表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
167/485

46

 目の前に影が見える。その影は見上げなければ一番上まで見通すことができないほどの巨大な影だ。その影は一歩ずつ大地を踏みしめ、自分のいた街へと進んでいく。その影は巨大な竜だった。話に聞く竜とは違い、二本の足で人のように立ち移動する竜だ。その特徴自体は話の中の姿と変わらない。大きな翼、角の生えた頭、ただ二本の足で立ち、移動することだけが大きな違いだった。その影の向かう先、その先は王都だった。

 竜は王都まで近づくと、王都に向けて炎を吐く。その炎は黒色をした炎で明らかに普通の炎とは違う。その炎は物に当たっても燃え上がるようなことはなかった。ただ、侵食するようにその炎が触れたものを燃やし続ける。風を受けても燃え上がることはなく、水をかけられても消えることがない。あまりに異様で、恐ろしい光景だ。あの炎を受ければ、確実に触れている部分がなくなってしまう。場所が悪ければ死に一直線だ。

 自分は、そんな竜に恐怖、畏怖、かなわないという恐れを抱きつつも、近づいていく。何故ならば、竜に師匠が向かっていったからだ。師匠は俺よりもはるかに強い。そんな人ならば竜を倒すことができるかもしれない。未熟な身だが、師匠の手助けくらいならばできるかも、と師匠を追っている。王都は自分が暫く住んでいた場所だ。その場所を守りたい、という気持ちがないわけでもない。

 移動している途中、師匠が竜の体を駆けのぼっているのが見える。まず最初に間に合わなかったという気持ちが浮かぶ。俺より師匠の方が早く行動していたし、移動も速いのだから当たり前だが、せめて師匠が攻撃するまでには間に合いたかった。これでは手助けはできないだろう。師匠は竜の体を駆けあがり、持っている槍で攻撃していく。俺や他の弟子に対して教えるときは剣を使っているが、師匠が最も得意としているのは槍だ。それはこれまでの何度かの闘いで分かっていることだった。槍は竜の体を貫くが、その巨大さゆえに師匠の槍も通じていない。いくつか技を使うが、それでも竜からすればちょっとした切り傷程度だろう。

 竜は師匠の攻撃によるダメージは微々たるものだったはずだ。しかし、ちくちくと自分に傷を与えてくる存在が体をうろちょろとしていれば気になるし、煩わしく思うのは当然だ。竜は翼や腕を使い、師匠に攻撃をする。師匠もその動きを察知し、加速して回避する。俺たちの剣の流派にとっての最大の強みは数多の技よりもこの加速だろう。

 何度か竜に攻撃し、師匠が気を引く。しかし、竜はある程度攻撃して通用しないとなると今度は師匠を無視し始める。攻撃しても通じない、届かないのであれば、多少のわずらわしさがあるものの、気にしないというのも一つの選択だろう。しかし、それは知性が高い生物の特徴のはずだ。竜はそこまで知性が高い存在ではない。魔物として強力ではあっても、そこまで頭がいいとは聞いたことがない。遠目に見える師匠も眉をしかめている。流石に自分の攻撃が通用せず、今度は無視までされたのだ。未熟な俺でも気にする。師匠も気にして当たり前だ。

 流石に体にダメージを与える程度ではだめだと、一気に頭まで駆け上がる。そして、師匠はある構えをした。俺はその技の構えを見たことがなかったが、今まで見た師匠の技の中でも異質、感じる空気、力が全く違うものだった。その一撃を師匠は竜へと放つ。たった一突きに見えたが、その突きはまるで無数の流星のように竜の頭に大きな傷を穿った。竜は吠え、痛がっている。しかし、それだけだった。竜に痛打を与えることができでも、その一撃が大勢に影響を与えるようなものではなかった。全力が届かなかった師匠は歯噛みして悔しそうにしているのが見える。そしれ、その一撃を放つために空中に躍り出た師匠はそのまま落下をしていく。その師匠を竜が逃すはずもなく、黒い炎を師匠へと放った。

