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第05話 救世主の訓練所

・・・

俺は今、自室のベットの上で寝転んでいる。

朝飯を食べた後に『私は少し準備があるから呼びに行くまで部屋で待ってなさいね。』と言われたからだ。


全く、人に準備しろとかいっているが自分はどうなんだよ。


特にすることも無いが一応いまもっている物を確認するため、リュックを持ってきて中をあさる。

リュックは武器はあまり入っていない。サバイバル用品の数々と、チーム戦の時に使うトランシーバが6個。俺が腰に付けているものを合わせれば7個ある。

これらもチームメイトの金持ちの後輩に買ってもらった物だ。

あと、落雷から身を守るためのヘッドギア。これにマイクとイヤホンをオプションで付けてトランシーバーと繋げばインカムマイクにもなる。

これの開発者もチームメイトの後輩の工藤って奴だ。

悔しいが全てにおいてチーム内最高のスキルを持ち、俺でさえ喧嘩や試合で勝てない男だ。

ま、負けたことも無いけどな。

他には、ライフルのバッテリーとその予備、充電気にライト。それからナイフを磨くための磨ぎ石に銃の玉でBB弾が18000発に鉛玉が600発、火薬弾は120発。

携帯電話に災害用のダイナモラジオ(携帯充電機能付)と1000mlガスカンが新品3個と使いかけ1個。

そして食材には、防災用の乾パンや缶詰、ラーメンとレトルトカレーがある。


「こんなもんか。」


正直これから戦いに行くには頼りない荷物だ。

マサのリュックには重火器がたくさんか入っていて、戦闘面においては困らない。

それこそ人だって簡単に殺せるようなものもある。


「あのバックも欲しかったな。」


あのバックとは、チームで合宿に行く時に持っていくかなりでかいバックのことだ。

あれさえあれば数日間は野宿が出来る。昨日のサバゲーの時にも器具の調整のため持って行ったが、今はもう元の世界でマサが1人で駅に持ち帰ってしまっただろう。


重いんだよな、アレ。


1人で二つの巨大バックほ運ぶマサの姿を想像すると少し笑えた。

またいつか、あいつと会える日が来るのだろうか?いや、絶対にこさせるさ。


コンコン


いつの間にか思いに浸っていた俺は、その音で我に帰った。

エレンがようやく来たようだ。


「どうぞ。」


返事を聞いてすぐに部屋の扉が開いた。


「お待たせ、じゃあ行くわよ。」


「ああ。」


エレンは、初めて会ったときと同じマントと杖を持っていた。

しかし、準備をしたはずなのに手ぶらだった。


「何でエレンは手ぶらなんだ?」


「テブラ?」


どうやら手ぶらの意味を知らないらし。


「あ、いや。どうして何も持っていないんだ?」


「そうか、貴方は知らなかったわね。私たちの世界では魔術師などの人のほとんどはね、異空間に荷物をしまって運んでいるのよ。」


「異空間?」


また新たな単語出現だよ。


「そうね、聞くより見たほうが早いわね。今から試してあげるわ。」


エレンは杖を両手で横に持ち呪文を唱え始めようとした。

その時、


カランカラン


突然大きな神社の鈴のような音が家中に響き渡った。


「なんだ?」


「誰か家にきたみたいね。お客様かしら?」


二人して玄関に向かう。

するとそこには、俺たちと同い年位の女の子がシスターの格好をしてたっていた。

全身黒い服で身をまとい、首からは十字架のネックレスがぶら下がっている。


「おはようございます、エレンさん。」


「おはよう、ロシェル。こんな朝早くにどうしたの?」


どうやらシスターの女の子の名前はロシェルらしい。


「はい。実はですね、昨日召喚の間に忘れてあった荷物をお届けに参りました。」


「忘れてあった荷物?」


「ええ、そうです。昨日あの部屋を使ったのはエレンさんお1人だけなので、おそらくそうなのだろうと持ってきたのですが。」


「その割には何も持ってないね。」


「え?」


俺の突然の介入に驚いてしまったらしい。

そして助けを求めるような目でエレンの方を向いている。


「ああ、彼は私が召喚した救世主よ。」


「そうでしたか。驚いてしまってすいませんでした。」


「いいよ、謝ることじゃないって。」


「ありがとうございます。」


にっこり笑って俺にお辞儀をした。

シスターだけあってなかなか礼儀正しい子だ。

エレンもロシェルの半分で良いから、もう少し礼儀が身について欲しいと切実に思う。


「それで?その荷物はどれなのかしら?」


「いまだしますね。」


そういうとロシェルは小声で何か呟いた。その瞬間、彼女の後ろの空間に亀裂が入り人一人が入れそうな穴が開いた。


「これですね。」


ドシン!


大きな音とともにその穴から大きなバックが落ちてきた。

荷物を吐き出した後、穴は自然に消滅してしまった。おそらくエレンも同じ事をさっきしようとしていたに違いない。


「何よこれ?私の物じゃないわよ。」


エレンは地面に落ちてあるバックを見下げながら自分のではないと言った。

俺もつられてその荷物を見る。


あれ?これってひょっとして!?


