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『お題のmonogatary』―どこに向かうか誰もわからないー ストーリーは『今後のお題』しだい  作者: もとき未明


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2.6 平常運転

monogatary.com 2026年2月6日のお題『ズレてる会話劇』について投稿したものです。



 タクヤ、三十三歳。

 大阪住みが十年を超えるのに、いまだに大阪弁を喋れない。――ただいま絶賛練習中。

 ひとり暮らしだが、この静けさも、近いうちに解消されるかもしれない。


 ある休日、自室でミサキと並んで本を読んでいたときのこと。


「なぁ、タクヤ……」

「ん?」

「タクヤの実家は大分よなぁ」

「せやで」

「そしたら、地獄やな」

「……そんなに大分に行くんが嫌やったら、無理に行かんでもええで」

「なんでやねん。ウチ、タクヤのお母ちゃんにも会ぅてみたいし、挨拶もしたいんや」

「……」(俺のおかんは、鬼とちゃうけどな)

「うん。怖そうやけどみんなが行く観光地なんやろ?」

「(……地獄めぐりのことやったんかい!)大分はどこ行ってもたいがい観光地やけどな」

「ほな安心やわ」

(正直、何に安心したのか見当もつかん)



「大分に行ったら、サルとか、キジも見たいなぁ」

(桃太郎のスカウトか)

「それやったら、ちょっと足伸ばして玖珠くすまで行ってみるか。童話の里やし、なんかあるやろ」

「それもええなぁ。楽しみやわぁ……湯布院にも行けるかな?」

「(思考がバラバラやな)まあ、途中やから行けるけど」

「ほんま?」

「ああ、でもめっちゃ人も車も多いで」

「ほな、玖珠だけでもええわ」

「……玖珠、そんな有名ちゃうで?」

「ええねん。空いてそうやし」

「基準そこか!」

「人混みは敵やからな」

(さっきまで湯布院に行きたがってたやんか)


「ところで、大分まで日帰りするん?」

「いや、フェリーや。『さんふらわあ』やな」

「こないだタクヤ、土日で往復する言うてたやん」

「せや。弾丸フェリー使えば可能や」

「弾丸フェリーいうのんは、めっちゃスピード出るんか?」

「……出ないぞ。のんびりした大型客船や」

「ほな、なんで『弾丸』いうんやろなぁ」

「着いたその日の夜に、帰りの便に乗るっていう強行軍みたいなもんやからな」

「え! 九州まで行くのに泊まらへんの? 日帰り?」

「ちゃう。ゼロ泊三日っちゅう行程や」


「……ほな、フェリーの中で眠らへんのやな……」

「なに、顔赤ぅしてんねん」

「せやかて、一晩中一緒におって、朝まで眠らへんってことは……」


「寝るわ! 船室で普通に寝るわ!」


「ほな、船の中で何するん?」

「寝るか、風呂入るか、飯食うかやな」

「修学旅行みたいやん」

「修学旅行で九州を弾丸往復はせぇへん」



 うん。今日もミサキは絶好調の平常運転だ。


 この疲労感すら、今はどこか心地よかった。



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