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指先から始まる境界線
重なり合った指先から伝わる熱に、息が止まりそうになる。
結衣の瞳が、至近距離で私を捉えていた。その茶色い瞳の奥に、いつもは見せない「迷い」のような色が過った――その時。
ガラガラ、と廊下の引き戸が乱暴に開く音が響いた。
「あー、喉乾いた! 結衣、まだいたの? 部活行こうぜー!」
部活帰りの男子生徒たちの、無神経なほど明るい声。その音と同時に、結衣の指先が弾かれたように私の手から離れた。
「……うん、今行く! ちょっとプリント配ってただけ」
振り返った彼女の声は、一瞬前までの微かな震えが嘘のように、いつもの「クラスの人気者」のトーンに戻っていた。彼女は一度もこちらを見ることなく、机に置かれた鞄を肩にかける。
「じゃあね、凛さん。それ、明日提出だから忘れないでね」
「凛さん」。
その、他人行儀な呼び方。
さっきまで触れ合っていた指先の熱が、急速に冷めていくのを感じた。彼女は取り巻きの友人たちに囲まれ、笑い声を響かせながら教室を去っていく。
私は、残された冷たいプリントを強く握りしめた。
窓の外では、まだ運動部たちの喧騒が続いている。けれど、私の世界からは、たった今すべての音が消えてしまったかのように静かだった。
この作品はAI40%、筆者60%で書きました。
原案100%筆者。
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