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石にから、石にし、石になる。  作者: 噛み付き羆さん
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その石、復活する。

 昔々の話だ。ここには夫婦岩と呼ばれる二つの岩があったそうだ……今じゃ片方は割れて影も形も残っていないが、片割れには錆び付いた剣が刺さっている。

 なんでも大昔、それこそ岩が夫婦揃っていたよりも昔の話だ、一匹の化け狐が大暴れしたとかで西洋から渡ってきた聖職者が聖剣を突き刺し殺したのがこの場所と言われて居て。

 化け狐は死後この岩になったということらしい、それで深々と岩に剣が突き刺さっているという事らしい。

 そして夫となる岩がそれから少しして横に据えられ、二つの岩がお互いを鎮め合っているとか何とか……この辺は文献や石碑に書かれてる記述が大変曖昧なのでよくわかっていないらしい。


「質問いいですか?」


 俺の隣にいた貝原誠二(かいはら せいじ)が先程から夫婦岩の説明をしていた巫女さん向かって挙手をする。


「はい、なんでしょうか?」


 巫女さんは微笑みながら首を傾げる。白衣に緋袴、一般的な巫女装束に何故か赤いサングラスをかけていて、更に注連縄のようなものと一緒に綺麗な黒髪を結っている。

 奇抜といえば奇抜だが、コスプレであると言われれば納得してしまいそうである。


「その格好は趣味ですか? コスプレなんですか?」


 誠二も同じ事を考えて居たらしい、流石俺の親友(あくゆう)俺には言えないことを言ってのける。


「いえ、これが正装なのですが……」


 それは知っている――――誰にも言ってはいないが俺はこの巫女さん、山田葛葉(やまた くずは)とは同衾……じゃなく同居人という間柄だ、彼女は日々あの巫女服で一日を過ごしている、彼女のクローゼットにはあの衣装と同じものが十着以上存在する。毎日洗うんだからそんな何着もいらないと思うのだが、そこは彼女のこだわりらしい。

 その後も葛葉への質問攻めは続く、これも彼女の美しさからくる宿命なのだろう……助けを求めるような視線を感じた俺はつい、顔を背けた。

 そんな事をしたから罰でも当たったのか、今日最大の不幸に見舞われた。


「巫女さんには好きな人はいるんですか?」


 そう言ったのは多々良翔子(たたらしょうこ)誠二の幼馴染だ、あくまで誠二の幼馴染であって俺とは全く関わりがない――――はずなのだが彼女の発言はいつも大体俺を窮地に立たせる。


「あ、ええ……まあ居ますよ――――ほらそこに居る猿石 空(さるいしそら)君ですね」


 葛葉の奴さっき助けなかった事を根に持ってかわざとらしく俺を指差した。その上フルネームまで出して、これじゃあ誤魔化しきれないじゃないか!


「おいおい、空、お前……俺というものがありながら!」


 意訳すると、お前は親友(あくゆう)の俺にも内緒だと? 後で説明しろよな。って事だが……まあ付き合いの短いクラスメイト達からすれば誠二がそっち系の趣味があるようにしか聞こえないらしい。

 さっきまで葛葉に群がっていたクラスメイトの波がこちらに押し寄せてくる、そんな光景を葛葉は微笑みながらしてやったりと見てやがる。後で覚えとけよ……。

 そんな中、この波に乗らず別の方へ向かっている奴が一人居る、多々良だ――――あいつこの混乱に乗じて何かするつもりだな?

 あいつは親友(あくゆう)の正妻とも言われるぐらいのトラブルメーカーで夫婦揃ってよくやらかしてくれる、そして何故か尻拭いが俺に回ってくるんだけど、今度は何やらかそうとしてるんだ?

 多々良の奴岩に刺さった剣を引き抜こうとしてやがる、俺も過去にやったことはあるが、今じゃ錆が酷いから下手すれば折れるんじゃないか?


「おいっやめ――――」


 サクッとクッキーでも齧るような軽い音で黄金の剣が引っこ抜けた。

 この物音には流石に全員気づいたようで多々良に一斉に視線が集まる。

 いつの間にか暗雲が立ち込め稲光そして……落雷!?

 近くに落ちたぞ! やばい逃げないと!

 クラスメイト達は一目散に逃げ出した、その場に残されたのは俺、葛葉、誠二、多々良だ。誠二が多々良の腕掴んで立たせ、背負って逃げ出したが背負われた多々良の手には既に剣がなかった。

 どこに行ったんだ剣は?


「空……貴方は早く逃げてください」

「は? お前も一緒に逃げるんだよな?」

「いえ……私は……やることがありますから」

「こんな時になんだよ!」


 俺は葛葉の腕を無理やり掴んで引っ張ったが――――彼女はビクともしなかった、華奢なその姿からは想像もつかないほどの怪力でその場に踏ん張っている。

 再度落雷が落ちたのは剣が抜けた岩の隙間、そして夫婦岩の片割れも砕けてしまった。

 そして……岩があった場所には金色の全裸の女の子が座っていた。毛先の白い金髪、吸い込まれるような深い黄金の瞳に陶磁器……は言い過ぎかもしれ倍が病弱そうな白い肌、白い肌、白い丸モノが二つ。

 スイカってどのぐらいの大きさだったかな。


「えーと、これはどうしたらいいんだ?」


 俺は葛葉の方を見ると、彼女は遠くを見るような目でこちらを見ずに。


「仕方ありません、家に持ち帰りましょう」



 何が仕方ないのか、一体どういう状況なのか俺にはさっぱりだが、これから何かが始まるそんなフラグが立ったと思う。


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