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第10話 救世主と月下の騎士

なんと言うか、なってしまったのは仕方ない精神で滅多な事では後悔しない俺だか、今は自分の選択に後悔せざるをえない。

まずどんなに体術に自信があろうが丸腰で武装した相手に向かうのは自殺行為だ。

更に、ロイの戦闘スタイルは攻め重視の攻撃型というのだから質が悪い。いくら攻撃を避けたり弾いたりしたところで、ロイを後退させることは出来ない。

その反面、俺はギリギリのところで攻撃を躱すのが精一杯で、とても反撃できる状況では無かった。


『はあぁっ!!』


「くっ!!」


胴を断ち切らんとばかりに放たれる剣を身体を捻らせ紙一重で躱す。攻撃をする度にロイは速く鋭くそして確実に俺の命を奪いに来る。

丸腰は無理と判断してからは辺りに武器になりそうな物が無いか探すが、夜の広場には噴水しか無い。

ナイフと銃は家に置いてきたし、この状況を打開する策は一向に見つからない。


『どうした、センヤ!逃げるだけが精一杯か?』


「ちぃっ!!」


ロイは大振りに剣を俺の頭目掛けて振り落とす。

それを左にステップを踏み軽く避け、奴の顔面を狙って渾身の右ストレートを打つ。


『ふんっ!』


振り下ろした剣を構える事もなく、月下の騎士は後ろに跳躍し、戦闘が始まってから始めて間合いを離した。

昼間のロイなら今の攻撃は躱す事は出来ない筈だが、今目の前に居る騎士はロイよりも遥かに強い。


「いや、そうじゃないか、」


そう、只単に昼間は何らかの規制がかかっていて本来の力が出せないのだ。


「要は、俺は絶体絶命ってコト、ね。」


誰にいうでもなく呟き、奴との間合いを離しながらこの状況を打破する策を考える。

まず、相手の装備は刃渡り1mくらいはある大剣だ。この打ち合いで何度か間近で見ていたが、その剣の刃はとても鋭いものではなく、少し触れたくらいでは物は切れないだろう。

現に俺の服に何度か刃が掠っているが擦れた跡がついたくらいで服は切れ目の1つも入っていない。物を断ち切る日本刀のようなものではなくもの叩き斬るという概念のもとで造られたものなのかもしれない。

俺が今まで逃げ切れていたのはきっと相手の剣の切れ味の悪さのおかげだろう。

そして、昼間は鎧らしきものを着ていたのだが、今は身を守るものは一切つけておらず街の人たちが着ているような軽装だ。

俺の打撃攻撃は当たらなければいいという考えなのだろう。

わざわざ重い装備をして攻撃が当たるリスクを背負うよりも、全ての防御をはずして回避に専念した方が一番安全だからな。


もっとも、あいつが避けることなんてめったに無いけど・・・


他には特に何も持っていない。普通の戦闘ならここまで一方的に押されることは無いだろう。

だが当の俺はというと、相手が剣を持っているのに対して何も持っていない。服もとても動き易いとは言いがたいwZ指定の制服。

普通の私服よりは強くつくられてはいるが、とても剣を防ぐことはできない。


『打ち合い始めて、おおよそ1時間弱―といったところか。』


「・・・」


無言でロイとの間合いを保つ。


『よもや、これほどの時を使うとはな。』


ロイは少しだけ口を歪ませていた。

何が面白いかなど俺にはわからないし考える余裕も無い。


『よく素手で我と対等に渡り合えたな、センヤ――お前は想像以上だった・・・だが、』


やつの口調が急変した。

今までの穏やかで心に響く声が、まるで地獄の底から叫ぶような怒りや憎しみが篭った声になった。

俺は背筋が凍りつくような悪寒が走り、体中を張り詰めていた空気が冷えた気がした。


『これ以上の打ち合いは無為に等しい!!』


「っ!!!」


目の錯覚なのだろうか。奴を中心に光の波紋が広がったように見えた。

そして次の瞬間


『我が力を封印されし(つるぎ)よ、今こそ真の力を解き放て――』


ロイの手元にある剣が輝き始めた。そう、それは昼間見た時の様に眩しく直視できないくらいに。


やばい!!


