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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
156/485

35

「おー、お前さんがビュートの息子か!!」


 父さんの仲間の冒険者宅を訪問すると、体に色々な古傷のある引き締まった体をした男性が現れた。そして俺の側により肩を叩く。結構力があって痛い。


「そうです、少し痛いので叩かないでください」

「わはは、気にするな。しかしあの小さいのが大きくなったものだ。まあ、俺があったのは生まれてすぐだったがな!!」


 それは流石に記憶にない。


「それで、父さんから話は聞きましたが、息子さんのチームへの加入をどうするかですよね」

「ん? ああ、そういえばそんな話だったな。おーい、ゼス! ちょっとこっちにこーい!!」


 最初会った時の第一声もそうだが、結構大きな声だ。アルツといい勝負だろう。その声で呼ばれ、奥の方から人が現れる。


「何だよ親父……誰、そいつら?」


 奥から身長が高めな下半身ががっしりとした男が現れる。初対面の相手にそいつらはないんじゃないだろうか。


「おう、前に行ってた領主の息子だ! チームに入るかどうかの話はしてただろ! その件で来てくれたんだとよ!」

「えっ!? あ、え、あれって本当の話だったのかよ!?」


 まあ、領主である貴族の子息が冒険者をやっているとは思わないものだ。恐らくは眉唾な話として聞いていたのだろう。


「あ、すみません、俺はゼスです!」

「ハルト・マルジエートだ。あんまり畏まらなくてもいい。最初の話し方で構わない」

「え、あ、いえ、怖いんで丁寧に話せていただきます!」


 怖いとはどういうことだろうか、と言いたくなるがいきなりため口で話されるよりは印象は良いだろう。まあ、最初の話し方でいいと言ったのは俺なんだけど。


「それで、ゼス。君を仲間に入れるかだけど、実はまだ決まっていない」

「それはなんでだ? あ、何でですか?」

「君がどういう人間かわからないというのが一点。それにどの程度の能力を持っているかもわからない、というのが一点。仲間に入れるにも強すぎる人間や弱すぎる人間を入れると大変だからな」


 人間性は一応反応的には悪くないだろう。一応仲間に入れた後も様子を見て駄目そうならその時に決めればいい。入れてから別れるのは大変かもしれないが、できないわけじゃないし。


「なるほど……実力、っていうと俺は桃のランクだ……ランクです」

「それは聞いている。ただ、ランクだけで強さが分かるわけじゃない。実際に見てみないと分からないこともある」

「まあ、確かに」


 頷いてはいるが、納得が行っていない感じだ。


「君の方はどうなんだ? いきなり父親の仲間の子供のチームに入るっていうのは?」

「俺は別にいい……構わないと思ってる。新しくチームに入るにしてもいきなり他人が他のチームに入るのは難しい。こういう機会でもなければ他のチームに入ることができるのはいつになるかわからない」

「ソロは考えていないのか?」


 桃のランク以上ならば討伐依頼を一人で受けることもできる。最も、一人で行う以上はできる内容には限度があるだろうけど。


「俺の戦闘能力はあんまり高くないん……です。俺は味方を攻撃から守るというか、壁役が主で、攻撃があまり得意じゃないんです」


 なるほど。主に仲間の守りが主体だから単独の戦闘能力自体はそこまで高いわけじゃないのか。タンクとなるとチームには入れるに悪くないタイプだな。非戦闘員一人、後衛二人、前衛二人。一応俺は戦闘できるが魔術メインで近づかれるとつらく、メリーは近距離攻撃をほぼ持たない。アルツは守りを気にしないタイプでカリンは守りに戻ることもあるがあまり得意ではないはずだ。そう考えるとタンクが入るのはいいかもしれない。


「ということは、こちらのチームに入ってもいい、と思っているとみていいのか?」

「はい」


 あとはどの程度タンクとしての能力を持つかだな。


「じゃあ、ちょっと実力を試してもいいか。すみませんが木剣はありますか?」

「おお、あるぜ。ちょっと待ってな」


 そう言って親父さんは中へと入っていく。


「えっと……?」

「模擬戦、というほどでもないけどどの程度壁になれるか見てみたい。ダメか?」

「いえ!」

「実際に使っている防具を装備して外に来てほしい。そこで実力を見たい」

「わかりました」


 そう言って中に戻って装備を取りに行った。入れ替わりに親父さんが木剣を持ってくる。


「こんなのしかないぜ? いいのか?」

「別にいいと思います。アルツ、これ」

「おう、わかったぜ」


 後ろの方でで待っていたアルツを呼んで木剣を渡す。親父さんは近寄ってきたアルツをじっと見ている。


「ほう。かなりやるようだな」


 見るだけでわかる物なのだろうか。今もまだ冒険者としての能力が残っているのかアルツの実力を評価している。


「それじゃあ、ちょっと広いところに移動しよう」


 アルツと仲間を引き連れて広めな場所に移動する。親父さんもついてきている。どうやらどの程度戦えるのかを見たい様子だ。少し待っているとゼスが中から出てくる。


「あ、えっと、ハルトさんじゃないのか?」


 ああ、俺が言い出したから俺が戦うものかと思っていたのだろうか。


「いや、こいつ、アルツだ。俺は剣士じゃなくて魔術師だからな」

「おう、よろしく頼むぜ!」

「あ、ああ、よろしくな」


 ちょっと最初相手と考えていたのと違うせいか戸惑っているようだ。


「それじゃあ、開始の合図をしたらアルツは打ち込み、ゼスは防御。どの程度できるかをみたいから五回ほど、連続ではなく一度攻撃を加えた後アルツは下がってから再度攻撃を行うこと」


 アルツが木剣を、ゼスは持っている盾を構える。


「………………始めっ!」


 アルツが消えるように攻撃を仕掛ける。消えたように見えたが、神儀一刀の技は使っていないはずだがそれでも速い。金属音が響く。ゼスの方を見ると右から来たアルツの攻撃を盾で受けていた。


「くっ!」


 それから何度かアルツはゼスに攻撃を仕掛けるが、ゼスは何とか反応して耐えている。距離は置いているとはいえ、アルツの動きは速いし、その剣の速度もなかなかだ。一度防がれた後は防いだ方向ではなく下段を狙ったり、飛び上がって上から攻撃したりといろいろやってきている。それに対応しているのだから悪くはないだろう。


「そこまで!」


 アルツと戦って攻撃を全部防げるゼスは十分強いと思う。


「はあ……強いな、お前」

「お前も強いだろ」


 なんか戦闘を通じて感じたものがあるのか、仲良くなっているようだ。


「ゼス」

「あ……えっと、結果はどうなんだ?」

「ぜひとも仲間に入ってほしい。よろしく頼む」

「へ、へへ。ああ、よろしくな!」

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