかったかしら?」
「……連絡なくてわるかったね、ハルト」
我が家のご一行である。メイド、執事、召使もいるが、馬車で来たこともあってそこまで人数は多くない。一応この拠点の使用人もいるのだが。客人の世話はその家の人間の仕事ではあるだろうけど、せめて事前に連絡は欲しい。そもそもここのことを教えていないのになぜ来ているのか。
「ルティ……」
「私じゃありませんよ? 購入費用をこちらに送ったじゃないですか」
確かにそうだが、だからと行ってあっさりとここに来れるかというと疑問である。まあ、俺に着けてる諜報員をメイドや召使としてこの家で働かせているのだから場所が分かるのは当然なのだが。
「ハルト様ー!! お久しぶりですっ!」
「おおっと」
脱兎のごとくこちらに駆け寄ってくるリフィを受け止める。元気いっぱいなのはいいことだが、貴族の令嬢のとる行動ではないのはやはり気になる。なんだかんだで相応の場では貴族っぽいふるまいはできるのだが。いや、あれは大人しくしているだけか。
「久しぶり、リフィ。そっちは何かあったりしたか?」
「ルティちゃんともっと仲良くなりました!」
特に何もないようである。まあ、家で過ごしているのに何かがあっても困るわけだが。しかし、ルティもリフィと仲良くなっているようだが、ルティの性格というか、性質というか、そのことを考えると何か裏があるのではないかと思ってしまう。流石にちょっと疑りすぎか。
「……えっと、何の用でここまで?」
「言わなくてもわかるだろ。そろそろ年の終わりだからな」
「ということは、やはり城のパーティーがあるまで滞在すると」
「そうなる。世話になるな」
まあ、それはかまわないが。
「お前がここの購入費をこっちに送ってきたのには少し驚いたがな。普段あまり物を買わないお前がこんな大きな買い物をしたのもそうだが、値段がな」
「まあ、土地と建物を買うとなれば相応にお金がかかるから」
「値段にしては広いし、建物も悪いものじゃないみたいだがな。そのあたりは少し心配していたが」
ここは王城に近い、貴族の住む屋敷が多くある一等地みたいな場所ではない。どちらかと言えば外側よりなので、その分安い。
「ところで、お前の今のランクはどうなってる?」
「ああ……そういえば、魔窟の攻略をギルドに伝えたって聞いたけど」
「何、苦労に見合った報酬を出すべきだろ。それで、ランクはどうなった? あがっただろ」
確かにあれをきっかけに赤に上がったが。
「今は黄色だよ」
「……あれ? お前確か桃だったろ?」
「少し前にもう一回ランクが上がったんだよ。竜討伐でね」
「ほう。竜を……」
父さんがにやり、と笑う。
「よし、確かお前の仲間にアルツというのがいただろう? 今はいるのか?」
「いるけど……」
「いや、どうせならお前の仲間全員に挨拶するか。息子が世話になってるってな」
「……いや、いいけどさ」
「と、いうわけで俺の家族だ」
みんなに家族の紹介をする。紹介と言っても、アルツ、カリン、メリー、シェリーネは一度会っているのだが。それでも他の四人は初対面か。
「アルツたちは久しぶりというべきか。他の仲間は……ゼス以外は初めて見る人物ばかりだな」
「お、お久しぶりです領主様!」
ゼスが緊張した様子で父さんに挨拶をする。そういえばゼスは父さんの紹介だったか。
「ああ、久しぶりだな。あいつの紹介だったが、チーム内ではどんな感じだ?」
「はい、問題ないです」
「そうか」
父さんが他の三人にも目を向ける。シヅキはまったく緊張している様子がないが、そもそもシヅキのそのあたりの理解度合が不明だ。ミエラとエリナは、ミエラは少々緊張気味でエリナが気を張っている感じか。
「……エリナです」
「ミ、ミエラです」
「………………」
シヅキは挨拶がない。
「父さん、だんまりなのはシヅキ。基本無口だから」
「そうなのか。まあ、別に俺は気にしないが……ふむ」
父さんがエリナの方に軽く視線を向ける。何か気になることでもあるような感じだ。しかし、すぐに視線をシヅキにずらした。その目が見つめているのは、シヅキの腕。
「……まだまだだな」
力量を計っているのだろう。父さんの普通の基準がどの程度なのかは知らないが、見ただけで分かるものなのだろうか。
「修行中みたいだからね。アルツが修行をつけているんだけど」
「ほう」
父さんがアルツを見る。
「…………やるか?」
「……もちろん」
「外に出てやるように」
父さんとアルツが外へと向かう。模擬戦をやるつもりだろう。一応ジェイスが見張ってくれているだろうけど、まさか本気でやり合ったりしないだろうな。二人を追ってシヅキも出ていく。二人の対戦を見に行くのだろう。
「……父さんは相変わらずだな」
「あの、他の人もいるんですよね。挨拶するんですか?」
エリナが訊いてくる。多分父さん以外の俺の家族への挨拶はどうするか、ということだろう。父さんは仲間に挨拶をする、ということでみんなに会いに来たわけだが、母さん達やルティ、リフィは必須ではない。
「いや、別にいいよ。流石に家と違って母さんや妹やリフィがこっちに突撃してくるってことはないだろうし」
ちょっと不安は残るが。
「そ、そう。よかった」
「貴族と会うと粗相したら、と思うと怖いですもんね」
ミエラとエリナはほっとした様子である。他の面々も、貴族の相手になれているわけではない。安心した様子を見せている。こういうのがどちらかといえば普通の立場で、シヅキやアルツのようなものがレアケースなんだよな。
「じゃあ、俺は家族の方と話しているから、皆はゆっくりしてくれ」
「……部屋でゆっくりしてます。流石に下に降りていると出会いそうで怖いですし」
「そうだな、部屋でゆっくりしてるか」
メリーとゼスが上へあがっていく。それに伴い、他のメンバーも同じように上にいく。
「……あれ。エリナはいかないのか?」
「あ、そうですね……魔術に関して教えてもらうのはまた今度、ですか」
「まあ、あんまり家族が来ている間に余裕はないな」
こちらの声には答えず何か考えている様子だ。そういえば父さんがエリナに目を向けていたが、一体何だったのだろう。何かあるにしてもわざわざ詮索はしないが。
「それじゃあ、上で休んでます」
「ああ」
みんな部屋に戻るようだ。下に残っているのはアルツとシヅキくらいか。あの二人の模擬戦大丈夫かな。身に行くか。
「お兄ちゃん」
「……ルティ、驚かせるなよ」
気配を消していきなり現れてきたルティに驚いた。どうやら先ほどから物陰にいた様子だ。
「リフィちゃんのところに行きましょう。話聞きたがってますよ」
「……それを伝えにわざわざ?」
「いえ。いろいろとメイドや召使に聞くことがあったので。そのついでです」
ああ、そういえば。
「人に監視をつけていたみたいだが。流石に怒るぞ?」
「でも、役に立ったでしょう。監視というよりはいざというときに使ってもらうための物ですし」
「嘘つけ。前からこっちのことを色々知っていたのはあの監視のおかげだろ」
「遠方で一人奮闘する家族を心配する妹心というものです」
物は言いよう、というか。最も、俺としてもあまり責めるつもりはない。確かに役に立ったのは事実だし、ルティはこちらの不利になるようなことは基本しない。
「まあ、いいさ。リフィのところに……行く前に父さんの模擬戦を見に行くか」
とりあえず、ある程度でやめさせておかないとだめだろう。父さんの方はある程度分別はあるが、それでも熱が入ればなかなか止まらなくなるからな。




