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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
157/485

36

 ゼスが仲間になり、馬車に一緒に乗って家へと戻った。目的で会った剣も作り、魔窟の探索も行い、結構どたばたとした休養だったと思う。ただ、そろそろ冒険者業に復帰するべきだろう。


「アルツの剣もできたし、俺も一度家に顔を出した。そういうことだからそろそろ冒険者業を再開したい」

「ああ、いいぜ!」

「わたしもそろそろ家に戻りたいです」

「まあ、ちょっと長めの休養だったわね」

「間に少し大変なこともありましたけどね」

「……俺はえーっと」


 ゼスはチームに入ったばかり、領主の家にも今日来たばかりで緊張気味だ。一応すでに自己紹介は終えているが、どうも以前はチームに女性がいなかったということでそれもあるようだ。


「俺たちの拠点は今はギゼルモルト。しばらくマルジエートを離れることになるから、ゼスは親父さんへの挨拶は大丈夫か?」

「あ、はい。家を出るときに既に挨拶はした。親父は元々冒険者だからほとんど帰らなくても気にしないし、大丈夫だ」


 言葉遣いは微妙に改善されていない。まあ、そのうち普通になるだろう。


「それなら、明日ここを発ってギゼルモルトに戻る。そういうことになるな」


 そういう風に話は決まり、今日がマルジエートでの最後の休日となる。流石にみんな休んでる……と思ったが、アルツとゼスは軽く模擬戦をするようだ。多分軽くですまないだろう。まあ、ギゼルモルトまではうちの馬車で行けるから多少疲れていても問題ないだろう。

 俺は父さんの部屋に行き、明日出発することを告げる。父さんも元冒険者なので軽い感じで行って来いと言われた。信頼されていると思うべきか、軽く扱われていると思うべきか。

 次に母さんとフェリスさんに会おうと思ったが、メイドに聞いたところどうやらルティとリフィと一緒にいるらしい。そういうことなので妹の部屋に向かう。ノックをしようとすると、その前に扉が開く。


「どうぞ、お兄ちゃん」


 ルティが扉を開いてくれたようだ。なんというか、何故気付いたと言いたくなる。


「あ、ハルト様!」

「あらー、ハルトいらっしゃい」

「ハルト、こんにちは」


 リフィはいつも通り突っ込んでくる。速度もそれなりで軽い衝撃だから受け止めるの簡単だが、淑女としてそれでいいのだろうか。母さんとフェリスさんも挨拶をしてくる。


「ふふ、家族のだんらんねー。はい、ハルトーお菓子よー」


 そう言ってクッキーの入ったバスケットを差し出してくる。俺がそこからお菓子をとる前にリフィが一つとってこちらに差し出してくる。


「ハルト様、お菓子です!」

「ありがと、リフィ」


 受け取って食べる。こういう場合は礼儀としてあーんをするべきなのかもしれないが、人前でするのも恥ずかしいし、リフィもそこまで考えていないだろう。

 しばらくは皆でお菓子をたべたりお茶をしながら話していたが、だいたいお茶とお菓子もひと段落就いたあたりで明日家を出発することを話した。


「もう行っちゃうのかしら? しばらくは戻ってこないのね?」

「まあ、そうなるかな。年末は一度戻ってくるけど」


 年末は一度貴族全員が王城に集まる行事がある。その時はどうしても家に戻らざるを得ない。


「寂しいです……」


 リフィが悲しそうな顔をする。こちらもリフィと離れるのは寂しいが、家の掟として冒険者業をやらなければいけない。


「また会いに戻るよ、だから我慢してほしい」

「はい……」

「リフィちゃん、お兄ちゃんが帰ってくるまで一緒に勉強して、綺麗になって驚かせましょうね」

「ルティちゃん! はい、そうですね! ハルト様! 次会うときは立派なレディーになります!」


 ルティのおかげで元気が出たようで何よりだ。ルティに感謝を込めた視線を向ける。ルティはこちらの視線に対して二コリとほほ笑むだけだ。悪意はないんだろうけど、何を考えているかわからなくてやはり少し怖いな、ルティは、本当に。

 その後は特に残ってすることもなく、自分の部屋に戻った。








 翌日。急いでいるわけでもないので朝食を家でとり、その後各自で準備をして家の前に集合した。ついでに父さん、母さんと家のみんなが見送りに来ている。既にみんな馬車に乗って、あとは俺が乗るだけだ。


「それじゃあ、行ってくるよ」

「ああ。俺を超えるくらいには頑張れよ」

「年末はちゃんと戻ってきなさいねー」


 父さんと母さんはわりと軽い感じだ。


「お兄ちゃん、何か必要なことでもあったら手紙でも書いて送ってください。リフィちゃんもいますし、手紙が来たら嬉しいと思いますよ?」

「ああ、そうだな……手紙くらいは送るよ」


 ルティに頼んだら限度はあるだろうけど大抵のことは本当に実現させそうで怖い。まあ、手紙を送るくらいは気にせずできるだろう。リフィとルティで別々にするか一緒にするかは迷うところだけど。


「ハルト様ー!」


 いつものようにリフィが抱き着いてくる。すこし強めに服を握ってくる。やはり寂しいのだろう。ここまで想われているのは嬉しいが、そう思うと置いていくのはすこしつらい。でも連れていくわけにもいかないしな。


「行ってくるよ、リフィ」

「はい! いってらっしゃいませー!」


 ぽふぽふと頭に手をやる。応えるように服を握る力が上がる。しばらくそのままでいたかったが、仲間も待っている。


「リフィ、手を放そうか」

「あ、はい!」


 無意識だったのだろうか。強く握っていた手を放し、離れる。


「行ってきます、父さん、母さん、フェリスさん、ルティ、リフィ」


 家族からの行ってらっしゃいの挨拶を背に、馬車に乗って家を発った。間に魔窟探索や剣の購入とかいろいろあったけど、結構長い休養だったと思う。

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