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『お題のmonogatary』―どこに向かうか誰もわからないー ストーリーは『今後のお題』しだい  作者: もとき未明


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2.19 誰のせいやと思てんねん!

monogatary.com 2026年2月19日のお題『コント「交通整備」』について投稿したものです。



 タクヤ、三十三歳。

 大阪歴十年。いまだ大阪弁は練習中。

 この静かな部屋も、そろそろ終わりかもしれん。


 今日は、ミサキが部屋にいる。

 床に座って、コンビニのカフェラテを両手で包んでいる。


「タクヤも大変やなぁ」

「急にやな。なにが?」

「ユイナ失踪、若杉暴走、受験生赤信号。事故多発交差点や」

「言い方!」

 失踪いうても、既読つかへんかっただけや。

「雪まつりも和歌山もあるんやろ? 案件抱えすぎやん。ほんま世話好きやなぁ」

 ほとんど、ミサキ案件やないかい!


「俺が呼び込んでるわけちゃうで?」

「せやけど最終的に、みんなタクヤんとこ来るやん」

「知らんがな」

「信頼やで」

「何の」

「交通整理」

「なんで国家資格みたいな言い方やねん」

「若杉君は、右折レーンでずっとウインカー出してるタイプや」

「前進めや」

「ユイナは高速合流やな。怖い言いながらアクセル全開」

「事故るやろ」

「受験生は赤信号で参考書読んでんねん」

「青なったら進めって」


「で、タクヤは交差点の真ん中」

「なんでやねん」

「蛍光ベスト着て“はいそっち止まれ!”」

「着てへん」

「笛ピーって」

「持ってへん」

「でも、結果そうなってる」

「天然の渋滞ポイントみたいに言うな」

「誘導員や」

「まだマシや」


 ミサキはラテを一口すすり、満足げに笑う。


「ほな、ミサキは?」

「……無免許」

「論外」

「気分で車線変更するタイプ」

「怖い怖い怖い」

「ブレーキたまに飾り」

「降りろ今すぐ」

「せやからタクヤがおらんと困る」

 即答やった。

「なんで俺が常駐せなあかんねん」


「でもな」

 ミサキが急にトーンを落とす。

「タクヤ、最近ちょっと渋滞してるで」

「は?」

「全部見ようとしてフリーズしてる交差点の顔」

「どんな顔や、それ」

「眉間に信号ついてる」

「何色や」

「ずっと黄色。チカチカ点滅してるわ」

「別に迷ってへん」

「ほな聞くけど」

 ミサキがこちらを見る。

「この部屋の“静かなまま”って標識、いつまで立てとくん?」

 言い方よ。

「……」

「通行止め解除せえへんの?」

「誰のせいやと思てんねん!」

 思わず声が出た。

 ミサキは一瞬きょとんとして、すぐ笑った。

「ウチやろ?」

「……半分な」

「半分?」

「もう半分は……俺や」


 沈黙が落ちる。

 外を車が通り過ぎる音。

 遠くで救急車のサイレン。


「なあタクヤ」

「ん?」

「ウチ、暴走してるときあったら止めてな。免許ないし」

「今もや。ハンドルどこ持ってんねん」

「うるさい」

 軽く肩を叩かれる。

「でもな」

 ミサキが、珍しく視線を逸らした。

「タクヤもたまには進みや。誰の許可もいらんのやから」

「青信号出てるか?」

「出てる出てる。バリバリの青色や」

「どこに」

「ウチの顔に。ほら、見て」

「見えへんわ。ただの惚けた顔や」

「視力検査行き。判定はⅮやな」

 結局、こうなる。


 真面目な話のはずやのに、

 どこでどう曲がったんか、笑いに変わってる。

 でも、少しだけハンドルを握る手が軽くなった気がした。


「ほな帰るわ」

「気をつけて帰れよ」

「はい誘導員さん」

「違う」

「交差点の真ん中で笛吹いてるおっちゃん」

「やめろ!」


 玄関で、ミサキが振り向く。

「なあタクヤ」

「なんや」

「もしウチがこの部屋に住み込み希望やったら? 進入許可、出してくれる?」

「……徐行でお願いします」

「進入許可やな! よっしゃ!」

「出してへん! まだ一時停止や」


 ドアが閉まる。


 部屋はまた静かになる。


 でもさっきまでより、少しだけ部屋の空気が青に近い。

 俺の中の黄色は、ようやく点滅をやめたようだ。



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