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『お題のmonogatary』―どこに向かうか誰もわからないー ストーリーは『今後のお題』しだい  作者: もとき未明


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15/80

1.15 今は、まだ

monogatary.com 2026年1月15日のお題『知らなくていいこともあるよね』について投稿したものです。


 タクヤ三十三歳。大阪住みが十年を超えるのに、いまだに大阪弁をしゃべれない。ひとり暮らしだが、独身主義者というわけではない。



 就業間際、内線が鳴った。

 受話器を取ると、案の定、若杉だった。


「タクヤ先輩。今日、飲みに行かないっすか」

「また、合コンか? 俺はもう勘弁だぞ」

「違うっすよ。今日は野郎ばかりで、こないだの反省会っす」

「佐藤も来るのか?」

「そうっす。佐藤もタクヤ先輩の話を聞きたがってますよ」


 完全に俺が酒の肴にされる流れだが、断る理由も特に見当たらない。

 俺は「わかった」と短く答えた。



 いつもの居酒屋。

 変わらない店で、変わらない顔ぶれ。


 若杉は、電話でも嵐のようだな。



 飲み会では、先日のスリ犯取り押さえ事件について追及された。

「……というわけで、ミサキの地獄耳とおせっかいのおかげで、スリ犯が現行犯逮捕されたってわけだ」


「タクヤ先輩も活躍したって聞いてるっすよ」

「活躍どころか、犯人に押し倒された勢いで倒れたまま離さなかっただけだよ」

「いやいや。アキの話だと、ミサキさんの残した暗号メッセージを、見事に解明して助けに行ったらしいじゃないっすか。俺が聞いてもチンプンカンプンだったっすよ」

「ミサキさんの性格をバッチリ把握していたタクヤ先輩のファインプレーですね」

 目を輝かせた佐藤まで、俺を持ちあげてくる。


「そんな大したことじゃないよ」

 俺は、話の流れをぶったぎるようにビールを呷る。


「あ、そうそう。タクヤ先輩とミサキさんは、年内にも結婚するんっすか?」

「ブフッ!」

 危うくビールを吹きだすところだった。


「なんだそれ。そんな話は一ミリも出てないし、俺にはミサキと結婚するつもりはねえよ」

「そうなんっすか? アキの話じゃ、ミサキさんは年内に結婚したいらしいっすよ」

「三十歳って、そんなに焦る歳でもないだろ」

「それがですね……」

 若杉が前のめりになって、少し小声で話し始めた。


「なんでも……。ミサキさんは三十歳の間に結婚相手を決めないと、親が決めた相手と結婚させられるらしいっすよ。地元の和歌山で」

「え!……」

 いまどき、そんなことが、まかり通るところもあるのか。大分の田舎でもサスガにそれはないぞ。


「マジか……」

「マジっす」


 だから、あんなにグイグイ来てたのか。

 知りたくなかったな、その情報。

 これから先、どんな距離感で接すればいいのか、またわからんくなった……。


「ま、でも。アキが言うには、ミサキも最近は吹っ切れたって言ってたっすよ」

 若杉がフォローしてるのか? これ……。



 結婚か……。

 誰かと一緒にいること自体は、別に嫌いじゃない。

 ただ、「今すぐ決めろ」と言われると、まるで出口の見えない部屋に閉じ込められたみたいに、息が詰まる。


 じいちゃんとの約束もあるし、俺もそろそろ本格的に考えないといけない歳なんだろう。



 でも、ミサキはない。


 少なくとも――今は。




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