第4話 水産業を支配せよ ― 三陸海岸「黒い漁師」来襲
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◆――波の音と錆の匂いが染みついた漁港
三陸海岸。
潮風が刺すように冷たい、冬の入り口。
並ぶ船はどれも古び、ペンキは剥げ、ロープはほつれ、かつての賑わいの残像だけが波間に漂っていた。
港に降り立つ黒い影の軍団。
――ショッカー戦闘員、水産部隊。
俺、Z-001は埠頭に立ち、潮風を真正面から受けた。
「イーッ!」
号令の一声に、数百体の戦闘員が背筋を伸ばして整列する。
ただの異様な軍団ではない――日本を救うための“黒い希望”だ。
背後から、漁師の男たちのボソついた声が聞こえた。
「なんだよあれ……ショッカーじゃねぇか」
「テレビで見たぞ。犯罪組織だろ? なんでうちの港に……?」
不安、困惑、恐れ。しかし、その奥にあるのは――消えかかった期待。
この港が、もう一度生き返ってほしいという本能。
俺は静かに宣言した。
> 『漁師の皆さん、安心して操舵してください。網を投げ、引き上げ、処理し、輸送するのはすべて我々が担当します。
皆さんは、経験と判断力――それだけを貸してほしい』
かつて「何もできず孤独死した俺」が、今は人々に未来を提示している。
その矛盾に胸が熱くなる。
漁師歴60年、白髪のタケジ老人が震える声で尋ねた。
「お、お前ら…何の見返りが欲しいんだ?」
俺は迷いなく答えた。
『皆さんが笑う顔が見たい。それだけです』
タケジは、唇を噛んだ。
「……そんな奴らが、世の中に本当にいるのか?」
「イーッ」
◆――出港。黒い労働力、荒ぶる海へ
古びた漁船が波を切る。風は強く、海は荒い。
しかしショッカー戦闘員はバランスを崩さない。
「イーッ!」
「イーッ!」
掛け声とともに網を展開。
巨大な網が、まるで生き物のように海へ滑り込んでいく。
戦闘員は疲労を知らず、恐怖を知らず、寒さを感じず、睡眠も不要。
だからこそ、漁師がどれほど無茶と思うタイミングでも――機械のように動く。
魚群探知機が反応すると、一拍も遅れず網が下りる。
タケジは震える声で呟いた。
「すげぇ……! 俺が若ぇ頃の仲間ですら、ここまで息は合ってなかった……!」
数時間後、船内は銀色の光で満ちた。跳ねる魚、鳴る氷、連動する黒い手。
その全てが調和し、まるで一つの大きな生命体が働いているかのよう。
タケジの目から涙が落ちた。
「……帰ってきた。港の時代が……帰ってきたんだ……」
◆――地獄から天国へ。地方経済の逆転劇
港に戻るや否や、戦闘員たちは驚異的速度で加工・梱包を進行。
「イー!」(三枚おろし完了)
「イー!」(塩漬け加工完了)
「イー!」(急速冷凍完了)
数日後、漁港は様変わりした。
トラックが行き交い、観光客が戻り、商店街に「満員」という張り紙が並ぶ。
「うちの息子、帰ってくるってよ! 漁港が復活したって聞いて!」
「うちの旅館に予約が殺到してるんだ!」
人々の表情が、暗闇から光へと変わっていく。
そして町の子どもたちが戦闘員に叫んだ。
「ショッカーさん、ありがとー!」
戦闘員は胸を張って答えた。
「イーッ!!」
◆――怪人、出現
その光景を憎々しげに見つめる男がいた。
高級スーツ、サングラス、派手な車のキーを弄ぶ指。
海外資本による漁業権収奪の手先――
グローバリズマネーズ。
「笑わせるな。低賃金労働は俺たちのビジネスだ。
お前らがやっているのは――市場破壊だ!」
男は長財布を掲げ、叫んだ。
「変身!!」
黒光りの鎧と革ジャンが体を覆う。
刃のついたクレジットカードを振り回し、漁港の利益と活気を切り裂くように空間を歪ませる。
怪人 グローバリー。
「俺は“内需破壊フィールド”を展開する!
消費を枯らし、利益をすべて海外に送金する!!
お前らがどれだけ頑張っても、資本こそが絶対正義なんだよ!!」
◆――戦わない判断。Z-001の采配
俺は一歩前へ出た。
だが――戦闘員に攻撃指令を出さない。
「イイ?」(攻撃しないのか?)
『必要ない』
グローバリーの力は市場支配。
だが市場に勝つ方法は一つしかない。
> 「国産品を大量に・安く・高品質で供給し、 国内の消費と輸出の両方を満たす」
俺は叫んだ。
『全戦闘員に告ぐ!
国内市場へ通常価格の半額で供給!
残りは最高級加工品として世界に輸出開始!』
グローバリーは絶叫した。
「な……なにぃ!? 国内に安くて高品質の国産品が溢れる!?
俺の市場破壊が通じねぇ!!」
「イイイイイイイイーーーー!!!!」
黒い労働力が、海産物流通を完全に支配していく。
それは――豊かさによる支配。
グローバリーは電撃を吹き出しながら撤退していった。
「覚えていろ! 資本は絶対に蘇る!!
世界は、搾取でできてるんだぁぁぁ!!!」
◆――エピローグ
夕焼けの港。
静かに波が寄せ、笑い声が響く。
タケジは、Z-001の肩を叩いた。
「ショッカーが悪の組織だなんて、誰が決めたんだ?
お前らは――命の恩人だ」
Z-001は答えた。
『イー』
吹く風は冷たいが、港の空気は温かかった。
――日本の水産業は完全に復活した。
次に救う産業は、どこだ?
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次回予告
第5話 独身問題を破壊せよ ― 黒衣の同棲計画発動
・Z-001が次に送り込むのは“女子ショッカー部隊”
・孤独に苦しむ人々に寄り添い、家事・仕事・愛情・癒しを与える
・だがそこに立ちはだかるのは――
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