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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
doll fantasica
15/485

E

前回の優勝者である今回の対戦相手、その使用しているドールは有名だ。

それは竜。竜型のドール。市販のものではない特注の特別なドールだ。

多くのファンタジー、創作において最強の種族とされる竜、ドールの世界においてもその戦力は最強といっていい。

だが使用者は少ない。市販のものではないから仕方ないところはあるが、同様に竜型を特注した者もいた。

その割に使用者が少ない理由においては使いにくさが人型程にあるからだ。竜型はその圧倒的な強さを持つ代わりに、燃費が極めて悪いらしい。

特注してまで強いが使いにくいドールを使いたいか、ということになる。

しかし、この燃費の悪い使いにくさを持った竜型をもって優勝している。竜型は強い、燃費が悪くてもその事実は変わらない。

戦闘エリアのユアは今回は双剣を装備させている。流石に竜と直接の殴り合いで戦闘するのは難しいだろう。

ユアが緊張しているのが分かる。直接見ていない自分も竜型の威圧感が感じ取れる。直接相対するユアが受けてる威圧は想像できないほどだろう。









戦闘が開始する。同時に相手の竜型が地を駆ける。この竜型は大きな翼を持ってはいるが、四足歩行の飛竜ではない通常の竜だ。

その動きは軽快だ。それは竜のサイズがそれほど大きくないことと恐らく動作に術式が作用しているからだろう。

竜型のドールの弱点、それはその燃費の悪さだ。数少ない竜型の使用者の負け筋のほとんどが魔力切れまで耐えられることに起因している。

相手の竜型はその弱点をカバーする、相手の逃走をさせないための機動力を持つタイプということだ。

ユアが竜型の体当たりを回避する。竜型はすぐに止まり、こちらに振り向こうとするが、そこにユアの攻撃が迫る。

今回ユアは最初から魔力強化を全力で行かせている。魔力の燃費の悪い竜型を相手にこちらが先に魔力切れすることを考える必要がない。

そしてユアの全力の攻撃が竜型に直撃した。がつんと音を立てて。


『なっ!?』


ユアが思わず驚愕の声を上げる。普段驚いてもあまり声を上げることがないが、それほの驚きだったのだろう。

いや、自分も声にならないほどの驚きを感じている。ユアの攻撃は全力だった。全力の強化攻撃が通らなかった。

それはつまり、まともに攻撃が通らないということを意味する。

僅かな時間だがこちらはあまりの驚愕に完全に動きを止めていた。その間に竜型はこちらに振り向いていた。

その竜型の口に明るい光が見える。


「ユア、避けろ!」


遅い。ユアもこちらの言葉に反応するが、動作が遅れている。無情にも、竜が吐いた炎がこちらを飲み込む。


「ユア!」

『だい………じょうぶ、です………』


まったく無事ではない。炎からユアが飛び出してきたが、その全身に酷いやけどを負っている。

相手にダメージはなく、こちらのダメージは大きい。炎から逃れたこちらを竜型が追う。


「ユア」

『はい』

「よく頑張った」

『っ!?』


降参を宣言する。まだ戦闘を初めてごくわずかな時間だったが、早々に大勢が決定している。これ以上無理に戦う意味がない。

こちらの敗北が決まり、戦闘が終わる。前回の優勝者との戦い、それはこちら苦い敗北となった。


















「ベスト4やったな!」


全国大会が終わり、結果が決まった。自分はベスト4に入った。


「おめでとー」

「おめでとう」

「すごいじゃない」

「……ありがとうございます」


大会後、友人である祐司や先輩、連絡先を交換したダブルスとサバイバルの対戦相手から連絡が来た。

お祝いの言葉であったが、どうせなら会って祝おうということになったのだ。

ただ、現実で会うというのは無理があったので、電子空間で会おうということになった。

部屋の一つを借りてそこで会い、ベスト4のお祝いということでパーティーとなっている。


「初出場でBランクでベスト4、とんでもない快挙だね」

「Bランクか……僕と戦った時はCランクだったからね、そんなものか」

