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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
demi god
119/485

19

 自身に向けてふるわれた剣戟をそれまでと同じように空を蹴って回避する。男は舌打ちをして優樹を追いかける。

 優樹と男の移動方法は違っており、優樹は跳躍での移動、男は飛翔による移動を主に使う。時々反射的に男は空を蹴っての移動を使うこともあるが、ほとんどの場合飛翔で移動している。この移動方法が違う理由は、優樹は感覚で空中での移動を学んだ結果、無意識と反射で空中を蹴っての移動を使い続けたため、男はずっと意識的に空中を飛行して移動し続けたためである。この移動方法は優樹の移動方法は最初は高速で移動できるが、ある程度移動したところで遅くなるという特徴があり、男の移動方法は基本等速での移動となる。

 故に男の飛翔による移動では優樹を捉えることは出来ない。優樹の移動方法は空を蹴っての移動であるため、そのスピード落ちる前に次の移動につなげられる。そして方向を変えるとはいえ、スピード乗っている状態でさらにスピードを出すことから移動速度が徐々に上がっていく。


「くっ!」


 男は辛うじて優樹の攻撃に反応し剣を合わせる。一度だけ剣を合わせ、すぐに優樹が離れる。優樹の戦法は一撃を加えすぐに男から離れるヒットアンドアウェイの戦法だ。男は何とか対処できてはいるものの、優樹をとらえきれずに僅かにダメージを受けている。しかし、この世界において傷はすぐに修復される。そのダメージは僅かに力を削ってはいくものの、男の精神に痛打を与えるほどのものではない。

 優樹の攻撃目的は男にダメージを与えることではない。高速での移動、それによりどの程度まで男が反応できるかの確認。そして高速移動により自身が捉えられていない間にどう行動するかを考えるか、その隙を作るため。最後に武器の最適化である。優樹の武器は男の使っている剣と同じものだったが、優樹が自身の扱いやすさ、好み、強い武器のイメージを合わせ徐々に変化させていっている。優樹の思い描く武器、そのイメージにおいて強い武器は優樹の故郷である世界、国の刀である。そのイメージを合わせ、徐々に刀に近い形状にして言っている。ただ、刀そのものには変化していない。最も優樹が使いやすい形状に変化させていっている形になっているためだ。そして、男はそれに気づいていない。

 男は優樹の戦法をようやく把握し、力を広げる。視界でとらえる形になっているからダメなのだとようやく気付いたのだ。自身の力を広げることにより、力の範囲を自身の領域としてその範囲に入った物を感知する。優樹の移動範囲は広いため、どうしても必要な力が大きくなる。余計な出費だと男は感じていた。


「そこだっ!」


 男は自身の領域に入ってきた優樹を感知しそちらを向く。そして力を溜めた剣を優樹に向かって振るう。


「天剣!」


 振るわれた剣、男が動かなくなったことからその攻撃の可能性を推測していた優樹はすでに剣を構えていた。


「天剣!」


 剣戟がぶつかる。しかし、今までと同じように放たれた剣戟が相殺されることはなかった。優樹の放った剣戟が男の放った剣戟を切り裂いて男まで届いたのである。その威力は剣戟どうしの衝突により弱まっていたが、男まで届き、その体の前面に大きな傷を与えるのには十分と言える一撃であった。男は自身の攻撃を切り裂いて自分にダメージを与えた優樹の攻撃に驚愕した表情をする。


「なっ……なにぃっ!?」


 そのダメージはすぐに消えた物の、男は大きく動揺している。優樹の攻撃が自分の攻撃を超えた、その事実にだ。


「こんなことがありえてたまるかっ!」


 男が飛翔し優樹に迫る。男は剣を振るい、優樹もそれに剣を合わせ防ぐ。そこではじめて男は変化した優樹の剣を見る。


「なんだその剣は!」


 男はここまできてようやく気付く。優樹は男と同じ武器、技を使わない、戦法を変えたのだと。それは自身が優樹よりも優勢である、強者であるという事実が覆るということである。違う技と武器を使われてしまえば戦いの結果はわからなくなってしまう。


「くそっ! くそっ! くそぉっ!!」


 男は優樹に何度も剣を振るうが、優樹は大きく移動して回避する。しかし、優樹は男に対して比較的優勢でいられているものの、決定打が足りていないことを実感している。そもそも、ここでは傷はすぐに回復するのだからどうしても一撃で仕留めるくらいの一撃を出せなければなかなか勝負を決定づけることはできない。仮に殺したところで簡単には死なない。余程の精神的な打撃にならなければならない。

 どうすれば男を消し飛ばせるような一撃を出せるのか。優樹は男を翻弄しながらそれを考えている。


「死ねえええええええっ! お前が死んで俺がよみがえるんだっ! だから死ねえええっ!!」


 男はもはや優樹を狙うことはせずに闇雲に攻撃を放つ。それは様々な感情が混じった攻撃で、それゆえに力を残すために抑えることのしない全力気味の攻撃だ。流石に優樹も自信を狙うわけでもない攻撃に迂闊に当たることはしないが、予測のできない攻撃であるがゆえに男から離れることを選択した。

 優樹が離れても男は攻撃を放ち続ける。その様子を見ながら、優樹は色々な作品、ゲームや漫画や小説などのこの世界に来る前の世界で見た様々な創作を思い出し、男を倒すために必要な技のイメージを探す。その思考の中、なぜ男を倒すのに大きな力でなければならないか、そのことに疑問を抱く。そもそも、この世界において死のイメージを与えるためにそれだけの力が本当に必要なのか。そうしなければ相手を殺すことは出来ないのか。

