表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『お題のmonogatary』―どこに向かうか誰もわからないー ストーリーは『今後のお題』しだい  作者: もとき未明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/81

3.1 お前が言うな

monogatary.com 2026年3月1日のお題『容疑者が語り手の物語』について投稿したものです。



 タクヤ、三十三歳。

 大阪歴十年。いまだ大阪弁は練習中。

 独身やけど、独り暮らしはそろそろ終わりかもしれん。


 今日もミサキが俺の部屋の家宅捜査(片付け)に来ている。

 今度は机の引き出しの最深部まで開けて、何やら重要証拠をチェックしているようだ。


 ……おやっ。捜査官が何か見つけたようですね。

 口角がわずかに上がり、獲物を追い詰めた刑事のようなニヤつきを見せています。


 現場は緊迫しております。

 容疑者である俺は、現在リビング中央にて直立不動。

 これまでに押収されたのは、財布を圧迫していたレシートの束、二年前の映画半券、そして……ラベルのない謎のUSBメモリ。

 いずれも本人(俺)は「大切な思い出」と認識しております。


「おおーっと、そのUSBはヤバい! 中身は公序良俗に反するもんじゃないけど、俺の黒歴史的にちょい困る!」

 そのとき、捜査官ミサキがおもむろに振り向いた!


「何をさっきから、ゴチャゴチャ言ってんねん」

「えっ。声に出とったん?」

「ずっと漏れてたわ。というか、タクヤが犯人(持ち主)やろ。何を他人事みたいに実況してんねん」

「濡れ衣や。俺はただの、歴史の観察者や」

「証拠の品がこんだけドバドバ出てるのに?」

「……全部、大切な宝物なんや」

 レシートは、初デートのカフェ。

 半券は、男三人で観たクソ映画。

 USBは……いや、これはほんまに何入ってるか自分でも怖くて開けられん。

「ほらな。動機も言い訳も不純や」

「最後の一個だけは除外してくれ。若杉からの預かりもんかもしれん」

「余計怪しいわ。共犯者までおるんか」


 ミサキは腕を組んで、俺を上から下まで検分した。

「タクヤはな、“思い出泥棒”や」

「誰から盗んだんや。被害者いてへんやろ」

「今を生きる自分からや。過去ばっかり溜め込んで、未来へ進む足を重とうしてどうすんねん」

 ぐうの音も出ない。黙秘権すら奪う正論や。

「残すんはええ。でも溜め込んで現実から逃げたらあかん」

「逃げてへん。……ちょっと距離置いてただけや」

「それを逃げてる言うんや」


 俺は潔く沈黙した。

「ほな判決言うわ」

「早いな。弁護人呼んでええか?」

「却下。罪状は『思い出の過剰所持』。判決は……整理整頓。ただし、執行猶予付きや」

「執行猶予って何や」

「ウチが監視しながら一緒に片付ける。一人でやらせたら、進まへん未来が明白や」

 それは、刑罰というよりご褒美やった。



 俺は現在、神妙な面持ちで反省の色を見せながら、ゴミ袋を手にしている。


 罪状は、重い。

 けれど、袋の中身が重くなるほど、部屋と俺の言い訳は軽くなっていく。



 ――再犯の可能性はきわめて高いが、そのときはまた、この捜査官にタイホしてもらおうな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