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 B:守る――防衛:しずくの名前を繋ぎ、無影域の中心を割る

 わたしは透子の背中から視線を引き剥がした。


(追いたい。

 でも、今ここでしずくが欠けたら終わる)


 しずくの肩を支え、明るい声を作った。


「しずく、いまから一緒に歩く。

 影のある場所だけ踏んで」


「影の……ある場所……?」


 しずくは混乱している。

 でも、わたしの声の強さにすがるように頷いた。


 みゆが駆け寄ってきた。


「灯子! しずく、顔色やばいよ!」


「みゆ、お願い。

 廊下の”影が落ちない点”を見つけたら、踏まないで。

 みんなにも言って」


 みゆは驚いた顔をしたが、次の瞬間、真顔になった。


「……分かった。

 灯子、何してるか分かんないけど、信じる」


(普通の子の“信じる”って、こういうとき一番強い)


 わたしは鞄からメモ帳を出し、廊下の床を見た。

 小型無影域が点在している。

 まるで“星図”みたいに。


(点があるなら、中心がある)


 さっきの金属音の方角を思い出す。

 鍵が落ちた音。

 誰かが“儀式を開始するスイッチ”を落とした音。


 すると、遠くで放送が鳴った。


「放送委員よりお知らせです。

 本日は清掃当番の変更が――」


 その瞬間、放送の音が一拍だけ歪んだ。


「――当番の変更が――

 ……とうこ……」


(混ざった。名前呼びが校内放送に侵入した)


 首元の刻印が冷たく疼く。

 紗灯が、わたしの足元で小さく叫ぶ。


『……うえ……おと……

 そこ……ちゅうしん……』


(上? 音? 放送室……?)


 わたしは決断する。

 中心は、旧資料室じゃない。

 “代替儀式”の中心は、もっと日常に紛れる場所だ。


「みゆ、しずくを保健棟へ。

 わたしは放送室の方を見てくる」


「灯子、ひとりで!?」


「大丈夫。……紗灯がいる」


 紗灯の影がぎゅっとわたしに重なる。

 その瞬間、しずくの影の欠けが少し戻った。


(紗灯の影は“縫い止め”にもなる)


 階段を上がり、放送室の前へ。


 扉は閉まっている。

 中は静か。

 でも、扉の下の隙間に“影が落ちない線”が一本走っていた。


(無影域の“中心線”……)


 わたしは推理スロットを立ち上げる。


(中心を割るには、構造を確定する必要がある)


A:禁書鍵の返却矛盾(SR)

B:古札:名欠戻(SSR)

C:媒介札の気配(推定) ※ここはまだカードが無い


 足りない。

 カードが一枚欠ける。


 そのとき、床に何かが落ちているのが見えた。

 名札プレート。

 鍵のタグ。

 “放送室”と書かれているはずのところが、空白になっている。


(鍵タグの文字欠落……!)


【証拠カード取得】

『放送室鍵タグ:文字欠落』(SR)

説明:代替儀式の中心が日常設備に侵入。鍵やタグから順に名が消える。


 わたしは三枚を並べ直す。


A:放送室鍵タグ:文字欠落(SR)

B:古札:名欠戻(SSR)

C:禁書鍵の返却矛盾(SR)


 スロットが回転し、結果が落ちる。


【中級推理:結果】

・代替儀式の中心は「放送室の床下」

・“名を呼ぶ導線”を校内放送で拡散している

・中心を割る方法:

 ①放送設備を停止(主電源遮断)

 ②床下の媒介札を回収

 ③回収後、札を“封”の文字で折り返す


【警告】遮断時、影が三重化する可能性


(影三重化……ここでも来る)


 わたしは息を吸い、扉に手をかけた。


 同時に、背後で小さな足音。


 振り返ると、廊下の向こうに“誰か”が立っている。

 制服姿。

 顔がよく見えない。

 でも、その影だけが濃い。


(……もう一人の加害者? それとも黒幕の影?)


 影はゆっくり手を振った。


 そして校内放送がもう一度だけ歪む。


「……とうこ……

 こっち……」


 わたしは返事をしない。

 しないまま、扉を開けた。


 放送室の中は機械の匂いがした。

 そして床の一角だけ影が落ちない。


(ここ……中心だ)


 わたしは主電源へ手を伸ばす。

 切れば、校内放送は止まる。

 でも、影が三重化する可能性がある。


 紗灯が息を呑むように言った。


『……おねえちゃん……

 きって……

 でも……すぐ……ひろって……』


「分かってる」


 主電源を落とした。


 ブツン、と音がして、校内のざわめきが一瞬だけ静まる。

 その静まりの中で──影が増えた。


 床に、わたしの影。

 紗灯の影。

 そして、放送室の機材が作る“第三の影”。


(重なった……!)


 刻印が氷みたいに冷たく疼いた。


【影落ち進行:上昇(短時間)】


 わたしは迷わず床下点検口を開け、手を突っ込む。

 湿った冷気。

 指先に紙の感触。


 媒介札。


 引き抜いた瞬間、札が“呼吸”したように震えた。


(触っただけで、奪おうとしてくる)


 札を折り返し、推理スロットの指示通りに“封”の形を作る。

 折り目にわたしの体温が染みる。


 すると、無影域の線がすっと薄くなった。


 放送室の空気が少しだけ“普通”に戻る。


(割った……中心を一回、割った)


 その瞬間、廊下の影が消えた。

 立っていた誰かも、いない。


 でも──床に、何かが落ちていた。


 小さなヘアピン。

 見覚えのある形。

 “転入前の学校”で、紗灯の周りにいた子がつけていた物。


(……もう一人の加害者が近くにいる)


――――――――――

 中心は一度割れた。

 だが黒幕は“代替”をやめない。

 次は、透子が“別の場所”で動く――。


 →6-7B へ続く

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