「そうですか。それならいったい誰のでしょうか?」


「えっと、すいません。これ俺の荷物です。」


「あら、あなたのなの?よかったじゃない、届けてもらえて。」


「まあな。ありがとうな・・・えっと、」


「ロシェルで結構ですよ。」


「ありがとう、ロシェル。」


「わざわざ届けてもらってすまないわね。」


「いえいえ。それでは私は戻りますね。お二人とも神の御加護がありますように。」


ロシェルはそのまま協会の方に歩いていってしまった。

この世界にも礼儀正しい人はいることが分かった。


「じゃあ、俺はこれを部屋に運んでくるから。」


「早くしなさいよ。あまり時間が無いのだから。」


バックのもち手を両手で引っ張る。

軽く50kgはある荷物のため、勢いを付けて運ばなければいけないので少々疲れる。

しかしまぁ、これで当分の間の生活は安泰だ。これの中には色々なサバイバルグッズが入っているし、なんといってもガソリンと小型発電ダイナモがあるのは心強い。

バッテリー充電の問題はこれで解消されたからな。

部屋に荷物を置いてから玄関に戻る。


「さぁ、行くわよ、準備は出来ているでしょうね?」


「ああ。ばっちりだ。」


とか言ってるが、実際はハンドガン1丁とサブマシンガン1丁、ナイフ一刀しか持っていない。

流石に学ランを着ているので装備できる武器が限られてしまうからだ。


「それじゃあ、道に迷わないようについてらっしゃい。」


「分かった。」








・・・・・・

歩くこと数分。

俺たちの目の前には大きな門が口を開けて待っていた。


でかい。


「ここが訓練所よ。貴方は右の武学の棟、私は左の知学の棟。何か分からないことがあったら近くの教官にでも聞きなさいね。それじゃあ、また後出会いましょう。」


「って。オイ!俺を1人にするなって・・・」


いつの間にかエレンはもういなくなってしまった。


「全く、薄情な奴だな。」


1人愚痴をこぼしつつ、改めて訓練所の建物を見てみる。

門から入りまず目にするのが大きな時計塔。高さは100メートルはありそうだ。

そしてその塔を中心にきれいに左右対称に分かれている建物が二つある。

外壁は全てコンクリートのような石で出来ており、色は灰色に統一されている。パット見だとどこかの幽霊屋敷にでも見えてしまう。

その建物を囲む壁も半端無く高い。10メートル以上の高さでとても登っていけそうに無い。


その時だった。建物に見とれていた俺の後に、突然何かがぶつかった。


ドン。


「キャッ!」


「おっと。」


誰かが俺背中に突っ込んだらしい。


「ご、ごめんなさいです〜。」


「あ、いや。俺は大丈夫だけど、君は?」


俺は振り返り、ぶつかってきた奴を確かめる。


「わ、私も大丈夫です。」


「それはよかった。」


そこにいたのは、俺よりも2〜3歳年下の女の子だった。

彼女は一回お辞儀をして俺に向きかえり、


「あ、あの、それじゃあ私急ぐので、しっし、失礼します。」


「あっと・・・」


ものすごい勢いで行ってしまった。


参ったな、どこに行けばいいか聞けばよかった。


彼女が走っていった方角は武学の棟ではなく知学の方だった。

どうやらエレンと同じで魔法タイプなのだろう。

まぁ、いくらなんでもあんな小柄な女の子が前線で戦うはずも無いか。

俺はとにかく武学の棟を目指して歩き始めた。

門からはおよそ1Kmは離れている建物に歩いていくのは少ししんどいが、そんな事では訓練などやっていられないだろう。

