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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
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31

「なんでわかるんだ?」

「わかるからわかる。話している余裕はない、行くぞっ!」


 アルツが叫び亜神に突っ込んでいく。亜神はそのアルツの攻撃に対応する。正直言って、その高速の戦闘の中に入っていくことは出来ない。先ほど行った結構魔力を使った拘束もあっさりと破壊された。一応あれは結構な力でも破壊されない拘束だったはずだが。


「ねえ、どうするのよ?」


 カリンがこちらに聞いてくる。カリンもメリーもアルツと亜神の戦闘に入る余地はない。そもそも、アルツと対等に戦える相手にまともに挑んで勝てるはずもない。アルツの様子を見ているが、テンカウントを使ってはいても神儀一刀の技を使う様子は見えない。

 別にアルツは手加減をする目的で技を使用していないわけではない。恐らくは相手の強さを加味した上で剣の方が技の使用に持たなくなるからだろう。ここに来る前に先に剣を作っておくべきだった。


「今は待機していてくれ。多分メリーとカリンの攻撃だとどちらにしてもあの怪物……亜神には通用しないと思う」

「……わかったわ」


 認めたくはないが、実際に攻撃が通用しないのはわかっているのだろう。少し言っただけで退いてくれる。

 さて、ではこのまま見ているだけかというとそういうわけにもいかないだろう。亜神とアルツとの戦闘はほぼアルツ側が有利に見えるが、アルツの攻撃が有効打になっているようには見えない。傷を与えてはいるものの、その傷がすぐに回復するからだ。もしこれが体力を削っている状態に相当するのであれば、ずっと続けていれば倒せるとは思うが、ならばどの程度続ければいいのかという問題がある。それまでアルツの体力が持つのか、武器の耐久力が持つのか。そしてどれくらいの時間がかかるのか。

 アルツだけに任せてはおけない。こちらでも亜神にダメージを与えられるような攻撃を。問題は魔術が通用するかどうかだ。拘束が通用しなかったのは単純に力が強いのか、それとも魔術が通用しないからか。いや、あまり深く考える必要もないか。ならば亜神そのものに魔術を使わなければいい。


「"土に満ちし大地よ我が意に従いてその身で圧し潰せ"」


 まだ魔術の発動はしない。広範囲、あの亜神の下と上、この通路の天井と床の結構な範囲を対象にする。結構魔力を消費する面倒くさいやり方だ。そもそも土の魔術はそこまで得意でもないし。だけど風や水は駄目そうだし、炎は狭い洞窟で使うには少し難しいだろう。土ならば周りに大量にある。

 待機しながら魔術の展開準備はできた。


「アルツ! 魔術を使うから退け!」


 アルツは一瞬こちらを見て大きく飛び退いてきた。テンカウントを使っているから本当に早い。そして亜神もそれを目で追っている。向こうも早い!


「"土流縛鎖"!」


 待機させていた魔術を詠唱で発動させる。先の詠唱だけでいいが、正確なイメージ性を高めたほうが威力も上がる。床と天井で魔術が発動し、その土の壁が亜神を挟み込む。流石に魔術そのものを無効化するとかそういうのだったらわからないが、これだけの質量を用いた圧殺ならば通用しないはずがない。競り上がった床、降りてきた天井に挟まれ亜神の姿見えなくなる。一時的に。


「嘘だろ……?」


 天井を、床を押し返すようにして亜神は隙間を作りその体を圧殺する土の範囲から出そうとする。今のところ右腕と上半身だけが出ている状態だ。あれだけの質量で押し潰してもなお生きているというのは恐ろしい。というかこのままじゃ脱出される。


「後は俺がやるぜ!」


 どうしようと焦っていたところにアルツが上半身を出していた亜神に迫る。亜神は近づくアルツを見つけ、右腕で攻撃しようとしたが、動ける範囲がほとんどない亜神の攻撃は簡単に回避され、アルツの斬撃が亜神の腕を根元から斬り飛ばす。右腕は今まで復活していたが、根元から切り落とされれば復活はしないようだ。


「神儀一刀、鬼振り」


 土に潰された中から突き出ていた上半身が切り飛ばされ崩れ落ちる。上半身だけになってもまだ死んではいなかったが、少しすると動かなくなる。そして、切り落とされた右腕と上半身はボロボロに崩れて消えていった。







「なんだったんだあれは?」


 先ほど戦っていた相手について四人で話す。流石にあまりに異色すぎる相手だ。もし他にもいれば絶対に会いたくない相手だ。


「変異種では……」

「この魔窟の魔物の様子から変異、というにはちょっと異質すぎる。多分違うだろう」


 変異種でもあまりに違う別の生物が生まれるわけではない。


「アルツは亜神って言ってたけど何か知ってるのか?」


 アルツはあの存在のことを亜神と言っていた。しかし、何故亜神? あれが神とかそういう部類の存在だったということなんだろうか。それならば神様を倒すのは良いのかとかいろいろ思ってしまう。


「ああ、知っているって程じゃないんだけどな」


 アルツが言うには、神儀一刀を学んでいる人間は神という存在について感覚的にわかるらしい。そもそも神儀一刀の目的は神殺しである。神を殺して問題ないのか、とも思うが神は殺しても死なないらしいので問題がないらしい。神儀一刀は神を殺すことが目的というよりは、神を倒すことのできるような技を得ることが最終目標になる。

 しかし、そもそも神という存在は地上に降りる際にその存在を隠すので見つけるのは難しい。そりゃあ大々的に降りてきたら大変なことになるのだから当然の話である。そんな地上に降りてきた神に挑戦するには神がどういう気配なのかをわからなければならない。それを本能的に察することができるのが神儀一刀を学ぶ条件でもあるらしい。

 そして、その中で神とは違う神、神になりそこなった力の塊の存在がいる。それが亜神であるらしい。気配が神に似ているという話で、間違えて亜神を殺して神殺しを名乗らないように、と存在について教えられたらしい。


「……………………」

「……………………」

「……………………」


 アルツのその話を聞いて正直眉唾物というか、神儀一刀とは一体どんな流派なんだ、と思ってしまう。亜神についての疑問は解決したが、別の疑問が浮かんでしまった。


「まあ、あれに関してはいいか。もう倒しちゃったわけだし」

「そうですね。本来の目的に行きましょう」

「先に行く……のは無理じゃない?」


 カリンが向いた先、道の先は土でふさがれている。俺の魔術で亜神を圧殺しようとしたときに。カリンとメリーがこちらをじーっとみている。


「すぐに戻します」


 責めるような視線を受けながら土を魔術で天井と床に戻した。

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