1.6 筑前煮は作れない
monogatary.com 2026年1月6日のお題『二人ぼっち』について投稿したものです。
タクヤ33歳。大阪住みが10年を超えるのにいまだに大阪弁をしゃべれない。ひとり暮らしだけど独身主義者ではない。
今日は同郷の親友ハルトが我が家にやってきた。
来るのは初めてではないが、今日の彼は妙に気合が入っている。
レジ袋からはビールに焼酎、さらにはウイスキーの瓶まで見える。唐揚げや乾きものなど、つまみも万全だ。
明日は二人とも仕事が休み。今夜はオールで完走する気満々である。
「じゃあ、さっそく始めるぞ」
俺は、テレビの前にスタンバイしているハルトの横に座った。
リモコンを操作して再生ボタンを押す。
画面には、竹内涼真がかっこいいのか、あえてダサく演じているのか判別しがたい絶妙なオープニングだ。
そう、今日は『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の再放送を二人でイッキ見する日だ。
ハルトが言うには、大分出身の男なら一度は見ておくべきらしい。
だが、ハルトの奥さんは生粋の大阪人。奥さんと一緒に見るのは、自分の処刑台を自分で組み立てているようなものだという。どんなホラーだよ。
最初のうちは二人で賑やかに盛り上がっていた。
「ああ、あるある……」
「ここって、あそこの商店街じゃね? 懐かしいわ」
「おるよな、こういう頑固なオヤジ」
「お、噂の『ざびえる』じゃ! 久しぶりに食いたくなったなぁ」
「……」
「……」
画面の中の男たちが無自覚に放つ、女性への「甘え」や「傲慢さ」。
それが自分たちの過去の言動と重なって見えたのか、二人とも無口になり、ひたすらアルコールを煽る。
ヤバい、どれだけ飲んでも全然酔えねぇ。
俺はどうやら無自覚に人を傷付けていたのだと発覚したばかりで、正直かなり効く……。
「なんか身につまされるなぁ……」
夜が明ける直前、全十話を見終えた。
約九時間。トイレ休憩を挟みつつ、俺たちは一度も目を逸らさなかった。
結論から言うと、胸が苦しい。
物理的な痛みというより、見えない巨大なプレス機でじわじわと圧迫されているような感覚。
「……自覚、あるか?」
「ある……? かもしれん」
「俺たち、あんなふうに見られよったんか……」
「……ま、ドラマやしな」
お互いに声をかけているのか、自分自身に問いかけているのか。
窓の外が白み始め、始発の音が遠くに聞こえる。
広い世界の中で、自分たちだけが取り残されたような焦燥感に襲われながら……泥のように眠りについた。




