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家に戻るともう夕方だった。その日もあまりリフィと話すことは出来なかった。
数日は家でのんびりしていた。みんなはそれぞれでやりたいことをしている。アルツはジェイスや父さん、カリンと模擬戦を行い修行、メリーは手持無沙汰で何か手伝うことはないかと言っていたので母さんのお菓子作りに参加させられ、シェリーネがそれに巻き込まれた。俺はルティの部屋でリフィとルティと話したり、勉強の手伝いをしたり、魔術を教えたりしていた。
そして、ある日の昼。みんなで食事をし終わったところで父さんが訪れた。
「あー、ハルト……とその仲間の皆、少し話良いか?」
父さんが俺や皆を見て話しにくそうにしながらも言う。
「俺はいいけど……みんなは?」
「別にいいぜ」
「大丈夫です」
「いいけど……」
「構いません」
特に皆断る様子もない。そもそも内容もわからないのに聞かない選択肢を選ぶのも難しいだろう。
「良いみたいだけど、話って?」
聞いてみたが、どうも言いづらそうだ。
「あー…………そうだな。単刀直入に言うぞ。お前たちのチームに新しい人間を入れられるか?」
チームに新しい人間を入れるのは別に構わないが、どういう意図だろうか。
「俺は別にいいけど……」
視線を仲間たちに向ける。俺はかまわなくても他のみんながどう思っているかは問題だ。
「ハルトさんが決めればいいと思います。リーダーですし」
反応してくれたのはメリーだった。カリンとシェリーネが同意している。アルツは特に変わらない様子だ。こういう時アルツは自分の意見がないというか、俺に任せきりというか、そんな感じである。
「……それじゃあ新人を入れるのは構わない。だけど、なぜ父さんはそんなことを聞いてきたんだ?」
父さんに視線を向ける。困ったように頭に手をやっている。困っているようだが新しい人間を入れられるかと聞いてきたのは父さんだ。そこには何らかの意図があるはずだ。
「実は俺の昔の仲間、冒険者時代の仲間の息子がな、冒険者のチームを解散してうちの領地に戻ってきてるんだ。最も一時的に戻ってきたってだけで、すぐに冒険者業に復帰するつもりらしい。そこで、どうせ復帰するならお前たちのチームに入るのはどうだろう、と思ってな。俺の息子がいるし、ランクも桃で同じランクだってことで、話を持ち掛けてよかったら、ってことで話をしてたんだ」
人のチームのことを勝手に決めないでほしいものだ。一応無理に仲間に入れろってわけではなさそうなのだが、息子相手とはいえ配慮してほしいところである。仲間もいるのだから。
「……どうする?」
一応父さんの話を聞いて、仲間にどうするかを聞いてみる。それに対しての反応は先ほどと同じ、俺が決めていいということであった。信頼してくれているのか、それとも責任を押し付けられているのかわからないが、どうするかをきめるのがリーダーとしての務めだだということなのだろう。
「はあ……えっと、父さん。とりあえず会ったこともない相手をチームに入れるか決められないから、一度みんなで会ってから決めたいと思う」
どんな人間かもわからないのにチームに入れるのは難しいだろう。父さんの冒険者仲間だから多分問題はないとは思うが、全く知らない人間のことを信頼するわけにもいかない。
「そうだな。少し話して会う機会を設けよう。その時どうするか決めてくれればいい。変な話を持ち掛けて悪いな」
俺の言葉に納得し、今度会う機会を作ってくれるらしい。そして今回の話を勝手に決めていたことを謝られる。そう思うならば最初からしなければいいのに。
「今度からは息子相手だからって勝手に話を決めないでほしい」
「ああ、わかってる」
話も終わり、邪魔して悪かったなと皆に告げて父さんは部屋を去っていった。父さんの出て行った部屋には少し先ほどの話の戸惑いからかしばらく沈黙が残っていた。
数日たち、剣を注文してから一週間が過ぎる。一週間後にはできている、と言っていたのでできた剣を取りに向かおうと父さんに馬車を使うことを相談すると、どうせ家を出るのならば冒険者仲間の息子にも会って以前話したことを決めてこい、とその冒険者の家を教えられる。その冒険者の家は都市に向かう道中の街ということなので、仲間たち全員で剣を取りに向かい、帰りにその冒険者の家に訪問することになった。
馬車で都市に行き、鍛冶屋に着く。用事があるのはチームの購入物の支払いをする俺と剣の持ち主になるアルツとカリンだけなので、他のメンバーは馬車に残ってもらうことになった。
「あ、前に紹介状を持ってきた人ですね。すでに剣はできてます。こっちです」
受け付けは以前に来た俺たちの顔を覚えていたようで、注文した剣は既にできていると言うので奥の方、訓練場に案内された。受付は訓練場に案内すると、鍛冶屋に戻る。しばらく待っていると、以前もアルツ達と木剣を交わした筋肉隆々の男性が二振りの剣をもって訓練場に来た。
「おう、できたぞ。こっちが男の、こっちが女のだ」
そう言ってそれぞれに剣が渡される。そして、訓練場に巻き藁を男性が立てる。
「斬ってみろ。そのあとお前らの様子を見て調整してからその剣を渡す」
まだ完成というわけではないようだ。アルツは言われた通りに巻き藁を斬る。以前も見たことがある軌道で巻き藁が切断される。ただ、今回は以前見た物よりもより速く、滑らかにいったように感じられる。アルツも剣にいい感触を得ているようだ。カリンも同じように剣を振るい、巻き藁を斬る。こちらは普通だ。そもそもアルツの斬り方が異常なんだが。
「よし、渡せ。調整してくる。それで一応完成だが、もし何か違和感でも残っていればいいに来い。その時は無料で調整してやる」
そう言って男性はアルツとカリンから剣を奪うように受け取って鍛冶屋の方へ行く。ここに残っていても仕方ないので中に入った。アルツとカリンの剣を待つ間、受付の人に料金の支払いの話をする。料金支払いは結構な額だが、父さんから魔窟討伐の報酬ももらっているし支払いをしてもまだ余るくらいである。滞在費もうちで持っているから攻略ととんとんと行った所だろう。
少し待って剣を受け取り、馬車に戻る。そして道中の冒険者の家へと向かい、話にあった父さんの冒険者仲間の息子に会いに行った。




