表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/94

BAD END⑧「視線の上げ方」

 名簿室の暗さは、目を慣らそうとするほど深くなる。

 深くなるほど、白い紙が浮く。


 浮いた白は、読みたがる目を誘う。


 わたしは床だけを見ていた。

 棚の脚だけを追っていた。

 木箱の留め具の“形”だけを見ていた。


 それでも、ほんの一瞬――確認したくなった。


(……札の文字は欠けてる。読めない。なら、大丈夫だ)


 その考えが油断だと気づくより先に、視線がわずかに上がった。

 箱の上。

 札の表面。

 “文字のある位置”。


 紙が笑った。


 棚の背表紙が一斉に擦れる。

 擦れる音は文字の洪水になる前の形で、空気を満たす。

 満たされた空気が、喉の形に組み直される。


 背後から声が落ちた。


「……汐見灯子」


 フルネーム。

 綺麗すぎる発音。

 名簿室の中心から響く声。


 終端札を落とすより早く、喉が“返事”を作る。


 思考ではなく反射。

 反射は最短で落ちる。


「……はい」


 声が出た瞬間、紙が一斉に息を吸った。

 吸った息がわたしの首元へ針の束で刺さる。


 刻印が冷える。


 影が増える。

 二つ、三つ。

 増えた影が戻らない。


 床の上に落ちていた終端札が、ただの紙切れに見えた。

 紙切れに見えた瞬間、負けを悟った。


 棚の隙間から、無数の「はい」が滑り落ちてくる。

 誰の返事でもない。

 学院の返事だ。


 ……はい……



 ……はい……




 ……はい……



 視界が白くなる。

 救いではない。

 欠落の白。


 足元で紗灯の影が必死に重なろうとした。

 でも重なる前に、わたしの影が“器”として固定されてしまう。


『……おねえちゃん……!』


 声にならない叫びが、暗転に沈んだ。




【BAD END】

『名簿室――視線の上げ方』

・読ませる穴:開口(視線)

・呼名:成立フルネーム

・返事:強制(「はい」)

・灯子:影落ち固定(回復不能)







タイトル画面へ


墨色の画面に、白い文字。

影喰かげぐい ― 白鷺の夜鳴き ―』


右下に淡い表示。

[SYSTEM] “読まない”が破られました。

[SYSTEM] リトライ地点:8-1 名簿室・扉の取っ手前





▶ リトライ

ロード

タイトルへ戻る



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