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第5話 貧困問題の解決



◇第1章 東京の底で眠る「見えない地獄」


東京・新宿。光と闇が共存する都市。

駅前の巨大モニターでは派手な広告が流れ、観光客で溢れている一方、裏路地へ数歩踏み込めば、冷たい雨の匂いと、絶望の影が沈んでいた。


Z-001は、黒い軽トラックの荷台からゆっくり立ち上がり、古い団地を見つめた。


「イー……」

(この国は、豊かさの影に巨大な見捨てられた領域を隠している)


今回のターゲットは 都市部の貧困問題。

社会から最も見えづらく、最も救われづらい問題だ。


Z-001は手首の通信機をタップする。


『女子戦闘員(F-タイプ)部隊、投入開始。社会適応モードで潜入せよ』


「イーッ!」


夜の団地に、黒髪の若い女性たちの影が静かに混ざり始めた。

誰にも気づかれぬまま、ショッカー夜間労働部隊の作戦が始まる。



---


◇第2章 疲れ切った母と、限界に近い少女


古びた団地の5階。

玄関のドアが、静かに軋んだ。


「……ただいま……」


シングルマザー・ユキ(28歳)は、肩を落としながら靴を脱ぐ。

昼はレジのパート、夜はオフィスビル清掃。睡眠は毎日4時間。


リビングで待っていたのは、小さく丸まって寝てしまった娘アヤ(7歳)。

夕食の皿は空。何も食べていない。


ユキは、崩れ落ちるように膝をついた。


「……ごめんね……ママ、働かないと……」


その瞬間――


ピンポーン


インターホンの電子音。

ドアを開けると、黒い全身タイツのような装束を着た二人の女性が立っていた。


「な、なに!? 警察……!? 宗教……!? 闇バイトの勧誘!?」


「イー。」(違います。あなたの生活を改善しに来ました)


声は優しく、しかし機械的。

意味は分からないのに、不思議と拒絶する気持ちが湧かない。


一歩、家の中に入ると――


■F-001

台所へ直行。10分で本格的な夕食を完成。アヤを抱きしめ安心させながら食事を介助。


■F-002

清掃・洗濯・食器洗い・整理整頓を、人間とは思えない速度で完了。


「あ……あの……休んでいいの? 私、本当に……?」


「イー。」(あなたは眠ってください。休息の権利があります)


ユキは、涙をこらえたまま布団へ倒れ込み、そのまま意識を手放した。



---


◇第3章 仕事・家事・育児「全自動化」


翌日――

ユキは目を覚まし、時刻を確認し、飛び起きた。


「やばい! 寝過ごした! 仕事行かなきゃ!」


しかし驚くべき光景が広がる。


●朝食 → 完璧

●アヤの身支度 → すでに終わってる

●保育園の準備 → カバン横に整列

●部屋 → ホテルの様に清潔


「……夢、じゃないの?」


そこへF-001がクールに返事。


「イー。」(本日は仕事に同行し、あなたの労働成果の最大化をサポートします)


夜――

清掃の仕事中。F-002は照明を反射する速度でモップを動かし、3時間分の業務を30分で完了。


そしてその間、ユキは――


アヤとビデオ通話していた。


「今日ね、学校でね……!」


ユキの目は潤みっぱなしだった。


帰宅すると、財布の中には信じがたい給与額。


「い……いったい、あなた達、何者なの……?」


F-001はゆっくり胸に手を当てた。


「イー。」

(あなたの幸福が、私たちの任務です)



---


◇第4章 貧困改善ネットワークの誕生


F-タイプの活動は、社会の目の届かない場所で静かに広まっていく。


▼ 働き詰めのシングルマザー

▼ 下層介護職に縛られた若者

▼ 非正規雇用で限界の父親

▼ 学費が払えない学生


「家事代行」

「仕事代行」

「子育て支援」

「介護支援」

「学習支援」


すべて、無料 or 最低報酬制で提供


人々の生活は安定し、疲労が消え、笑顔が戻り始めた。


 → 生活満足度の上昇

 → 医療費の削減

 → 子どもの成績向上

 → 家庭内トラブル減少


社会は静かに、しかし確実に改善していた。



---


◇第5章 動き出す「合法の悪」──怪人スキーマ


その夜。

高級料亭のVIP個室。


元官僚、議員、天下り財団の理事たちが集い、怒り狂っていた。


「なんだあの黒い連中は! 貧困が改善したら、我々が公金を“受け取る理由”が消えるだろうが!」


「貧困“対策”を永遠に続けて利益にするのが我々の仕組みだ! 解決されては困るんだよ!!」


怒声が響き、やがて――


「スキーマ、発動だ」


男が立ち上がり、メガネの奥の眼が濁った光を帯びる。


次の瞬間、怪人スキーマへ変貌。

蚊と蝶のキメラの姿、長いクチバシが空気を震わせた。


「幸福感・生活安定・未来への希望……全部吸い取ってやる……!」


怪人スキーマは市役所や支援窓口に“複雑化の霧”を撒き散らし、手続きと書類を無限に増やし、支援金が届かないようにした。


“制度疲弊”によって貧困層を再び追い詰め始めたのだ。



---


◇第6章 Z-001の反撃 ―「全記録透明化作戦」


Z-001はすべてを見抜いていた。


『怪人スキーマの弱点は、闇ではなく光だ。

 公金を完全記録・完全公開せよ』


すべての行政書類、振込データ、入札情報、理事名簿…

何十年分という資料の山が一瞬でデータ化・公開された。


SNS、テレビ、Webニュースに同時爆発。


「どこに、いくら、誰が、どう使ったのか」

1円単位で誰でも閲覧できる。


「や、やめろぉぉぉ!!!

透明性は最大の敵だ!!

公開されれば“合法の搾取”がバレる!!」


怪人スキーマの体が溶ける。


「幸福感の吸収……が……できない世界で……俺たちは……生きられ……!」


断末魔を上げながら、怪人スキーマは消滅した。



---


◇最終章 幸福の形と、戦闘員の胸に宿るもの


数日後。


ユキとアヤは、夕食のテーブルで笑い合っていた。


「ママ、今日はね、逆上がりできたんだよ!」


「すごいじゃない! あとで見せて!」


Z-001は離れた屋上からその光景を見守る。


「イー……」

(孤独が消える社会が、俺の望みだった。

俺はようやく……救われている)


夜風が吹き抜ける。


Z-001の背中は、黒く、たくましく、そして――温かかった。



次回予告


> 第6話 独身問題と幸福の定義

F-タイプ男女混成部隊、遂に「同居支援」作戦開始。

しかし、そこに待ち構えるのは“欲望を操る怪人”だった……。

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