2.12 繋がれた右手
今日もタクヤに会いたいんに、アキに呼び出されてしもうた。
アキは、ウチと同い年のクセに妙にお姉ちゃんぶるんや。
まぁ、ウチが頼りにしてるんやから、ええけどな。
待ち合わせの居酒屋に着くと、アキとユイナが既に座っていた。
「ミサキ、久しぶりやな。……なんか雰囲気変わった?」
ユイナがウチの顔をしげしげと眺めて食いついてきた。
ユイナと外で会うのは、一か月以上ぶりかいな?
「なんも変わってへんで」
コートを脱ぎながら返すウチをじっと見つめる二人。
「タクヤさんと上手いこといってるみたいやね」
アキが含みを持った言い方をする。
「……フツーや」
そっけなく答えてるつもりやけど、頬が緩みそうになる。
「会うてから一か月のカップルが、実家の挨拶やお泊りデートの約束までこぎつけてんのに、どこが『フツー』やねん」
ユイナの突っ込みが激しい。
「なんで、お泊りデートのことまで知ってんねん! ……ウチ、LINEで書いたか?」
「モロには書いてへんかったけど、新潟への経路とか、車中泊のこととか書いてたやん。バレバレや」
「ドキっ!」
「「だからぁ、擬音を声に出すな! っちゅうねん」」
二人がハモって突っ込んできよった。
「しゃーないやん。クセなんやから。たまに、タクヤの前でも言うてしまうんや。でもタクヤは笑うて流してくれんねん」
「「はいはい」」
「二人して、なんやねん……」
ビールやおつまみが運ばれてきてからも、飲みつ食べつつ、ウチとタクヤのことで質問攻めやった。
「やっぱ、ミサキは変わったわ。前やったらもっとはっちゃけてたし、飲み方も大人になったって感じ……」
「あんなぁ。ユイナと同い年なんやで。上から目線せんといて! お姉ちゃんポジションはアキだけで腹いっぱいや」
「こないだまでやったら、無理やりにでも『タメ』の関係に持っていこうと必死やったのに、今はなんか余裕が見えんねや」
ユイナがビールを呷って愚痴を言うが、アキは二人のお姉ちゃんみたいにニコニコしている。
「ミサキも大人になったんやろ」
「そりゃそうや。ウチかて成長くらいするわ」
アキの言葉に返すと、二人が顔を見合わせた。
「「ミサキが成長するなんて、想像してへんかったわ」」
「そんな長セリフを、声合わせんでもええわ!」
「せやかて、こないだまでは、恋愛って“勝ち負け”やみたいに言うてたやんか」
「そうそう。どっちが好きって言わせるかとか、『振り回してナンボ』て豪語してたミサキやで」
アキの言葉にユイナが追い打ちをかける。
「それが今や、自分から実家の挨拶やら、新潟までランタン飛ばしに行こう言い出すやら、めっちゃ献身的やんか。どっちが振り回されてんねん」
ユイナはこんなに絡み酒やったか?
「……振り回してるつもりやねんけどな。気づいたら、タクヤのペースに乗せられてる気がするわ」
「そこっ! なんで困ったような顔して幸せそうなんや。ハラ立つ!」
机を叩くユイナ。
アキがユイナを取りなしつつ、お姉ちゃん目線でしみじみと言う。
「今のミサキは、なんとなく“勝ち負けやない”みたいな雰囲気出しとる」
「……せやな。今はちゃんと並んで歩けたら、それでええと思うてる」
結局、ウチが納得させられてもうた。
それからも、三人でわいわいとしょーもない話で盛り上がった。
せやな……、タクヤと出会ってから一か月。
日に日に、ちょっとずつ。
気づかんうちに、タクヤの歩幅にあわせようとする自分がいてる。
あの右手に、ちゃんと繋がっていたいと思う自分が。
タクヤに出会えたおかげやな。
「ありがとう……」
誰にも聞こえへん声で、タクヤにお礼を言った。