 自分の持つ剣、刀に近い剣を見て、優樹は自身の放つべき力、そのイメージを固める。そして優樹は大きく後ろに跳躍し、助走距離をとった。空中を蹴って加速する。跳躍の加速中にさらに空中を蹴って加速を重ね、高速をさらなる高速の状態にまで高める。

 男は優樹が離れたことを感知していた。ある程度無駄な攻撃を重ねたところで優樹がいないことに気づいていた。そして今、優樹の動きを確認し、一直線に近づく優樹の姿を目の前にしている。直線の動きはわかりやすい。そこに男は剣を振りかぶった。


「死ねえええええええええ!!! 天剣!!!」


 男の全力、最大の力を籠めた一撃。その一撃が優樹を襲う。優樹は避けることをしなかった。全力の剣戟が優樹を飲み込み、その姿をみえなくした。男はその光景を見て笑みを浮かべ、自身の勝利を確信する。優樹が剣戟を超えてくるまでは。

 優樹は男が天剣を撃ってくると予測していた。だから優樹はその力を剣で放つ分と、自身の前面に放出し防御にする分に回していた。相手の攻撃は全力の一撃だ。防御をしても大きくダメージを受けることは覚悟しなければならない。だが、覚悟さえしていればある程度のダメージならどうとでもなる。


「天剣」


 静かに優樹が男の目の前言い放ち、剣を振るう。その一撃は男を一刀両断にした。優樹はその一刀両断にした男を通り抜ける。


「っ!? あっ! ぐっ!」


 男は声を出そうとするが、体の中心から一刀両断にされている。何とか体をくっつけようとして身体の位置を合わせたもののくっつく様子を見せない。


「なっ! したっ!」


 男は何とか声を振り絞って出し、何をしたかを優樹に聞く。優樹自身、その質問をされても答えることが難しい。ただ優樹は自身の持ったイメージを重ねた一撃を放っただけだ。ただ一言、優樹は男に告げる。


「斬っただけだよ」


 言葉はかなり大雑把になった。優樹のしたことは空間の切断、そして存在の切断である。この世界での死は死を自覚することだが、他にも殺すことが可能な手段がある。それはその存在そのものを殺す事。物理的に死なないのであれば、物理的な攻撃以外の攻撃を行えばいい。それが存在そのものへの攻撃である。優樹は理解していないが、空間ごと切断することで存在の切断を行っていたのだ。ただ、感覚ではそれをわかっていた。


「くそっ! くそっ! くそおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」


 男が叫び、くっ付けていた切断面が別れそのまま地面に二つに分かれた体が崩れ落ちる。そして、断末魔の叫びを残し溶けるように消えていった。優樹と男の戦闘の決着がついたのである。

 それと同時に、世界が歪み、薄れ消え始める。優樹はそれに驚くが、危機感を抱くことはなかった。溶けるように優樹の意識が空間に拡散していくことを優樹は感じていた。









「ユウキさん!?」


 倒れこんだ優樹を何とかセシリエが受け止める。眠ったかのように見える優樹をどうすればいいのかセシリエは迷っている。しかし、その迷いはすぐに消えた。セシリエは優樹から発される物凄い力の奔流を感じたの。


「あっ、あっ、あっ」


 その力にのまれ、優樹を取り落としそうになるが、なんとか気合で耐えて優樹を支えた。そしてそのすぐ後に優樹が目を開け、自分の力で立った。優樹が自身の手から離れたことでセシリエは床に力なくへたりこむ。優樹から発された力の奔流の影響だ。


「…………ユウキさん?」


 力なくセシリエは優樹がどうしたのか、を尋ねる。ただ、言葉が足らずその意思を伝えられてはいない。優樹は自分が戦っていた、その理由を現実に戻ってきたことで思い出し、セシリエに対して質問する。


「セシリエ、化け物の居場所はどこだ?」

「あ…………西、西です。西に行けば空に裂け目が見えるはずです。その裂け目に向かえば自然と見えると思います」

「わかった。行ってくる」


 優樹はどこからともなく出した剣で壁に切りつけた。壁に傷はないが、空間に裂け目ができ、壁の向こうへとつながった。優樹はそこから外へ出て、セシリエの言った化け物の居場所、西へと向かった。

 ただ一人、宝物庫にセシリエが残される。


「はあ………………」


 セシリエは大きく息を吐く。


「凄い…………」


 力の奔流、それはセシリエに強い感情を持たせていた。それは以前も優樹の姿を見て感じていた者だ。

 それは断じて恋や愛ではない。ただ、優樹の見せた圧倒的な強さ、それを見た時からうっすらと感じていたものだった。それを今回の優樹の神化でも感じたのだ。それは力への憧憬、圧倒的な存在への心酔。それをただ一言で表現するのであれば、信仰、それも狂信である。


「うふ、うふふふふ」


 自身の欲する、捧げる、尽す、そうするべき大きな力の存在、それを見つけたことで初めてセシリエは自分がこれからどうしたいかを考えた。今までセシリエは自身の能力の"予感"で自分にとっていいと思えるだろう選択肢を選んできただけだった。それを感じない、選べない"予感"の外にある絶対的な存在。それを見つけ、自分で選択する未来を得たいと感じていたのであった。


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