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1.2 いまどきのお年玉

monogatary.com 2026年1月2日のお題『お年玉の使い道』について投稿したものです。


 正月のまったりした空気の中、箱根駅伝の中継をぼんやり眺めていた昼過ぎのこと。

 スマホが震え、画面に「LINEの友だちリクエスト」が表示された。送り主はーーじいちゃんだった。


 もう八十を過ぎているはずなのに、いまさらLINEデビューかよ。

 驚きはしたが、拒否するわけにもいかないのですぐに承認した。

 とりあえず「あけおめ」のスタンプを送ったものの、既読になっても返事はない。

 不慣れな手つきで画面を凝視しているじいちゃんの姿が目に浮かび、少し口角が上がった。


 夕方になってLINE通知が鳴ったので確認すると、届いたのはLINEPayの送金通知だった。金額は、一万円。

 じいちゃんからのものだから怪しいわけじゃない。

 でも、どうしようかと悩んでいるうち、今度はたどたどしいLINEメッセが届いた。

『明けましておめでとう!

 連休には帰ってくると聞いたけど、そん時では遅いやろうからお年玉を送る』


 ……なんというか。

 三十過ぎのオッサンにお年玉かよ!


 そういえば、一年前に帰省したときにも、親戚の子どもたちの前でお年玉を握らされた。

「タクヤはまだ独身なんやき、お年玉は当然じゃ。遠慮せんで受け取れ」

 えらく恥ずかしがっていた俺を、じいちゃんはそう言って笑い飛ばしてくれたっけ。。

 それが今年からはオンラインお年玉か。



「もしもし、じいちゃん。明けましておめでとう。お年玉もありがとう」

 お礼を言うために電話をかけると、じいちゃんは弾んだ声で応えた。

「おお、わざわざ電話せんでもいいんに。タクヤが元気ならそれでええ」

「じいちゃん、LINEとか使いきるようになったんやね」

「そうじゃ。タクヤにお年玉を送るっち言うたら、サーヤが教えてくれたんじゃ」

 サーヤは祖父と同居している従姉妹だ。高校二年生だったはず。


「もう俺も三十を超えたんやき、お年玉とかいいんよ」

「なん言いよる。

 独身の間はお年玉をやるっち決めちょるんじゃ。

 もらうんが嫌じゃったら早よ結婚せえ。

 ワシが生きちょる間に結婚せんと祝儀を渡せんじゃろうが。

 じゃあき、こrはお祝いの前払いじゃ。カハハ!」


 そっちかい!

 ボケ防止にLINEを始めたのかと思ったら、俺への当てつけだったとは。


「……まぁ、そのうちにいい人が見つかったら連れて帰るきね。長生きしよよ」

「おおっ! 待っちょんぞ。タクヤの子供の顔を見るまで死なれんわい」

 いくつまで生きる気だ。

 まあそれが生きる気力になるのなら悪くはないか。

「じゃあ、五月の連休にはお土産持って行くけん。ばあちゃんにもよろしく」

「わかった。無理せんごつ、タクヤも頑張れよ」


 通話を切り、静かになった部屋でスマホを見つめる。

 さて、このお年玉の扱いに困る。

 初めてじいちゃんが指先を震わせて送ってくれた電子マネーを、コンビニの支払いでパッと使ってしまうのは、なんだかバチが当たる気がする。

 かといって、LINEPayの残高の中では、ほかのお金と区別がつかない。



 ……ま、いいか。


 これからは、残高が常に一万円を切らないくらいの余裕をもって生活するとしますか。



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