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第03話 救世主は魔法使い?

今俺の目の前にはどこにでも落ちているような石がある。

大きさは手で握ることが出来るくらいの物だ。

そして、その石を持ってきた彼女、エレンからとんでもない事を言われたのだ。


「この石を飲み込みなさい。」


石を飲み込めって・・・


ただの普通の人間である俺には無理難題だ。

当然従えるわけもなくハッキリと『嫌だ』と答えたが、『大丈夫、この石は魔鉱石で今はまだ属性ついてないから人体に影響はないわよ。』とか訳の分からないことを言って無理やり食わせようとしてくる。


このサディストめ。


「ストーップ!ちゃんと説明してもらってからじゃないと、絶対に納得がいかない!」


口に押し込もうとする腕を抑えて出来るだけ大きな声で叫ぶ。

そうでもしないとまたシカトされる恐れがあるからだ。


「しょうがないわね。全く、男のくせに度胸がないのね。」


それはもう度胸の範囲を超えてるよ。


「この石は『魔鉱石』と言って、これ自体では何もおきないんだけど、こうやって魔法の属性を付けてあげると・・・」


エレンはどこからか、先ほどと同じ石を取り出して手のひらに乗せながら呪文を唱えた。


「“シャイニング”」


「うおっ!すげぇ〜。」


彼女が呪文を唱えた瞬間、今まで何の変哲もなかった石ころが突然肉眼で直視出来ないほど光り始めた。


「今は“光”の属性を与えたのよ。この魔鉱石は受けた属性のもっとも単純な魔法をほぼ永久的に持続することが出来るの。だから今は光っているのよ。これがもし火だったら燃えて、電気だったら帯電して、水だったらそれを水釜に入れればその水が尽きることもない。理屈は私には分からないけど、まぁ魔鉱石とはそういうものよ。」


「それは便利だな。」


だが問題はそんなことじゃない。

俺がそれを食べることと、戦闘力を調べるのと全く関わりがない。


「だから、早く飲み込みなさい!」


「だからの意味が分からん!」


「私の話を聞いてなかったの?」


「今の話とその魔鉱石とやらを食べるのとどこに関係があるんだよ!」


全く、こいつの話は飛躍しすぎる。

ちゃんと1〜10までをしっかり説明してもらいたい。


「だ〜か〜ら!この無属性の魔鉱石を飲み込んで体中に入ると、あなたの微弱な魔力に反応して、どの属性か分かるって寸法よ。わかった?」


「なるほど。」


理屈は理解できる。

が、どうしてもその石を食べるのには抵抗があった。

そもそも食べた後はどのようにするのか、本当に人体には影響ないのか、など数々の不安が残る。

しかし、これを食べなくては全てが始まらない。

そう思ったときには、俺はその石を掴み取り一気に口に運んだ。


「・・・うっ!」


不味い。


さすがに石がおいしいはずないだろうとは考えていたが、ここまで不味いのは予想外だった。

思わず吐きそうになるが、必死で耐え胃の中に押し込んだ。


ゴクン。


「・・ふぅ。言われたとうり飲み込んだぜ。」


少しなみだ目になりながらも話す。


「上出来よ。それで、何か体に変化はない?」


「体に変化?」


目をつぶり体中の神経に集中する。

いつもの体との違いをしらべた結果、


「体温が上がったくらいかな?」


ものすごく単純な答えだった。


「え?うそ、そんなはずないわ。無属性の魔鉱石を飲み込んで体温が上がるなんて。」


「いや、そう言われてもな・・・。」


正直困る。

俺はここの世界についてはまだ分からない。

大体魔鉱石とやらがどんなのかいまだに理解できないのだから。


「・・・」


「・・・」


二人して黙り込んでしまった。

その最中にも、俺の体温はじわりじわりと上がっている感覚だ。


いったいどうしたんだろ?


そう考えていた時だった。


バン!