「ベスト8に入ったんだからSランクになるんでしょ? とんでもない出世ね」

「いや、実はSランクにはなれないみたいです」

「おいおい、どういうことだよ?」


自分が出場したBランクがベスト8に入る、というのは運営側としては一種の想定外であったらしい。

そもそもBランクで全国に上がるのは相当難しい。ランクによる拡張の差が存在するからだ。

なのでAランクからSランクに上げる、という想定でのランクアップが考えられていた。

だが、Bランクで全国大会に出場し、ベスト8に入った存在が出てきた。そこで想定されていないBランクからSランクへの上昇というランク飛ばしの問題が出てきた。

そのあたりは運営側の問題になるのだが、ランク飛ばしという例を作るとランクアップでの拡張やそのほかのランク飛ばしの考慮など面倒が増える。

そこでこちらと話し合い、まずランクAに上がることになった。その後何度か戦った後Sランクに上がることになっている。


「面倒なことになってるわね……」


まあ、確かに面倒だがそこまで問題になるほどのことではない。


「それにしても、人型使いがベスト4か。二人目だったっけ?」

「一人目は私。二人目が智弘君だね」

「そういえば、あなたはベスト8なんだっけ? えっと……」

「美弥でいいよー。二人は智弘君の知り合いかな?」

「私は沢木香苗です。まあ、一度戦った相手というか……なんというか」

「そういえば彼に自己紹介はしていなかったかな? 新井良治。僕も彼と一度戦った仲、かな?」


そういえば自己紹介とかはしていなかったな、と思い改めて自己紹介をした。

先輩と祐司も加わって自分たちの紹介をする。


「しかし全国大会のベスト8とベスト4の二人、それにそのドールもいるとは…」


少し離れているところを新井さんが見やる。そこにはそれぞれが連れてきているドールがいた。

人型のドールが3人、それに犬型のドールが1体。沢木さんは連れてこれるドールがいなかったらしい。


「仲間はずれにされた気分ね。今度人型でも買おうかしら」

「いや、犬型がいいぜ!」

「確かに犬型は使いやすいし悪くはないね」

「人型使いが増えると嬉しいかな。お勧めはできないけど」


ドールについての談義が始まっている。なんだかんだでドールファンタジカで遊んでいるプレイヤーだ。

集まればその話になるのは必然だろう。ドールの話で盛り上がった。








「智弘君、今度全力で戦おうね」


ベスト4の祝いで開かれたパーティーが終了し、他の人たちが戻り最後に先輩が残った。


「そうですね。先輩の全力には興味があります」

「ふふふ。実は前回のベスト4なんだよ、これでも。今回は智弘君に譲った形だけどね」

「全力ならこちらに勝てる、ということですか」

「今はもうわからないけどね。Aランク、そしてSランクにあがるんだし」


ランクの拡張は極端に強くなるわけではないが、素の拡張は馬鹿にできるものではない。

特に上のほうでは術式を刻める量が一つ増えるだけで強さが変わる。


「正直Sランクを名乗れるほどの自信がないですけどね」

「流石に最強の竜の相手はちょっときつかった?」


ベスト4の戦い、あの戦いは降参という形で自分から負けを認めた唯一の戦いだ。

それまで負けなしというわけではない。何度も負けるということはあった。だが、それはあれほど決定的な敗北ではない。

あの圧倒的強さを見せられた戦いは心を折るような経験だった。


「あの時の智弘君じゃ勝てなくても仕方ないよ。Bランクだったんだから」

「ランクを言い訳にするのはちょっと」

「事実だよ。どう頑張っても届かないところはあるものだよ」


届かない強さ。ランクの問題なら、次は届くということだろうか。


「また、出ます。その時は勝ちます」

「それは私に勝ってから言おうねー。でも、智弘君ならできるよ。多分ね」


くすり、と笑い、言った。その後もう帰る、と言って先輩は戻っていった。

次の全国大会、その時自分が目指すのは優勝ということになった。

それは実に遠い、だが目指す価値のある目標だ。これからもユアともに頑張っていこう。

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