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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
god slayer
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23

 マルジエートに向かうことになったが、距離的にも一度での直行は難しい。アルツも討伐依頼を受けたい、魔物を倒したいと言うことなので、途中の街で数日の滞在をすることになった。まあ、ずっと馬車で旅をし続けるのもつらいだろうし、そういった息抜きは必要だろう。


「今日のシェリーネの護衛はカリンとメリー。アルツの討伐依頼に付き合うのは俺だ」

「おう!」


 アルツが元気よく返事をする。シェリーネ、カリンは俺の言ったメンバーの内容に不満そうな表情をこちらに向けるが、文句を言う気配はない。しばらく一緒にいてわかったが、どうやらカリンはアルツをかなり気にしているようだ。恋なのかどうかは不明だが、どうやら以前ミノタウロスの攻撃を防ぎ助けられたことからかなりアルツを意識しているのだろう。メリーもそのカリンの内情に気づいているようで、こちらに不満そうな顔を向けるカリンを見て苦笑している。

 俺たちのチームのメンバーが五人に増えたことにより、アルツがほぼ討伐依頼を受けることになった。アルツだけを行かせると下手をすれば帰ってこない可能性もあるので、引き留め、帰還、監視を行う人間もアルツの魔物の討伐に付き合うこととなっている。逆にシェリーネはほぼ採取依頼を受けることになっている。アルツが毎回依頼を受けるのに対し、シェリーネが依頼を受けるのはその時によってまちまちだ。すぐに回収できるような素材の依頼がかかっている場合なんかはよくやっている。基本的にシェリーネの採取依頼の護衛、アルツの討伐依頼に付き合う人間は持ち回りでやっているが、時々それぞれを討伐に付き合わせたり、護衛に行かせたりしている。

 そうやって街を移動し、依頼を受け那ながら進む。マルジエートが近くなった辺りでギルドで話している所、シェリーネに質問をされる。


「あ、あの……マルジエート領ってどんなところなんですか?」

「それ私も聞きたい」

「行く先の予習、ってことで教えてください」


 シェリーネに便乗してメリーもカリンも聞いてくる。アルツは興味なさそうな表情を……していると思ったが、何かを思いついたようでわくわくとした表情になる。


「どんな魔物がいるんだ?」


 やはりアルツはアルツだった。しかし、これだけアルツが戦いたがりならば、一度うちの父親と模擬戦してもらうのもありかもしれない。あれで結構な強さの冒険者をやっていたそうだし。


「マルジエートは国境沿いの領地で険しい山がいくつもあるな。そのせいもあって森も多かったけど、今はかなり切り開かれてる。坂道とか多くて場所によっては数百メートルの標高差があるくらいだな。まあ、平地では育てないような家畜がいたり、植生も結構違って珍しい木々もある。どうせ向かうのは領地に少ない平地に存在する領主の家になるんだろうし、もともとアルツの剣を作るのと、俺が一度家に戻るのが目的だからそこまでいろいろ観光する余裕はないと思うぞ」


 最も、あまり見て回って楽しいと思うようなところは少ないが。領地に関して聞いてきた三人は若干不満げな表情をしている。そんなに観光したいのだろうか。


「あと、魔物の討伐は行くつもりはないぞ。代わりに父さんに修行をつけてくれるように頼むからそれで我慢しろ、アルツ」

「本当か!?」


 ああ、もう目を輝かせているよこいつ。


「……確か、冒険者になるのが家訓なんですよね? ハルトさんのお父さんのランクはどれくらいだったんですか?」


 俺に聞かれても困る。俺は父さんの冒険者時代のことに関しては詳しくない。


「悪いが、知らないな」

「名前は? 有名人だったら聞いたことあるかもしれないし」


 ふむ。もともと貴族出身の冒険者だったら悪目立ちしているかもしれない。


「父さんの名前ならビュートだけど」


 メリーとカリンが何か思い当たることがあるように考え始める。


「ビュート……ビュート……」

「確か…………魔、剣士」


 メリーの呟きに机と叩いてカリンが反応する。


「そうだ! "魔剣士"ビュート!」


 とりあえずだ。


「カリン、落ち着け。大声出すと周りに迷惑になるからな」

「ああ、ごめん……でもあんまり気にしなくてもいいと思うけど」


 周りも結構騒めきが大きい。時々どこかで叫ぶような声が聞こえることもギルドではなくはない。だからと言ってあんまり大声を出して目立ちたくはない。性分みたいなものでついつい言ってしまう。