一度立ち止まり両手で頬を叩く。


うっし!


気合を入れて再び歩き出そうとした時、


「うおおおおぉぉぉぉぉお、きゅうにとまるなあぁぁぁあぁ!」


威勢のいい掛け声とともに、後ろからハイスピード1で人の男が俺に向かって突進してくる。


接触推定時間1.6秒・・・・


俺はコンマ9秒のスピードで男との衝突を回避した。

男はそのまま走り去り・・・目の前の木にぶつかった。

ズドォーン!


「いってえぇ!」


うん、本当に痛そうだ。


木の幹にはくっきりと男が衝突した後が残っている。

そしてそいつは俺の近くまで小走りでちかづいてきた。


「お前、いきなり止まったら危ないだろ。」


第一声がそれかよ。


「ああ、悪い悪い。」


だが実際俺がいなくても木に衝突していたのは間違いないだろう。

彼の背は俺と同じくらいだ。髪は金髪だか少し黒い。黄土色といったほうが無難だろう。

背中には大きな両手剣がある。鎧は着ていないが、おそらく戦士か騎士だろう。


「うん?お前見ない顔だな。」


「そりゃそうだ。初めて会ったんだからな。」


「アハハハ!確かにそうだな。」


結構気さくな奴だな。


「気に入った。俺の名前はアンドロイ・クロウ。ジョブクラスは騎士・・・を目指している傭兵だ。よろしくな。」


「俺の名前は雲雀千夜だ。」


お互い近寄って握手をする。


「俺のことはロイって呼んでくれよな。」


「分かった。」


ロイの手はごつごつしていて、確かに戦う男って感じがする。

見た目もまじめな顔さえすれば、俺の世界でカッコイイ外人さんだ。


「ところでお前のジョブクラスって何だ?見た目じゃ全く分からないが。」


「正直なところ俺も知らない。」


ロイは少し驚いたようなあきれたようなどちらとも判らない顔をした。

こんな奴でもそんな顔が出来るのだと感心してしまう。

しかし、その顔も長くは続かずに、すぐにさっきまでの笑い顔に戻った。


「ほんとにお前って変わってるよな。」


ほっとけ。


「ま、それは追々訊くとして、だ。俺が呼ぶのにお前はヒバリがいいか?それともセンヤか?」


「・・・どっちでもいいよ。」


千夜といわれたとき少し胸が痛んだ。とっさにマサのことが頭をよぎったからだ。

そんな俺の心境をロイが気がつくはずも無い。


「よし!じゃあお前の事はセンヤって呼ぶな。」


「ああ。」


まぁ、今そんな悲観的に名っても仕方が無い。

俺は今ここで生きているのだから、出来る限り自分に出来ることをしよう。

どんな結果になろうとも・・・な。


「ところでセンヤ。お前足の速さには自信あるか?」


「あるけど、それがどうした?」


「うっし!それじゃあ俺について来い!!!」


「って、オイ!」


基本的にここの世界の人間は人の話を聞かないらしい。

俺の質問には答えずに全速力で走り去るロイの背中を見ながらつくづく思う。


とりあえずついていくしかないか。


幸いなことに、ロイも武学の棟に向かっている。

事務室や教官室のようなところがあるかをあとで訊けばいい。

俺は全速力で奴の背中を追いかけることにした。


だが、この時の俺には知るよしも無かった。この後に死に迫る出来事が起ころうとは・・・





変な伏線もいいけど、あいつ足速すぎだろ!!!!

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