「ただいま〜♪」


勢いのいい音とともに開かれた玄関から、とても元気で機嫌がよさそうな声が聞こえた。

その音に驚いている俺をよそに、エレンはすくッと立ち上がって玄関まで走って行った。

その場にポツンと残されてしまった俺は特にすることがないので、先ほどエレンが魔法をかけた魔鉱石を手に持ってみた。


「冷たいな。」


ここまで発光しているのだからてっきり発熱しているかと思ったのだが、そうでもないようだ。

これは地球温暖化を防げる一品だな。

もし元の世界に戻れる時はいくつかお持ち帰りしたいものだ。


「それで、彼が私が召喚した救世主なのよ。」


いつの間にかエレンが戻ってきていた。

そして俺を指差しながら、エレンの隣にいる女性に少々自慢げに俺のことを紹介している。


どうでもいいが、人を指差すなよ。


「あらあら、すごいわね。あなたももうそんな事が出来る歳になったのね。」


エレンよりも遥かに年上の女性がしみじみ言う。


「あ、紹介するわね。この女性は私のお母様よ。」


「どうも、始めまして。」


「こちらこそ、娘がお世話になりますね。」


エレンの母親にしては抜けている感じがした。


「ところでエレン?あなた、テーブルの上にあった魔鉱石を知らない?」


母親が尋ねる。

今までの会話が一瞬にして散った、唐突な質問だ。

早速俺は自分の存在意義を無視された感が生まれた。


「あの小さな無属性の魔鉱石?」


おそらくそれは今俺が飲み込んだものだろう。


「そうよ、でも無属性ではないわよ。」


「え?」


「はい?」


背筋が凍りつき、ひどい恐怖感にみまわれた。

心の中で何かの警報機が絶えずなりっぱなしになったかのように。


「でもお母様、アレは何の変化もおきてなかったわよ。」


エレンがそう言うと、母親は人指し指を立てて『チッチッチ』と言いながら横に振ってから、


「甘いわね、エレン。アレはね、火の属性を与えた魔鉱石よ。ただね、普通の火を起こす時よりも効果が遅くなるように魔法をかけたのよ。」


いい迷惑だな、オイ。


「そんなの危ないじゃない。どうしてそんなことしたのよ。」


エレンが慌てている。

無理もない。もしかしたら・・・いや、間違いなく俺に食べさせた石がその火の属性付魔鉱石だったのだから。


「私がいない間にそれが原因で火事にでもなったら困るでしょう?」


「それは・・・そうだけど。」


「それで?その魔鉱石はどこにあるの?」


エレンはちらりと俺を見た。

俺はというと、ひたいに結構な量の汗をかいている。顔色も赤くなっていて、誰が見ても熱を出していることは一目瞭然だった。


「あらまぁ。もしかして彼に食べさせてしまったのね?」


「ええ。」


ああ、やっぱり。


俺が食べたのがそれだったのか。どうりで体が熱くなってきたはずだ。

ヤバイ、目眩がしてきた。

俺はそのまま床に倒れて、意識を失ってしまった。


最近意識がなくなることが頻繁に起きるようになってきたな、俺。





・・・・・

どれくらい眠っていたのだろうか?

俺は倒れた部屋のベットで目覚めた。

あの時のような体の熱はもう抜けきっている。

手足を動かして、ちゃんと言うことを聞くか確かめる。


「よし、大丈夫そうだな。」


心なしか、眠る前よりもしっくりくる感じだ。気分もなぜかいい。

これでさっきまでの出来事が夢だったら良いのに、けど現実わ甘くないか。

起き上がり、ベットの下にたたんで置いてあった防弾チョッキ兼ジャケットを着込む。

これが無いとどうもこの格好に締めがない。

コンコン

不意に部屋の扉が叩かれた。


「はい。」


俺は思わず答えてしまった。

そして、俺の返事を聞いてからエレンが中に入ってきた。


「体の方は大丈夫?」


俺の体の心配してくれた!?実はひょっとしてこいつはいい奴なのか?


「ああ、異常はないな。」


「そう、良かった。こんな事で私のパートナーを失って大会に出れなくなるなんて御免なのよね。」


前言撤回。やっぱりこいつ自己中だ。


「あのなぁ。もしかしたら俺は死んでたかも――」


「ちょっと、さっきの庭に出てきてくれない?試したいことがあるの。」


軽く流された。結構ショックだ。


「ち、分かったよ、今行く。」


もうどうにでもなれだ!


俺は半分やけくそになりながら彼女の言葉に従う。

もうこの世界で生きていくにはエレン、マスターには逆らわないことが一番であると俺は感じた。

どうせ俺が何言ったって聞き入れてもらえないのだから、言うだけ無駄だ。




「で?何するんだ?」


「あなたはそこにたっているだけでいいわ。危ないから絶対に動かないでね。」


「へいへい。」


俺は言われたとうりに庭の隅っこに突っ立った。

いったいエレンは何を考えているのか、残念ながら俺には分からなかった。

彼女はおれの位置を確認すると呪文を唱えた。


「“ファイアーショット”」


!?攻撃魔法か?


彼女から出されたいくつかの炎の塊が俺にぶつかってくる。

生身の俺は、当然それの熱に耐えられるわけなく焼死・・・


「あれ?」


しなかった。

エレンが放った炎の塊は俺にぶつかったかと思うと、すぐに消滅してしまった。

その後エレンに聞いた話によると、俺は自分が食べてしまった火の属性の魔鉱石のおかげで命を落とす寸前まで行ったらしいが、持ち前の生命力で何とか持ちこたえ魔鉱石を魔法ごと吸収してしまったらしい。それにより俺には炎属性の魔法の耐性がつき、なおかつ簡易炎魔法なら使えるかもしれないようになったらしい。ついさっきまで仮説でしかなかったが、庭でその実証をしたことにより仮説から確信に変わったのだ。

『今回は結果オーライと言うことで許してやるが、次回はこんなことがないように!』と俺が寛大にもそう言ってやったのだが、『何言っているのよ?炎の魔法が使えるようになったのよ?礼は言われても文句は言われたくないわよ。』などと逆切れされてしまった。


全くもって不愉快な奴だ。


けど、なんだかんだで今日も疲れたな。

いくらさっき寝たからといって疲れが取れたわけではない。

どうせ明日もこの調子なのだろう。

部屋のランプの火を試しに魔法で消してみる。

俺が魔法を使う時には詠唱は必要ないらしい。心で考えるだけで自然の炎は少し程度なら操れると言っていたな。


消えろ!


パットすぐに消えるわけでもなかったがそれでも少しずつ光が弱くなっていき、最終的には消えてしまった。


「俺すげえな・・・」


自分を褒めながらベットに入り込む。

今考えれば、確かに魔法を使えるのはいい。

だがそれは、俺が人間離れしたことと同じではないのか?

そんな考えが頭をよぎったが、今そんなことで悩んでいては生き残れない。この際は本気で細かいことには突っ込まないと決心しにとな。


「決心か。」


まぁいいさ。明日は明日の風が吹くよな。

俺は布団をかけ暗闇の中目をつぶった。







今更だがそういえば俺、エレンのお袋さんの名前聞いてなかったな。

でもま、それはまた明日でいいか。

睡魔が俺を襲いその数秒で深い眠りについた。

内容が矛盾してないか不安です。

指摘や感想がありましたら是非お願いします。

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