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『お題のmonogatary』―どこに向かうか誰もわからないー ストーリーは『今後のお題』しだい  作者: もとき未明


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1.31 せやけど今は……

monogatary.com 2026年1月31日のお題『好きすぎて嫌い』について投稿したものです。



 タクヤと初めてちゃんと話した日のこと、今でも割とはっきり覚えてる。


 正直に言うとな、最初は「優良物件」やと思うてたんや。


 年齢そこそこ、仕事も堅実、酒癖も悪うない。

 派手な夢も語らん代わりに、女に過度な期待もしすぎへん。

 会話は地味やけど、空気は読める。


 ――あ、これ「当たり」やな。

 不純やけど、そう思うた。


 結婚を考えるなら、こういう人や。

 好きかどうかより、安心できるかどうか。

 そんな損得勘定を、ウチはもう何年も前から、護身術みたいに身につけてしもてた。


 せやのに。


 一緒に過ごす時間が増えるほど、気づいたら「条件」やのうて「中身」ばっかり見てしもてた。


 人の話を最後まで遮らんと聞くところ。

 軽口叩きながらも、肝心なとこで絶対に線を越えへんところ。

 自分が正しいと思うてんのに、他人にそれを強要せんところ。


 ほんま、めんどくさい男やと思う。


 せやけどな……。

 その「めんどくささ」に、気づいたら一番救われてしもてたんや。


 付き合ってほしいかって聞かれたら、そら、嬉しい。

 このまま自然に、同じ時間を重ねていけたら、どんだけ幸せやろ。


 でもな、現実はそんなに甘うない。


 ウチには、期限がある。

 あと数か月で、人生の帳尻を合わせなあかん。


 相手はもう決まってるようなもんや。

 和歌山に連れ戻されて、「ええ人やから」で始まる未来を受け入れる。


 タクヤと、そこまで行けるか?


 ……無理や。


 あの人は、急がへん。

 急かされるのも、たぶん苦手や。

 ちゃんと自分を納得させて、ちゃんと好きになってからしか、前に進まへん。


 せやからこそ好きになったのに。

 せやからこそ、間に合わへん。


 こんなに好きやのに、嫌いにならなあかんなんて、どんな罰ゲームやねん。


 好きなまま別れるのが一番しんどいって、昔の自分は笑うてたくせに。


 今はもう、その「しんどさ」が、どんな形をして、どんな温度で胸に刺さるのか、分かってまう。


 嫌いになれたら、どんだけ楽やろな。


 欠点探して、幻滅して、「やっぱりこの程度の男やったんや」って吐き捨てられたら、どんだけ自分を救えるか。


 せやのに、思い出すのは、どうでもええ会話ばっかりや。


 深夜のコンビニ。

 一口もろた冷めたコーヒー。

 答えを出さへんまま、ただ並んで歩いた商店街の夜。


 あんなもん、人生的には「無駄」なはずやのに。


 ――好きすぎて、嫌いになられへん。


 それが一番、厄介や。


 この気持ちは、たぶん墓まで持っていく。

 言うたら、あの人は困る。

 困った顔して、責任感じて、無理して笑うタクヤを見るのは、もう耐えられへん。


 せやからウチは、何事もなかったみたいな顔して、いつか笑うて和歌山に帰る。


 それが正解や。


 大人としては、たぶん、それが一番正しい。


 でもな……。


 夜中にふと目ぇ覚めたとき、ほんの一瞬でええから、タクヤのことがちゃんと嫌いになれてたらええなって思うんや。


 ……たぶん、無理やろうけど。



 好きすぎて嫌いなんて、そんな器用なこと、ウチにはようできへんから。



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