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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。端午の節句番外編  作者: 前野羊子


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鎧でよろよろ

異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。のGWショートショートです。

ぜひお手元に柏餅や粽などご用意ください。


異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。端午の節句番外編


〈鎧でよろよろ〉


 俺は、田中駿介。


 東京で母子家庭の一人っ子だと思って生まれ育ったけど、クリスマスイブの日に地球からすれば異世界のこちらにやってきた。


 転移の時に一緒に持ってきちゃった荷物の中の、とくに母さんのウエストポーチにはその大きさからは信じられないような色々なものが大量に入っていた。


例えば、幼稚園の年長から高校二年まで使っていた剣道の竹刀が、小さいものから大人サイズまで入ってたし、中学から片手間にやっていた居合の刀も入ってる。


 その上、暴れん坊のあの人がお城のお屋敷で小姓に持たせていたような白いちょっと派手な鞘の日本刀や、めっちゃ切れそうな刃渡りの長い日本刀、竹光の刀、それぞれとセットになってる脇差など、日本人向けの剣が揃っていた。


 他には、洋画の時代劇に出てくるような両刃の剣も太いものからファンタジーの女性冒険者が持つような細めのレイピア、背中にかつぐ大剣もあった。

 剣以外では、半棒や長棒、薙刀、弓と矢などもあって、槍に至っては和風から洋風、ハルバードのようなものまであった。


 母さんがちょっとオタクだったから、母さんの趣味かな?なんて思ってたけど、本物の刃物の数だけ俺の名前の〈銃砲刀剣類登録証〉が付いていた。

 まあ、この世界には不必要な書類だけどね。


 ただ、一本だけ書類がついていない剣がある。

〈風の女神のミッドソード〉だ。


 風の精霊の黄色ちゃんではなさそうな精霊が宿るこの剣は、初めて訪れた冒険者ギルドのギルマスが言うには、神器の一つだそうで、他人に貸しても使えないのだ。


 さて、ウエストポーチに入っているのは武器だけじゃなくて防具もある。

 もちろん、俺が愛用していた剣道の防具も、幼い時の分から一式どころか、高二で使っていた大人サイズのものまで。道着や袴も全部洗って糊付けしてアイロンして畳んであった。

 今どき糊付けだよ?


 そして鎧兜だ。毎年ゴールデンウィークにリビングに出して飾ってあったものも入ってるんだけど、見たことの無い本格的なものもある。


 それに気が付いたのは、今俺が滞在しているヴァルカーン王国で、〈金赤週間ブロンズレッドウィーク〉という一週間ぐらいある連休の前だ。


 大きな茶箱のような縦長の箱に入ってるそれは〈緑色脅し鎧〉。



 そして何やら着物っぽいものも入っていた…丸ごと一式ですか。


 熊の足みたいな靴まで…


 ピラン


 久しぶりに母さんからメッセージがスマホに届く。


 ≪柏餅と粽を入れておいたから、お父さんや皆と食べてね!

 駿ちゃんの鎧武者の写真待ってます♪≫


 ……確かに入っとる。結構沢山。

 このままこっそり食べても怒られないだろうけど、リクエストに応えてからじゃないときっとおいしくない。気になってさ。


 

 ウエストポーチは、地球とこちらが繋がってるようで、母さんがちょいちょい足してくれている。で、俺も此方に持ち込んだスマホやノートパソコンがどういう訳か日本のインターネットにつながるので、俺の銀行口座で通販して、東京の家に届いたら母さんがウエストポーチに入れてくれたりしているんだけどね。

 あ、お金は、母さんが月々のお小遣いを入れてくれてます。

 社長さんなので、割と入れてくれてます…というか、通販以外でお金使えないからちょっぴりたまってるぐらい。

 それに、消耗品は頼まなくても仕入れか?って感じで段ボールケースで入ってる。

 シャンプーとか、エナジードリンクとか、マスクとか。


 鎧が入っていた箱の底には〈着付けの手順〉って取説のようなものが入っていた。


 ぱらぱらぱら……一人では無理!



 

 一式を箱に入れ直すと、それは持ち運べるように、ランドセルのように背負子状態になっていた。



 そうして、俺の固有空間であるアナザーワールドに移動する。


「魁星ぇ」


『なんだ王子、情けない顔して…?なんだその箱…ちょっと待てよ見たことあるぞ』

「本当!じゃあ手伝って!