「自分でも気にしすぎだってのはわかってる、悪い」


 謝っておく。あんまり言いすぎると気分はよくないだろう。


「それで……"魔剣士"?」


 カリンの言っていた言葉の中に出ていた単語について聞く。


「ああ、そうだった。多分、"魔剣士"ビュートよ、あんたの父親」

「緑の冒険者、魔術と剣技を巧みに使い時に重ね合わせた技を使ったことからそう呼ばれていたそうです」


 ……確かに魔術関連のいくらかは父さんに教わったが。でも、剣を扱う前提で扱う魔術は俺向きじゃない。身体能力はそれほど高くはなかったからあまり深くはやらなかったのかな。


「しかし……緑か」


 今の俺のランクは桃。あと三つ上である。俺のランクの上りは結構な駆け足だが、この先はこのペースで上がることはないはずだ。目標にする相手としてはまだまだ遠い背中である。








 マルジエートに入り、ギルドやその出張所が少なくなる。その都合もあり、あまり街には寄らずに移動することになった。おかげでアルツが不満そうに敷いてる。

 この領にギルドが少ないのは、この領の兵士の存在が理由である。国境沿いの領地であるマルジエートはどうしても精強な兵を持つ必要がある。そのため、領地に存在する魔物を退治するのはギルドに依頼をさせず、領主である父さんの方に頼むようになっている。そのため、ギルドを置く必要性が小さいので、ギルドが少ないわけだ。

 別にここのギルドで登録してもよかったのだが、地元だと顔を知られているのでやっぱりギルドに入るときに茶化されたりすると恥ずかしい。貴族相手にそんなことをするものなのか、と思うがうちはそこそこ領民との付き合いがあるのでそれくらいはお目こぼしされるだろう。だが言いたい。俺がそれをお目こぼしするなんて一言も言っていない、と。いや、やられてもそれをどうにかしようなんてことはしないけど。


「ああ、ついた……」


 馬車は各地を巡るのだが、少々金を握らせ領主の館の方に向かってもらった。近い場所で降りてここまで来てもいいのだが、歩いて戻るのは格好がつかないというか。


「おっきい……」

「これが貴族の家か」

「思ったよりも普通ですね」


 メリーだけはちょっと微妙に感じている。まあ、家としては大きいかもしれないが装飾とかそういうのはなくて結構質素だし。うちは冒険者を家訓でやっているからそのあたりあまり意識しないみたいだ。母さんは違うんだが、あの人はあの人でそういうのに興味なさそうだし。アルツは特に反応する様子はなくいつも通りである。ぶれないところはありがたいと思うべきか、こういう時くらい何か言おうよ、と思うべきか。

 全員で玄関に向かう。客人でもないが来たことを知らせ、扉を開ける。


「おかえりなさいませ、ハルト様」


 入り口でメイド二人と執事が挨拶をしてくる。


「ただいま。戻ってくるって報告はしてなかったと思うけど、よくわかったね」

「ビュート様にフィンドル様から連絡があったので」


 なるほど。フィンドルさんが俺と会ったことを話したのか。その時リフィが家に来ていると伝えたことを話せば、俺が家に戻ってくるってのもわかるか。階段から立派な体格をした男性が降りてくる。俺の父だ。


「おかえり、ハルト」


 父さんの挨拶に、恭しく帰還の挨拶をする。


「ただいま戻りました、父上」

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