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1.3 マウンテンパーカ』

monogatary.com 2026年1月3日のお題『一生モノ』について投稿したものです。


 タクヤ、33歳。大阪住みが10年を超えるのにいまだに大阪弁をしゃべれない。ひとり暮らしだが、独身主義者ではない。


 三が日の最終日だというのに、この冬一番の寒波が来ているらしい。

 エアコンの予約設定を忘れたせいで、部屋の中は冷凍庫のようだ。布団から出るのに四十分もかかってしまった。

 おかげで朝飯はキヨスクでパンを買うしかない。

 どんなに寒くても。そしてどんなに心が揺れていても、俺の仕事に正月休みの延長はないのだ。


 スーツの上から相棒のマウンパを羽織って外に出る。寒っ!

 思わず声が漏れて、慌ててジッパーを引き上げる。


 このマウンパ、薄手だけど断熱効果はバツグンだ。

 入社一年目。

 慣れない仕事にヘトヘトになりながら、初めての冬のボーナスを全部つぎ込んで奮発した。


 天然ダウンではないが、米軍御用達のプリマロフトという高機能素材が使われているらしい。

 その『軍用』という響きが、当時の俺には「これから都会という戦場で生きていくための鎧」のように思えたんだっけ。


 寒い日の出勤時はもちろん、スキー場やアウトドアの際にも丈夫で重宝している。


 以来、今年で十一回目の冬になるけど定番のモデルだし、多少の色褪せも「年期」や「味」と言い張れば問題ない。


 実はこの十年で五キロ以上太ってしまったのだが、買ったときに「下にモフモフのセーターを着こんでも大丈夫なように」と、大きめを選んでおいたのが功を奏した。

 最近のインナーは薄くても防寒機能に優れているから、今のところジッパーを上げてもまだ余裕がある。

 たぶん、ある。



 この先も長くこのマウンパを着るためにはこれ以上太らないようにしないとなぁ。



 俺は冷たい風の中、鎧の襟を立てて駅へと歩き出した。





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