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保健室の西日、境界線の消滅


雨の日に濡れたせいか、数日後、私の体は鉛のように重くなっていた。

午後の授業を抜け出し、保健室の硬いベッドに身を横たえる。白いカーテンが微かな風に揺れ、窓からはオレンジ色の西日が差し込んでいた。遠くで響く体育の笛の音が、意識をぼんやりと遠ざける。


その時、静かにドアが開く音がした。


先生だろうか。目を閉じていると、規則正しい足音が私のベッドの前で止まった。


「……凛、起きてる?」


掠れた、けれど聞き間違えるはずのない声。目を開けると、カーテンの隙間から結衣が覗き込んでいた。手には救急箱を抱えている。


「あ、起こしちゃった? 先生に、委員会の絆創膏補充しといてって頼まれちゃって」


彼女はそう言い訳をしながら、ベッドの脇の丸椅子に腰を下ろした。クラスで見せる華やかな笑顔はない。西日に照らされた彼女の横顔は、ひどく儚く見えた。


「顔、赤いよ」


結衣の手が伸びてくる。ひんやりとした彼女の指先が私の前髪を分け、額にそっと触れた。あの日、プリント越しに触れた指先よりも、ずっと確かで、柔らかな体温。


「熱い……。私、あの日傘に入れてもらったのに、凛に無理させちゃったね」


「……違う。私が、入れたかっただけだから」


掠れた声で返すと、結衣の指先がピクリと震えた。彼女の瞳が揺れ、真っ直ぐに私を見つめる。誰もいない、カーテンに仕切られたわずか数メートルの空間。外の世界では「友達未満」の私たちが、ここでは名前も肩書きも剥ぎ取られた、ただの二人きりだった。


「……ここ、一番落ち着くね」


結衣がポツリと零した。その瞳には、今にも零れ落ちそうなほどの寂しさと、私に向けられた熱い色が混ざり合っている。


彼女の指が、額から頬へと滑り落ちる。私はその手に縋るように、自分の手を重ねた。

「結衣……」


名前を呼んだ瞬間、彼女の顔がゆっくりと近づいてくる。西日に透けた彼女の睫毛が震えているのが見えた。私たちはもう、引き返せない場所に立っている。そう確信した。


この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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