 俺は全力で叫んだ。そして、師匠の方へと走っていった。あの黒い炎を浴びていれば命が残っていることはないだろう。それでも、俺は走った。そのさなか、黒い炎の中から落ちてくる影を見つける。師匠だ。師匠はそのまま落下していき、下にあった建物へと墜落した。あの程度であれば、俺たちがいつも受ける攻撃と大差ない。大きなダメージ、傷はあっても死んでいることはないだろう。しかし、心配だったので見に行くと、黒い炎に腕を焼かれている師匠の姿があった。

 こちらを見ると弱々しく叱ってくる。師匠はあの炎に咄嗟に技を放ち、直撃こそ避けた物の、武器と武器を持つ腕に炎を当てられてしまったという。師匠は俺に対し、腕を斬るように言う。そんなことをすれば師匠はこれ以上闘いを行うことは出来なくなるし、下手をすれば死ぬ。そんなことをしたくない、と言ったが、師匠は黒い炎に腕をやられている。いずれは黒い炎が師匠の体まで侵食し、命を奪うだろうと言った。確かに黒い炎がそういう動きをするのは今までの様子からわかっていたことだ。俺は悔しかった。師匠の腕を、俺が斬らなければいけないことが。

 師匠の腕を切断した俺は、敵討ちとでもいうかのように竜へと挑む。自分が未熟であることを忘れ、師匠でも勝てなかった相手に無謀にも挑戦した。その結果は言うまでもなかった。師匠でようやく大きな傷を与えられる程度の体に僅かな傷を刻む程度しかできず、俺は竜の攻撃を受け、地面に落ちる。そして、そこに竜の黒い炎が迫ってきた。俺が覚えているのはそこまでだった。黒い闇の中に俺の意識は消えていった。


「はあっ! はあ、はあ…………」


 今日もまた同じ夢を見た。今まで何度も見たことのある竜の夢だ。とっても現実感があって、夢を見るたびに恐ろしさではね起きている。

 この夢を見たのは師匠のところで神儀一刀を学び始めてからだ。初めはなぜこんな夢を見るんだろう、と思い、自分の修行が足りないからだと修行に打ち込んでいた。それでも、なおこの夢を俺は見続けていた。


「またこの夢か……」


 今回も夢の内容は変わらない。最後に俺が敗北して終わる夢だ。しかし、今回は少しだけいつもと違う。違うのは内容ではなく、理解。師匠の使う技、竜の存在に関してだ。


「似てるんだよな……」


 何が似ているのかというと、それは雰囲気だ。師匠の使う技は神の使ってきた技、天剣にどこか似ている。あの神が言っていたが、天剣は神儀一刀の奥義の手前の技だとかいう話だ。そう考えると、雰囲気の似ている師匠の使った技はもしかしたら奥義なのかもしれない。しかし、俺は師匠の奥義を見たことはないはずだ。ならばあの夢は何のだろう。

 あと、もう一つ。竜に関してだ。今回も竜は変わらなかったが、持っている気配が少し違った。違う、というのは意味が通らないな。正確に言えば、竜の気配がある気配に似ていた、ということだ。それは神と亜神だ。どちらにも似ているが、どちらでもない、って感じだった。なんといえばいいのかわからないが、持っている気配は神なのに亜神のような気配に変化しているというか。でも、夢の中の話だ。結局のところよくわからないとしか言えない。


「っと。ハルトは……よかった、起きてないな」


 ハルトは俺の入っている冒険者のチームのリーダーだ。俺がチームに誘ったんだけど、よくわからないままリーダーになった。いろいろと面倒なことをやってくれたりとすごい人間だ。よく叱られるが、それは俺が悪いのもある。でも、まあ、お互い信頼し合っているのは自惚れじゃないだろう。だからこそ、こんな姿は見せたくない。ハルトは俺を、俺の強さを信頼してくれている。だからこそ、弱い自分は見せたくない。今まで何度かこういうことはあったけど、いつもハルトは寝ていたからよかった。


「王都にはもう少しか……師匠の奥義、あれと同じかどうか見たいところだな」


 もし同じならば、あの夢はほんとのことなのかもしれない。たとえば予知とか、そんな感じの意味があるのかも。そういう可能性を思い浮かべつつ、再び俺は眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