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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
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45

 ギルドで王都に行くことを話してから数日してシェリーネが用事があると宿に来た。このタイミングだと、唯一シェリーネだけが判断を決めていない王都行きについてどうするかを決めた、その話だろう。


「それで、用事は何かな?」


 泊まっている部屋に招き、シェリーネと対面して話す。同じ部屋にアルツとゼスも止まっているが、彼らは討伐依頼を受けて外に出ている。ここには俺とシェリーネだけだ。

 シェリーネは、どう話を切り出せばいいか少し迷っていたようだが、すぐに表情を真剣なものにして話を始めた。


「すう、はあ…………王都にわたしも行きます」


 少しだけ驚く。シェリーネはこの街に実家という拠点を持つ。ずっとこの街で活動していたのだからどうしても実家から出るのは難しいのではないかと思っていた。もちろんそうなるとチームから外れることになる。その場合どうする気なのだろうと思っていたが、王都行きに付き合うことを決めるとは。


「シェリーネはこの街に実家があるんだろう? 王都行きは拠点を移すのもある。この街に家族を置いていくことになるよ? その話は家族としたのか?」

「はい。家族と話して、決めました」


 強い意志のこもった目だ。シェリーネに会ったころはこんな目でこちらを見てくることはなかったが、長い間チームを組んでいる間に成長したのだろう。

 シェリーネは家族との話し合いについて語る。そもそもシェリーネは家族の仕事を継ぐ形で冒険者をしていた。もともとは採取依頼だけで、殆ど家を空けるようなことはなかった。家族も自分たちの仕事を継がせるような形で冒険者になった娘を心配に思っていたが、ほぼ家を空けることもなく帰ってきていたため心配することはなかった。

 その事情は変わったのはアルツに誘われ、俺たちとチームを組んでからだ。あの時から、少しずつ家を空ける機会が増えた。それでもまだ家族に心配をかける程ではない。冒険者という職業なのだからそういうことはある。だが、そのうち本当に何日も家を空けるようになり、遠出することになった。それも連続でだ。流石に長期間家を出ていたこともあり、大きく心配され、一日家で家族と過ごすということにもなったらしい。それは家族に心配をかけたというシェリーネ側の心情と、シェリーネが家を出て心配したという家族側の心情によるものだ。そういう機会を作り、家族側の心配を無くしたいという気持ちがあったのだろう。

 しかし、そんな中今回の王都行きの決定である。シェリーネはこの話を聞いて、家族にどう話せばいいか、自分はどうしたいか相当に迷ったらしい。拠点を移すとなると、家族とは離れることになる。別に未来永劫会うことがなくなるというわけでもないが、家族に会うにはこちらに帰ってくる必要があり、そんな機会はそこまで多くはないはずだ。結局、自分だけで判断できず、家族に話すことになったようだ。家族はもちろん、シェリーネが心配だということで反対した。チームを出て、家にいてほしい。そういった話になった。ただ、そんな中シェリーネに浮かんだある迷いに母親が気づいたらしい。そこで、シェリーネがどうしたいか母親が尋ねた。それを、本当に捨てて家に留まりたいのか、と。その内容についてシェリーネは言わなかったが、大体の想像はつく話だ。

 その時のシェリーネの答え、その気持ちを捨てて家に残れるか。結論は否。それほどまでにシェリーネの中にあったその気持ちは大きかった。それをその時はっきりと答えに出し、家族に伝えた。母親はそれで、王都に行くことを勧めたらしい。父親の方は反対したらしいが、母親に諭され、一応の許可は出したようだ。もちろん、それの結果が出ればその時に帰ってくればいいし、問題が起こったときに戻ってきてもいい。そもそも里帰りみたいなことがないわけでもない。チームに、年に何度もギゼルモルトに戻ってこれるように話をつけなさい、とも言われたようだ。もちろん、それはかまわないと言えばかまわないのだが。


「とりあえず、王都にはついてくるってことでいいんだな」

「はい。改めて、よろしくお願いします」


 別にチームを出て行ったわけでもないのだからそういうことを言う必要はないと思う。でも、シェリーネ的に心機一転と行った所なのだろう。


「よろしく。頑張ってその想いを成就させるといいよ」

「ふえっ!? そ、その想いって……あ、あの、気づいてたんですか?」


 気づいていないのはアルツだけである。あれほどわかりやすくカリンとバトってたら流石に多少鈍くてもわかるだろう。


「むしろわかりやすすぎるんだけど……あの馬鹿は全然気づかないけどさ」

「はうっ」


 別に俺はシェリーネを応援している、というほどでもない。むしろ俺の立場からすると、どちらかとか面倒な選択よりはどっちもという楽な道を選べばいいじゃないか、と思ってしまう。まあ、こういうのは貴族という立場とか、男だからとかそういう観点だからそう言えるのだろう。もし自分がシェリーネだったら、どっちも選べばいい、なんて言えるはずもないしな。








 そしてシェリーネの王都行きを決めた話をして数日後、全員でギルドに集まり、そこでシェリーネが一緒に王都に行くことに決まったと報告し、王都にチーム全員が行くということが改めて決定した。

 ギルドは基本的に拠点としている場所のギルドに所属している、ということになるが、拠点を移すとなるとギルドも移すということになる。冒険者がどのギルドで主に活動しているかはその冒険者との連絡をつける意味でも重要なことだ。なので、いつもの受付さんに王都に拠点を移するつもりであることを告げる。


「そうですか……拠点を移すとなると所属も変わりますね。あなた方とはギルド長に色々言われたこともあってそこそこ長い付き合いでしたけど、これでお別れになりますね」

「もうギルド長云々で大変なことになるのはなくなるのでいいんじゃないですか?」


 何故か俺たちが行くと受付の担当がこの人であったりとか、連絡をつけるメッセンジャー的な役割を与えられたりとか、まだ来ていないのかとかの催促とか。だいたいギルド長のせいではないだろうか。


「そうかもしれませんね。それはそれでちょっと寂しいですけど」


 なんだかんだで顔見知り、知り合いが何処かに行くとなると寂しくはなるだろう。この受付さんはアルツがチーム加入を迫ったときからの知り合いだ。こちらとしても少々別れとなると寂しくは思う。

 その後はここのギルド所属であることを外し、王都で所属を移せるように書類を作ってもらい、それを受け取って話は終わった。別になくてもいいが、あると話が通りやすく楽になるらしい。最後の最後までお世話になっている。盛大に感謝しよう。

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