第2話 ショッカー戦闘員、現代に誕生
【主人公:俺(ショッカー戦闘員 識別符号:Z-001)】
【場所:ショッカーの秘密基地(現代日本・地下深く)】
超人的な覚醒と「イー!」の哲学
ズガァン!と床に降り立った俺――いや、識別符号Z-001は、驚異的な身体能力と、クリアになりすぎた意識に戸惑いを覚える暇もなかった。
視界は鮮明だ。暗闇でも昼間のように全てが見える。全身を覆う黒いコスチュームは、皮膚の一部のように違和感がない。
(なんだ、この力は……!)
試しに目の前のコンクリート壁に手をかざす。軽く触れただけなのに、壁がドロリと歪み、指の形にへこんだ。
怪力、極まる。
そして、体内には疲れという概念が存在しない。胃は空腹を訴えず、脳は睡眠を要求しない。
『Z-001。現在の君の身体スペックを報告する』
意識に直接、無感情な合成音声が響く。
* 基礎体力: 現役オリンピック選手(全種目)の平均値の300倍。
* 疾患耐性: ゼロ。すべての病原体、毒物に完全耐性。
* 活動限界: なし。不眠不休、絶食状態での活動可能期間は恒久。
* 感情・欲望: ゼロ。存在するは**「使命(日本救済)」と「指令遂行」**の欲求のみ。
* 通信手段: **「イー!」**による意思表示と、脳内シンクロ通信のみ。
「イー……」
思わず口から漏れたのは、力強い**「イー!」という一言。これこそが、喜び、驚き、そして了解の全てを伝える究極のコミットメントワード**だった。複雑な人間関係から解放され、ただ使命に集中できる。なんて清々しいんだ!
孤独と欲望にまみれていた42歳の男は消え、純粋な使命の結晶体、Z-001として、ここに誕生した。
秘密基地建設と戦闘員の量産
俺の使命は、まず「戦力」を整えることだった。
『第一段階:日本救済のためのショッカー戦闘員ネットワークの構築。資材と場所は、この地下施設に用意してある』
指令を受け、俺は活動を開始した。
場所は東京近郊の地下深く。ここはショッカーが極秘裏に建造した、巨大な秘密基地だった。そこには、大量の資材と、戦闘員を製造するためのクローン培養装置が並んでいる。
(人間をクローン製造するなんて……倫理的に問題が……いや、イー!)
思考がすぐに修正される。この戦闘員は、人間の欲望や感情を完全に排除した「働くためだけの純粋な生体アンドロイド」だ。誰も傷つけない。ただ、日本を救うために働く。
俺はクローン装置のメインコンソールに立ち、スイッチを押し込んだ。
『戦闘員製造開始。初期ロット、5000体』
培養カプセルの中で、ドロリとした特殊な液体が沸騰し、次々と黒いタイツの影が形を成していく。5000人の、俺と同じ、孤独とは無縁の「使命」に満ちた兵士たちだ。
彼らの目覚めとともに、基地中に響き渡る。
「イー! イー! イーーーッ!」
まるで合唱だ。純粋な労働意欲の雄叫び! 孤独な社畜だった俺には、この集団の連帯感が、何よりも心強いものに感じられた。
ショッカーネットワーク、日本全土へ
戦闘員たちが立ち上がり、俺の前に整列する。全員が筋肉隆々、瞳には使命の炎が燃えている。
『Z-001、彼らを日本全土へ配置せよ。目立たない場所を選び、**救済の拠点を構築する。ショッカーの力は、まず「隠密な労働力」**として、社会の底辺から浸透していく』
俺は指令に従い、5000体の部下たちに、日本地図上の座標と具体的な任務を脳内シンクロで伝達した。
* 北海道:広大な土地を利用した農業生産拠点の確保。
* 三陸・九州:豊富な漁場を利用した水産加工施設の建設。
* 東京・大阪:貧困家庭支援のための隠密アルバイト部隊の編成。
「イー! イーッ!」
戦闘員たちは一糸乱れぬ動作で、基地から、日本各地のマンホール、廃墟、地下トンネルへと散っていく。
(俺は、ついに居場所を見つけたんだな……)
孤独死した男は、今、ショッカー戦闘員Z-001として、数千の兵士を率いる司令官となった。
日本の抱える社会問題。それはあまりにも巨大で複雑だ。だが、飢えも眠気も病気も知らない、純粋な労働力を持つショッカー戦闘員ネットワークがあれば――
「日本を救う! イーッ!」
俺は高らかに叫んだ。その声は、秘密基地の天井を突き破り、日本の空の彼方まで届くように響き渡った。
第3話では、いよいよショッカー戦闘員が最初の社会問題、農業問題に立ち向かいます。不眠不休でクワを振るう戦闘員たちが、日本の食料自給率を劇的に改善させる様子を描きます。