俺の頭はの中で警報が鳴る。


『我が名はアンドロイ・クロウ。汝と契約を交わし者――』


ロイが言葉を発するたびに剣の輝きは強くなっていき、その剣を中心に風が取り巻いているようだ。


昼間見たのとは比べ物にならない!


「あ・・・」


いまさらながら気がついたことがある。

あの剣は昼間ロイが持っていたものとは違うということだ。形や大きさなどは似ているものの、微妙に剣の柄の部分の装飾が異なっている。

確か昼間の物は素朴な感じで本当に戦う剣という雰囲気だったが、今ロイが持っているものは、柄の下に水晶玉のような物がついていて、柄自体も派手な金色をしていた。

何で今まで気がつかなかったのだろう?


「ちぃっ!」


これ見よがしに舌打ちする。

もう俺には戦うことはおろか、抵抗することも逃げることもできない。

まさに料理されるのをただ待っているだけの“まな板の上の鯉”だった。


『剣よ、我が呼びかけに応えよ――』


一瞬の静寂が訪れた。本当に一瞬だけのはずなのに永遠に続くかのように思えるほどで、全ての時間が止まってしまったかのような錯覚だ。

そして、その静寂を破って先に行動したのは俺だった。


「はああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」


雄叫びをあげなから相手に向かって一直線に駆け出した。


『フン、気でも違ったか?自ら死ににくるとはな。』


ロイは鼻で笑うとニタリと薄気味悪い、そして己勝ちを確信したように口を歪めた。


『これで最後だ!食らえ、秘技…』


昼間に見たものと同じ構えを見て確信した。どうやらフグと決着をつけた時と同じ技を使うつもりでいるようだ。


読み通りだが…いけるかっ!?


俺は負けず嫌いで諦めが悪い。どんな絶望的な状況に置いても終わりが来るまで足掻き続ける人間だ。例え可能性がゼロに等しくても、ゼロではない限り諦めない。今までだってそれでなんども乗り越えて――


来たこと無いなぁ・・・


だからといってここで諦める訳にはいかない。勝算はないに等しいけど、ほかに方法は思いつかない。

ポケットの中に手をいれさっきから違和感を感じていたソレを握る。


『光刃月華斬!!』


「そこだあぁぁぁ!」


相手の剣が振る下ろされる刹那、ポケットの中にあったものを投げつけた。ソレは光を放ちながらロイの方へと向かってゆく。


『悪足掻きか!』


勢いよく向かってくる物体をロイが剣で弾いたその瞬間、剣によって砕かれたソレは一瞬にして粉となり辺り一帯に拡散した。

そう、ソレは昨日俺が炎の属性のついた魔鉱石を飲まされた時についでにもらった光の属性がついた魔鉱石だ。もともと小さな塊ひとつでさえ裸眼で直視できないほどの光を放っていたのだが、粉々にされたことにより一個のときより光を発している表面積が一気に増えて、その粉が漂っている周辺は何も見ることができないくらい強烈な光に囲まれた真っ白な世界に変わってしまった。


『な、何だこれは?!こんな手を残していたというのか!』


俺はそのままロイの隣を走り抜けた。魔鉱石を砕いてしまった中心にいたロイには一体何が起こったかもわからないだろう。


俺自身成功するかわからなかったしな・・・


サングラスは部屋に置いてきてしまっていたため俺も視界を奪われたことには変わりは無い。が、俺にとっては視覚などはそんなに必要は無いのだ。戦闘時に相手が自分から見えるところにいることなどまず無い、そこで俺が鍛えたのは聴覚と身体全体の感覚だ。音を耳で聞き空気の動きを身体で感じ取る、これが俺の索敵方法だ。


ここで決めなければ後が無い・・・!


光が徐々に薄くなってきた。宙に舞っていた粉がだんだんと地面に落ちているからだろう、あまり時間がないことにいささか焦りながらロイの動きを探る。

どうやら奴は下手に身動きをせずに俺の出かたを伺っているらしい。


それなら好都合だ!


「そこだああああああああぁぁぁぁぁ!!」


俺は走っている勢いをそのまま乗せてロイめがけて渾身の蹴りを放った。








いろいろあって更新できませんでした・・・

それにしても、1年以上放置してていまさらしても意味ないかな;

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