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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
159/485

38

「やっと着いたか……」


 久々にギゼルモルトに戻ってきた。マルジエートの滞在や移動時間も考えれば月一つ分くらいは久しぶりか。


「ハルト、早くギルドに行こうぜ!」

「あ、私はちょっと家に戻ります」


 ついて早々にアルツはギルドに向かい、シェリーネは久々に家族の顔を見に行くということで家に戻るようだ。


「私とカリンは部屋をとってきます」

「あ、四人部屋二つな」

「相変わらず実際の人数より大きい部屋を選ぶのね……」


 宿泊費の支払いは俺の自腹で払っているから別にいいだろう。広い分には問題ないはずだ。メリーはカリンを連れて部屋を取りに行った。


「俺はここ初めてだからいろいろ見てくるな」

「ああ、別にいいけど……ある程度時間がたったらギルドか宿な」

「……迷子にはならないからな?」


 ゼスも街を見て回るようだ。王都にもいったことがないようだが、どのあたりで冒険者活動をしていたのだろう。しかし久々に一人で行動か。最もギルドに報告に行くからアルツがいるわけなので一人の時間は短いだろう。

 歩いてギルドに向かう。受付に行くといつもの人が受付をやっている。妙にタイミングがいいのだろうか。


「あ、ようやく来ましたね!」

「えっと……受付さん、お久しぶりですね」

「はい。帰還報告ですね。それはもう準備できています。それと、ギルドカードを出してください」


 言われたようにギルドカードを渡す。何か準備していたようで帰還報告がすぐに終わる。その短い間に愚痴を話される。


「アルツさんが戻ってきていたので早く来ないかと待ってたんですよ? 色々ギルド長がうるさくて、つい先日もちょっと何か報告があったとかでですね……」


 どうもギルド長にはかなり気にかけられているようだ。そんなにゴブリンの巣の討伐が大きかったのだろうか。


「アルツさんと同じ、赤にランクアップになります。新しいギルドカードを持ってきますので待っててくださいね」

「え?」


 流石にちょっと早くないか、と言おうと思ったがすぐに受付の人が奥に引っ込んでいく。仕方ないのでしばらく待っていると新しいギルドカードを持って戻ってきた。


「はい、新しいカードです」

「ありがとうございます。でも、もうランクアップですか?」


 たしかマルジエートに向かう前に桃にランクアップしたはずだ。道中も依頼を受けていたが、それでも早すぎる。


「ギルド長が色々言っていましたけど、魔窟の攻略が要因だそうです」

「……あれはギルドに出されていた依頼じゃないはずですけど」


 俺に話を持ち掛けてきたのは父さんだ。そこにギルドを挟んではいない。そうであるならばギルドのランクアップにかかわるようなことはないはずだ。


「いろいろ事情はあるみたいですけど、マルジエートの領主様から話が合ったみたいで。本来ならギルドに出すような依頼だったはずらしいですけど、マルジエートはギルドが少ないせいもあって冒険者の数が少なく頼みづらい、そこで直接冒険者に頼む形になったと。直接報酬を支払ったが、ギルドへの評価にならないのはもったいない、ということで後からギルドに出した依頼、ということにされたみたいです」

「それいいんですか?」


 嘘ではないが、真実でもない。そもそも後から依頼であったことにする、なんてことをしていいのだろうか。


「まあ、相手は領主様ですし、貰うものは貰ったみたいですから」


 金と権力、というやつだろうか。それでいいのか、ギルド。


「あ、ちゃんと実際の事情はきちんと調べているみたいですよ? 流石に実際にしていないことを評価する、ということはしていません」

「そうですか」


 ちょっと納得がいかない。だが、あまりグダグダ言っても仕方ないだろう。そのあたりで話を切り上げ、受付から離れようとした。


「そういえば、アルツはどうしたんです?」


 ギルドに来てからアルツの声を聞いていない。あれで結構うるさいので声が聞こえないのは少し変だ。こっちに来る様子もないし。


「赤にランクアップした後、ギルドの討伐依頼を受けて出ていきました」

「………………そうですか」


 行動が速い。いや、勝手に討伐依頼を受けるなと言いたい。一応ソロも可能だろうけど、せめて一言言ってから行けと言いたい。

 アルツもいないということで、気にかかるような依頼がないかを見る。討伐依頼はあまり大変そうなのはない。アルツが受けたのが何の依頼かは知らないが、一人で受けても問題のない依頼ならばたいしたことがない依頼だろう。依頼の数は多いが難易度は大したことがない。


「アルツがやりたがるようなのはなさそうだな。採取もそうだが依頼の数は多いけど……」


 赤になったからといってすぐに赤のランクの依頼を受けるわけでもない。そもそもある程度以上のランクの依頼となるとそこまで数は多くない。十段階のランクとはいえ、一番上の黒は正直言って神話とか伝説クラスの強さ、その下の灰色で国一番とかのレベルだ。冒険者としてのトップクラスは青。その下が緑、父さんがこの辺りのレベル。その辺までは上の方の依頼はほぼない。あっても直接そのランクの冒険者に話が行く。黄、赤はかなり少ないが探せば見つかるレベル、になる。最もここみたいな普通の街だと時々ある、くらいになる。基本的に桃、橙、茶のランクがほとんどだ。桃は少し少なめだが。

 王都のように人が多い場所ならば色々な依頼がある。ここで依頼の種類を見るかぎり、やはり王都に行きたいところだ。








 そのあとはアルツが帰ってくるまでギルドで待つ羽目になった。シェリーネが一度ギルドに来てギゼルモルトでは自分の家にいるので用がある場合直接そっちに来てほしい、と伝えてきた。そういえばここにシェリーネの家があるのだから女性側は三人部屋でもよかったか。まあ、広い分には困らないだろう。どうせ支払うのは俺だ。ゼスが戻ってこないこちらを見にギルドに着て、一緒にアルツを待つ。結構遅めの時間いアルツがようやく戻ってきて、その報告をしてから宿に戻った。

 そして翌日、シェリーネを含めない五人でギルドに来る。シェリーネを入れないのは久々に家に戻ったのだから家族と過ごすのもいいだろう、という配慮だ。


「討伐依頼……討伐依頼……」


 アルツが討伐依頼を探している。別に依頼がないわけではない。アルツが満足するような大きな依頼がないだけだ。


「赤になったんですか……」

「赤の依頼は貼ってないみたいね」

「こういうところに難易度の高い依頼はないよな」


 他のみんなも依頼の事情は大体理解している感じだ。


「適当にいくつか依頼を受けるか」


 大きな一つの依頼がないのであれば複数の依頼で満足しよう。そう思っていると、いつもの受付の人が話しかけてくる。


「えっと、すみません。ギルド長がお呼びです」

「…………」


 ああ、なんといえばいいのだろうか。確実に厄介事だ。せめてアルツが満足できるような討伐関連であってほしいところだな。

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