 着付け方はこれ」


『何々?こりゃ日本語だな』

とりあえず、パンツとランニングになってからまずは足袋を履いて、筒袖の道着のような着物と、ふくらはぎのところで絞るようになってる、たっつけ袴。鳶職のズボンみたい。を履く。そして脛当てを巻き付ける。その時に熊皮みたいな靴も履く。


 これだけで薙刀の装備みたいでかっこよ。

 そして、脇あてと肩当てをくくりつける。そして剣道で言うところの垂、スカートみたいな、草摺を付ける。そして胴、大袖をつけて、兜はよくある金色の鍬形タイプ。

 最後に籠手をつけて…最後に白い大小刀を腰に刺す。


『これは…中々可愛いぞ』

「えーカッコ良いと言ってよー」


『写真撮るんじゃろ』

「うん」

『なら俺ん家が良いよな』

「縁側でカッコ付けたいな!」

『よし、お、玄武も見に来たのか?』

 玄武は、柄杓星の妖精の魁星と一緒にいた大亀で、のっそり歩くように見えて、瞬間移動をしたり、魁星の荷物を大量に預かる瓶の役目もする便利な奴だ。


“こう言うのは意外と好みだ”

『じゃあ一緒に写真に入れ』

 いつの間にか濡れ縁に乗っかる大亀。

 

 俺はその隣で亀の甲羅を脇息のようにして凭れるようにする。


『カメラはこれか?』

「どうせならスマホじゃなくて一眼レフの方で」

 データはやり取りできるしね。


 パシャパシャやってもらってると、

『王子何それ!カッコいいね!』

 ペガコーンのハロルドが、魁星の庵の庭にやってきた。

『おお、丁度良いところに!

 王子、乗馬姿も抑えようや』

「うん」

 

 裸馬なので、鎧がないから浮き上がって乗る、


パシャパシャ


『白馬の王子ね!』

女性の声がして、ワンピースを着たミグマーリもやってきた。


『この際だ、龍とも撮っとこう!

お前さん、頼めるか?』

『いいわよ』


 彼女はくるりと右脚を軸に回転すると消えて…じゃなくて、服を脱ぎ捨てて空に飛んでいた。

 安心して下さい。白龍に変わってます。

 脱いだ服は土の精霊の緑色ちゃんが回収してアイテムボックスに仕舞ってくれていた。

 ペガコーンから、白龍に乗り換えた俺に並ぶように、今度は魁星がハロルドに乗って一眼レフを構えている。

 意外と器用だ。


『鯉のぼりどころか、登り龍だぜぇ。良い絵になりそうだ』

「カッコ良い?」

『カッコ良いよりは可愛いな』

「えーそんなぁ」



 しばらくして、鎧を脱ぎ、普段着に戻るころ、ミグマーリもワンピースに戻って、並んで縁側に座る。

「確かに、俺が小さすぎだな」

『大人サイズになればよかったのに?』

「鎧が子供サイズなんだよ』

『サイズ調整の付与をすれば良いじゃねえか』

「これはね、この緻密な糸の模様が良いんだよね。そのまま拡大するだけじゃ、ここの模様が間延びするだろう?」

『なるほど』


 皆で、柏餅やチマキを食べながら写真のデータを観てワイワイする。

 いつの間にか灰色妖精のトットが熱い玄米茶を配ってくれている。

≪幾つかの画像を縦長の絵にしてくれないかなー≫

「縦長?」

『おー、あの床間寂しくてよ、掛け軸が欲しいって思ってたのよ』

 指さす床間の壁は確かに何もなくて真っ白な壁があるだけだ。


「確かに寂しいけど、俺の画像じゃなくても…」

父さんと母さんに画像を送る為だけに鎧を来たんだけど。


『いや、こんな欲張った画像はなかなか無いぜぇ』

「そう?」


って煮え切らない返事をしていたら、

“まかせろ!おれがかんぺきなかけじくをたのんでやるよ”

白色くんのフライング。

『本当か!』

“ほんとほんと”


『よし、今晩とっておきの酒を開けような』

“やった!”


 後日、龍の子太郎状態の鎧武者君と、白馬の鎧武者王子君の二種類の掛け軸が出来ていた。

 それはお城の父さんのリビングにもぶら下がっていた。

お読みいただきありがとうございます

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