表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

1.1 震度百?

monogatary.com 2026年1月1日のお題『新年一発目のニュース速報』について投稿したものです。


一年のタイムラグがある題材ですが、フィクションです。

震災に合われた方へは、謹んでお見舞い申し上げます。


 ひさしぶりにオールで年越し番組を見ていたせいか、目が覚めたときにはとっくに昼を過ぎていた。

 重い頭を揺らしながら、布団から手だけを出してテレビの電源ボタンを押す。寒い!


 首周りに布団を巻きつけながらザッピングしてみるが、どの局も、いつの間にやらお正月の定番となってしまった芸人たちが騒いでいるばかりだ。

 ほかに予定もないので適当なお笑いをBGMに夢と現実を行き来していたら、突然、世界が横に滑った。


 マナーモードのはずのスマホが、

「地震です! 地震です!」

 と無機質な声を張り上げている。

 スマホがこれだけ騒ぐってことは、震度4以上は確定だろう。


 テレビ画面からお笑い芸人が消え、報道デスクへと切り替わる。

 神妙な顔のキャスターが、震源地は能登半島だと繰り返し告げている。

「結構近いんじゃね?」

 誰に向けての疑問形なんだ。俺はひとり暮らしだよ!

 ここ大阪北部は予想どおり震度4。

 まぁ、倒れるような食器棚も本棚もないから実害はないはずだ。たぶん。


 だが、震源地は震度7。画面に並ぶ『大津波警報』の赤い文字が心臓の鼓動を早める。被害が少ないといいな……。

 ベッドからゴソゴソと抜け出し、念のためにガスの元栓を閉める。

 余震も嫌だが、正月から火事になるのはもっと御免だ。


 冷蔵庫から水を取り出して喉を潤していたら、再びスマホが震えた。

 余震かと思ったら、表示されているのは田舎のおふくろだ。

「もしもし……」

「もしもしじゃなかろうが! 明けましておめでとう!」

 いつにも増して元気だ。

「はいはい。おめでとう」

「なんね。正月から眠たそうじゃねえ」

「……まあ、昨日遅かったからな」

「まあいいわ。地震は大丈夫やった?」

「ああ、少し揺れたけど大丈夫」

「ニュースじゃそっちは震度4ち言いよったけど怪我とかしちょらんね?」

「してないっちゃ」

 十年以上大阪で暮らしているのに、俺がいっこうに大阪弁をしゃべれないのは、たぶんこの定期的な電話のせいだ。


「ほんならいいけど。あんた、年末くらい帰ってこんね。じいちゃんもばあちゃんも会いたがりょったんよ」

「うん。いつか帰るよ」

「いつかって……。もうそげえ何回も会えんかもしれんとよ」


 おふくろの言葉に、ふと考える。

 二年に一回くらい帰省すりゃいいかと思っていたが、祖父母はたしか八十歳。

 仮に百歳まで生きてくれるとしても、今のペースなら、あと十回しか顔を合わせられない計算になる。

 急に、ちっちゃい頃にじいちゃんと川で魚釣りをしたことや、ばあちゃんのいなり寿司の甘い匂いを思い出した。


「聞きよんの?」

 しびれを切らしたような声が、俺を現実に引き戻す。

「ああ。連休に休みが取れたら、ちゃんと帰るよ」

 不思議なもので、この短い間に、年に一回は帰省する気になっていた。

 不謹慎かもしれないが、地震がなければこの電話もなかっただろう。

 この地震が、俺の「いつか」という甘えを壊すきっかけになったのかもしれない。


「そうね。帰ってきたら教えようかと思いよったけど、あんた、ミホちゃんが結婚したち知っちょんの?」

「……え?」

 喉の奥が、不自然に固まった。

「知らん……、けど」

「そうね……。あんたと付き合いよったし、ふたりともいつまででん結婚せんき、てっきりあんたと結婚するんかと思いよったよ」



 なにその震度百級の余震。


「……」

「じゃあけん……&#W@%P……」

 もう、おふくろが何をしゃべっているのか、俺の脳は理解することを拒否していた。

「……わかった。ありがと。また連絡する」

 返事も待たずに、俺は通話を切断した。



 ミホとは、高校一年から二年の途中まで付き合っていた。

 一緒に勉強したりお茶したり。

 思春期特有の、こそばゆくて健全な付き合いだった。


 別れもお互いが嫌いになったわけじゃなく、今となっては思い出せないような些細なことがきっかけで自然消滅。

 ミホは九州の大学を卒業後、地元で就職していたから、会うのは成人式か数年に一度の同級会くらいなものだった。


 それでも、俺は心の中でずっとミホの存在をキープしていたんだと思う。

 大学時代や就職してからも何人かの彼女はいたけど、別れたあとは必ずといっていいほど「ミホならどう言ったかな」なんて思い出していた。


 俺にとって、彼女は最も美化され、守られた「聖域」のような思い出だったのだ。



 窓の外では、またどこかでサイレンが鳴っている。

 その後も何度か、画面の上をニュース速報のテロップが流れていった。


 けれど、今の俺にとっては、それらはすべて微震でしかなかった。



日々のお題に則して書いていくので、どんな展開になるのか筆者もわかりません!

とりあえずシェアードユニバースだけを意識しますので、連載のカタチになることを祈っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