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ギゼルモルトへと帰還する道すがら、ゼスを含めたチームで幾らか依頼を受ける。メンバーが六人になったので、採取や討伐に均等に人を振れるようになったわけだが、その編成に微妙に迷う。チームの戦力は前衛が二、後衛が二、非戦力一。ここにゼスが加わるが、ゼスは戦力としては前衛よりだ。つまり前衛が三。この割り振りをどうするべきかが微妙なところだ。
一応戦闘経験を積ませるという意味合いや、護衛の経験を積ませるということでアルツを採取に振ったりシェリーネを討伐に振るわけだが、基本この二人はそれぞれ討伐専門、採取専門に近い。どちらに前衛二と後衛二を振り分けるか、ということになる。今はそれぞれ一人ずつ入れて試しているところだが、最終的にどう割り振るべきだろうか。
「依頼内容見て何考えてるんだ?」
「お前が入って割り振りをどうするか、ってところだよ」
ゼスが話しかけてくる。こういう時話してくるのはメリーだと思っていたが。
「このチームは前衛が三人で後衛が三人だよな。それなら前衛二、後衛一と前衛一と後衛二だろ」
ゼスの言うことは順当な内容である。まあ、それくらいはわかるものだ。
「シェリーネは戦闘能力がほぼない非戦闘員に近い。後衛には含められないな」
「そうなのか? でもバランス的には大して変わらないだろ。前衛二、後衛一と前衛一と後衛一になるだけだろ?」
「まあ、そうなんだけどな。問題はその内訳だよ。一応入れ替えで様子を見る感じだけど」
別に固定にする必要もないが、ある程度各自で依頼を自由に受けられるようにはしたい。そのためには動くチームがある程度決まってる方がやりやすいだろう。大きな討伐依頼にはシェリーネを連れていけないし、その討伐に時間がかかるのであればその間チームを分けて行動するのもありなはずだ。最も、そうするにはまだ人数が少ないとしか言えない。チームを大きくしすぎるのもどうかとは思うが、目標は大きいほうがいいだろう。
「入れ替えって言ってもそれほど人がいるわけでもないのに考えてもなー」
「そうですね。シェリーネさんを含めても六人、その人数だとあまり依頼に参加するメンバーの入れ替えを考える必要はないですよ」
メリーも参加してきた。
「…………まあ、そうだな。無理に採取を受けずシェリーネには残ってもらうのでもいいだろう」
だけどいずれは拠点が欲しい。ギゼルモルトにずっといても悪いとは言わないが、大きい所に拠点を持ちたい。そう考えると王都に移りたいところだが、アルツが王都に戻りたくはないと行っていたから今のところは置いておこう
「……ハルトさんは何をしようと考えているんですか?」
「いろいろと便利だから王都に拠点を持ちたいと思ってる。依頼の量も内容も上を目指すなら王都の方がいいし、向こうは物もいろいろあるしな。俺としても便利な面があるから」
一応は貴族である。今は父さん辺りが対処しているが、俺自身がやらなければいけないこともいろいろある。うちの家訓はそこそこ知られているからお目こぼしされている感じだが、それでもやらなければならないことだってある。
「王都ですか……」
「俺は行ったことないが、どんな場所なんだ?」
「人の数が全然街とは違う、大きな建物も多いし、活気も全然違う場所だな。街の広さも全然違う」
ゼスは想像もつかないという顔だ。メリーはどうも行ったことはあるようで、特に反応はない。
「行けばわかるんだけどなあ……」
「行かないのか?」
行ってもいいのだが、アルツがどうしたいか次第だろう。
「アルツがどうも師匠がいる、ということで修行中の今はまだ戻れない、って言ってたからな」
アルツは自分がかくあるべしと決めたことに関しては意志が固い。無理に連れていくのは無理だし、無理やり連れて行こうとすればチームを抜ける可能性もある。
「ずっとギゼルモルトにいるのも悪くはないと思いますけど」
「俺は王都に行ってもっといろんなことをやってみたいけどな」
今のままでいい、というならば別に王都まで行かなくてもいいが、上を目指すならば王都で受ける依頼は必要になってくる。明確に目指すべき目標、かつての父さんのランクの緑になるつもりであるならば王都に行くべきだろう。
「……まあ、今はギゼルモルトに戻ることにしよう。すぐに決める必要はない」
焦って決めても仕方ない。シェリーネはギゼルモルトにある実家住まいなわけだし、王都に行くとなれば色々話をして許可をもらう必要もあるだろう。そういえば俺やアルツ、ゼスなんかは大丈夫そうだがメリーやカリンの家庭事情はどうなんだろうか。
「ちょっと聞きたいんだが、メリーとカリンは王都で拠点を持っても別に問題はないのか?」
「どういうことですか?」
よくわからないと言った表情で聞いてくる。
「シェリーネはギゼルモルトに家があるみたいだから親と話す必要があると思う。そういう事情はメリーやカリンはどうなのか、と思ってな」
同じチームの仲間と言っても家庭事情には深く突っ込むのは難しい。だがいつかは話さざるを得ないことでもある。今聞くのも悪くはないはずだ。
「…………カリンは親と喧嘩して飛び出してきたらしいです。成功して見返してやる、って言ってましたね」
「それはまた何というか」
冒険者はそういう成功譚が少なくない職業だ。そして同時に命の危険も大きい。単純に成功話だけを聞いて冒険者になっても大成するのは難しく、多くは怪我や実力不足でドロップアウトする。そこに女性ながら入ってくるとなるといろいろ事情もあるが、まさか自分から飛び込んできたタイプだったとは。
「メリーはどうなんだ? カリンと同じなのか?」
「チームに入ったばかりなのに遠慮がないですね、ゼスさん。私の場合は手っ取り早くお金が手に入るからです。半分は口減らしみたいなものですけどね」
軽く笑って言っているが笑い話ではないだろう。
「親が無計画に子供を作って、兄弟が多いんです。おかげで食べる物もギリギリで年の若い弟たちから一人二人奴隷に出すという話がでたくらいで。そんなことさせるわけにもいかないので、家を出て同時に冒険者になって、貰った報酬のいくらかを送っているんです。今はなんとかなったようなので、連絡だけ取っている状態ですけどね」
少し間違えれば家族の中から奴隷になってしまう人が出ていたとなると結構大変な話だ。一応奴隷は権利やら保護やらの規則はあるが、一度なってしまえば簡単に奴隷から脱するのは無理だし、恐らくは二度と家族に会うこともできなかっただろう。
かといってそれをさせないために躊躇なく冒険者になるということを選べるのもまたすごい話だ。
「あー、悪い」
「気にしないでください。何も問題が起きなかったからもう気にするような話でもありません」
もしかしたら隠しているだけかもしれないが、本当に気にしていないように見える。別に追い出されたというわけでもないし、今も家族とのやり取りは続いているのだから戻ることだってできるのだろう。ならば今も冒険者をやっているのはメリーがそうしたいからなのかもしれない。
「……ところで、依頼は結局何を受けるんですか? その依頼用紙をもったままですよね」
ああ、そういえば。
「そういえば依頼を受ける上での内訳を考えていたんだったな。今回は全員で受けることにしよう」
持っていた依頼用紙の二つの討伐依頼を受けることに決める。六人でやれば二倍の戦力だしな。別に人数が増えたから早く終わるってわけでもないけど。




