1.5 個性は大事
monogatary.com 2026年1月5日のお題『SSSクラス』について投稿したものです。
タクヤ33歳。大阪住みが10年を超えるのにいまだに大阪弁をしゃべれない。ひとり暮らしだが、独身主義者ではない。
先日、同郷の同級生で大阪にいる親友のハルトと飲んでいたときのたわいもない会話から。
「なぁ、俺の上司って日本一といわれる一流大学出身なんや。で、学生時代はSSSクラスに在籍していたらしい。
ハルトは子どもがおるからその辺詳しいんか?
俺にはなんのことかわからんで話についていけんかったんや」
「ああ、灘や東大寺なんかの最難関中学とか公立のトップ校への上位合格をめざす特別編成クラスやろ」
「やっぱり有名なのか」
「そりゃ大阪じゃ馬渕に通うとるってだけで親同士のマウントが始まるくらいや。
さらにそん中で選りすぐりの天才しか入れんのがSSSクラスや」
「なるほど、だからあの若さで部長になれるんか。住む世界がちゃうな」
「ま、人にはそれぞれ向き不向きがあるいうこっちゃ。
……実はウチの坊主もSSSクラスに入れた言うて喜んでんねん」
「え! そりゃ凄いじゃないか!」
ハルトの息子はたしかまだ小学生だったはずだ。
このハルトから天才児が……と驚愕していると、不敵にニヤリと笑う。
「おお、聞いて驚くなよ。
『笑福亭の 笑いを 継承する』の頭文字とってSSSらしいで」
「……。どこがSSSなんや! 最初の一文字だけやんか」
「アハハ。細かいことはええねん。そういうセンセらしいで」
「それ大丈夫なんか?」
「なんでもそのセンセ、ほんまに笑福亭の師匠に弟子入りして、ちゃんと亭号もろうとる言うてたで」
「いや、そういう意味じゃなくてだな」
「大阪で暮らすからには、勉強より笑いが一番や。今度のクラス発表会、ウチの坊主もコンビ組んで漫才やるらしいし、ネタ合わせに付き合わされて、俺が先に腹筋崩壊しとるわ」
そう語るハルトの顔は、誇らしそうで、そしてずいぶんと幸せそうだ。
「ま、お前がいいならいいか」
一流大学向けのSSSクラスもあれば、笑いのSSSクラスもある。
この街の懐の深さに、俺は少しだけ救われたような気がして、熱燗を呷ったのだった。




