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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
villain
16/485

1

なんで自分はこんなことをしているのだろうか、と時々思う。


「ほら、おとなしく捕まってろよ」

「ひぃっ!」


いくら就職難とはいえ、応募した先が悪の組織で怪人として仕事をする羽目になるなんて誰が思うだろうか。

就職できたのはいいが、色々と面倒に巻き込まれている。いや、怪人は基本的にその面倒を起こす側だけど。

最初に仕事先に出向いていきなり改造された。今時改造は古いんじゃないか、と話を聞いて思った。

その後、怪人として市や街のお偉いさんを捕まえて従えてその管轄を支配下に置くことになった。

いや、そもそもお偉いさんを捕まえたからって支配下にできないだろとか、国はどうしたとか、色々と思った。

でもなんか国とは色々と協定があるらしい。なぜかというと、悪の組織は相当の科学力、怪人みたいな戦闘力を持つからだ。

つまりいつでも悪の組織側は物理的に侵略できるのだ。なんでしないのかは知らないが、色々あるのだろう。

まあ、そういう形で悪の組織側としてはお偉いさんを拉致るのが主な仕事となる。

しかし、ただ拉致るだけでいいのなら怪人なんてわざわざ作る必要はないのだ。まあ、悪の組織があるというならお約束として……


「待ちなさいっ!!」

「はぁー……」


正義の味方側の組織もある、ということだ。







「それ以上の悪行、このイエローデイジーが許しませんわ!」


その名前はどうなんだと思う。いや、魔法少女なんて昔からこんなものかなとも思う。

魔法少女なんて言うが、彼女はどちらかと言えば深夜アニメタイプ、日曜の朝にやってるような子供向けの番組のタイプではない。

しかし衣装はすらっとしたどちらかと言えばカッコいいタイプの衣装なのに名前は残念だ。色に花の組み合わせってのは安直じゃないだろうか。


「めんどくさいなぁ。許しません、って具体的にどうするのさ」

「倒させていただきますわ! 大人しくその捕まえている人を離すなら見逃してあげてもよろしくてよ」


嘘つきめ。正義の味方側が怪人を見逃すわけがない。

相手が子供向けの魔法少女ならこいつを殺す、って脅すんだがこの手の年齢の高い魔法少女はこっちの事情を熟知している。

傷つける、くらいは少しならできるが殺すなんてできるはずがない。盾にしたところで無視して倒されるのが関の山だ。


「あっそう。じゃあそうさせてもらうよっ!」

「!?」


捕まえている市長をイエロー……魔法少女に投げつける。流石に投げつけられたのをそのまま受けるわけにも行かないし、払いのけるわけにも、避けるわけにもいかない。


「バインド!」


あー、魔法で来たか。普通の人間に魔法少女の使う魔法は傷つかない。物理的破壊力も起きないのでとても安全だ。

ただ、怪人は当たれば死ぬ。いや、直撃しても死なないやつは死なないのだが。まあ、怪人はダメージを受けるということだ。

どうやったらそんなことができるのか知りたいところだが、そもそも正義の味方側の科学力も悪の組織側の科学力もどこから来たのか不明だ。上のほうは知ってるみたいだが……


「ブリット!」

「ちっ!」


相手が魔法弾を放ってくる。いや、実は避ける必要はないのだが、つい避けてしまう。

怪人に改造されたとき、改造された奴らは全員特殊な能力を身に着けた。これは自分で選べるわけでも改造した側選べるわけでもないもので、それぞれ独自のものであるらしい。

その能力もあり、自分は魔法少女の魔法はまるっきり効かないのだが、安全だからって目の前にボールが来たら避けるのと同じでつい避けてしまう。

何度も飛んでくる弾丸を避けつつ、誘導されている? と感じた。気が付けば目の前に魔法少女がいた。そのまま殴りかかってくる。


「最近の魔法少女は格闘戦もできんのかよっ!」

「淑女の嗜みですわっ!」


恐らくいいところのお嬢さんなのだろう。所謂お嬢様系の口調だし。いや、てか結構格闘戦やばい。


「っ!」


肉体は改造により強化されているが、わき腹にいいのをもらう。流石にきついので一度後退する。


「マイン!」


逃げた自分の周囲に数十の光を放つ円が浮きでる。呪文からして確実に地雷だ。格闘戦を挑んだのはこれの魔力をためるためか。


「逃げられるものなら逃げて見せなさい!」


もっている杖の先に魔力が収束していくのが見える。一撃の威力が高い強力なタイプの魔法は外に魔力の収束が確認できる。

うちの首領の方針で悪の美学だかなんだか知らないが一度はまともに戦ってやれと言われている。

正直言って面倒くさいし、最初から本気で挑まないほうが失礼だと思うのは自分だけだろうか。いや、仕事だからやっているだけなのでどうでもいいといえばどうでもいいことなのだが。

まあいい。このまま攻撃を受けても無事だがそれではこちらの特性がばれてしまう。いや、そういえばもうばれているんだったか。なんでもいいや。






スッと空間の雰囲気が変わる。目の前の地面には光の輪、魔法少女の杖の先には収束した魔力の塊。しかし、そのどちらも動きが停止している。

それらだけではない。魔法少女、連れてきた市長、それら以外もすべて、空間全ての動きが止まっている。

動きが止まっている、というのは正確ではない。正確には時間が止まっている、というべきだろう。それも正確ではないが、その認識が一般的な感覚だ。

よく時間停止で自転がどうとか、空気がどうとか光がどうとか、色々といわれるが、ああいうのは物理的な時間の停止の場合で、概念的な時間の停止の場合ではない。

まあ、そのあたりの話は今はどうでもいいだろう。この時間が停止している空間で自分は自由に動ける。

時間が停止している間はたとえこの地雷を踏んでも問題はない。そもそも踏んだことを認識していないので仮に時間が動き始めても爆発はしない。

悠々と魔法少女の所まで歩く。自分がその手のゲームの主人公ならこのまま色々されてしまうのだろうが、ただのしがない悪の組織の一般怪人だ。

額をつかみ、そのまま押し倒す。同時に時間停止から帰ってくる。


「あぐっ!?」


唐突に額をつかまれて後ろに倒され、そのままの勢いで後頭部を打つ。杖にたまっていた魔力が霧散する。

そして背中から倒れた魔法少女を全力で天井に向けて蹴り飛ばす。


「がっ!?」


ドガン、と屋根を破壊し、そのまま空中に飛ばされる。それを追ってこちらも空いた穴から屋根上に飛び上がる。

とん、と屋根を蹴って落下を開始した魔法少女をつかみ、近くにあった民家の屋根にたたきつけた。

屋根にあった瓦が破壊され吹き飛ぶ。魔法少女は動かない。流石にこれだけされては気を失っててもおかしくはないだろう。


「さて、市長に話しをつけるかな」


流石に逃げてはいないだろう。穴から降りて市長を再び捕まえる。正義の味方側と戦って決着がついているのだから頷くしかないだろう。




そうしてこの辺り一帯は悪の組織ジャシーンの手に落ちた。なんで自分はこんな名前の会社に応募したんだ。全部就職難が悪い!

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