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影喰 - KAGEGUI - 白鷺の夜鳴き【推理ホラーゲーム風味】  作者: 臂りき
第5章 静かな朝に潜む名前の歪み
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5-6 資料整理と初の“中級推理スロット”──影が3つ重なる場所

 図書館を一度出て

 中庭のベンチに腰を下ろした。


 昼休みはすでに半分以上過ぎている。

 でも、今日の“揺らぎ”は

 普通の学院生活の中にしては異常すぎた。


(結の影……鍵の消失……古札“名欠戻”……

 たぶん今が、一番“揃い始めた時期”だ)


 風が吹く。

 それと同時に、足元の紗灯影がふるりと揺れた。


『……ここ……すき……』


(中庭は影が薄いから……紗灯は安心できるんだね)


 鞄からノートとペンを取り出し、

 カードの内容を整理しはじめた。



「……灯子ちゃん?」


 声をかけてきたのは、

 普通の子・綾瀬(あやせ)みゆ だった。


(みゆ……。普通の子だけど、影に敏感なタイプだ)


「どうしたの?」


「ちょっと、相談……してもいい?」


「もちろん」


 みゆの顔は

 いつもの明るさより半歩だけ沈んでいた。


(今日だけじゃない……昨日から少し変だった)


 みゆはベンチに腰を下ろし、

 周囲をきょろきょろと見渡してから小声で言った。


「ねぇ……灯子ちゃん。

 “名前がうまく思い出せない子”……

 最近、他にもいるって聞いたことある?」


(……来た)


 わたしは表情を変えずに答える。


「どうして?」


「今日、授業中……

 しずくがずっと自分の名前をノートに書いてて。

 でも、その字がね……変なの」


「変?」


「“しずく”ってひらがななのに……

 途中で、文字が思い出せなくなるみたいな……

 み……し……く……みたいな……」


(名前の欠落……!

 一般生徒にまで始まってる……)


 背筋が冷えた。


(まだ“初期”だけど、このまま放置したら……

 儀式【名欠戻】が進む気がする……!)


「ねぇ灯子ちゃん……

 わたし、ちょっと怖いの。

 あれ、病気とかじゃないよね?」


「病気じゃないよ、大丈夫」


 わたしは微笑み、

 しかし心の奥は戦慄していた。


(これ、“もう時間が無い”ってこと)


 みゆはペンを握りしめながら言った。


「……もし手伝えることがあったら、言ってね。

 灯子ちゃん、なんか……困ってるみたいで」


(……気づいてるんだ、みゆ……

 あなたは“普通の子”だけど、感受性が高い)


 わたしは優しく頷いた。


「ありがとう。

 本当に助かるよ」


 みゆは安心した顔で席を離れた。


 その背中は

 どこから見ても普通の女の子。


 なのに──


(みゆの影、今日……ほんの少し“薄い”)


 すっと息を吸った。


(彼女たちを巻き込む前に、

 わたしが“推理”で突破口を開くしかない)



 わたしはノートを開き、

 カードを紙に並べるように視覚化する。


手持ちの重要カード:


『禁書鍵の返却矛盾』(SR)


『中庭の陽炎影』(R)


『名簿漢字の消失(複数)』(SR)


『一般生徒の影異常:初期』(SR)


『古札:名欠戻』(SSR)


『書架監視影:昼』(R)


『結の影変質/名前奪取』(SR)


(よし。

 ここから“3枚”を選んで

 中級スロットを回す……)


 慎重に3枚を選んだ。


A:古札:名欠戻(SSR)

B:名簿漢字の消失(SR)

C:書架監視影:昼(R)


(儀式の核 + 名前の欠落現象 + 監視影……

 この3つから、“黒幕の位置”が絞れるはず)


 スロットが回転するように、

 頭に白い光が満ちる。


 ページがめくれる音。

 影が交差する音。

 誰かが名前を呼ぶ寸前の呼気。


 全てが情報の粒子になって

 わたしの視界に収束していく。


 ──そして。


【推理スロット:中級結果】

●“儀式の第二段階”は学院内の三つの場所で進行


《1》旧資料室(図書館の北端)

《2》白鷺神社(古札の出所)

《3》旧寮跡(裏山側・禁足地に隣接)


●黒幕の現れる可能性が最も高い場所:

旧資料室地下層


●注意:

“影が3つ重なる場所”には絶対近づくな

影の位相が乱れ、名前が消える可能性が高い


(……!

 旧資料室の“地下”!?)


 わたしは思わず息を呑んだ。


(図書館じゃない……

 禁書室よりも、

 もっと“深いところ”……)


 だが、その瞬間──

 視界に“誤差ノイズ”が走った。


【誤差:黒幕の干渉】

・推理の3%が上書きされました

・“影が3つ重なる場所”は別の地点の可能性

・情報が一部隠されています


(……黒幕が、推理を“横から触ってきた”……!?)


 紗灯影が灯子の足元で強く震えた。


『……おねえちゃん……

 “3つの影”……いや……

 そこ……いっちゃ……だめ……』


(紗灯まで拒否反応……

 “3つ影”の意味……まだ分からない……)


 一旦深呼吸し、

 スロットが出した“もうひとつの情報”に目を向ける。


【付加推理】

“結の名前奪取”は第二段階の前触れ


名前を失った者は影に飲まれ、

第二段階完了と同時に

“影のうつわ”として扱われる。


対象:

しずく

数名の不明生徒


 次に影が向かうのは──

 紗灯の“名前”。


(やっぱり……紗灯が狙われてる……)


 胸が重く痛む。



「……戻ろう」


 わたしは立ち上がり、

 図書館に戻るため廊下へと歩き出した。


 その瞬間だった。


 パンッ!!


 乾いた破裂音とともに、

 図書館前の天井灯が爆ぜた。


「きゃっ!? なに今の!?」


 こはるの悲鳴が中から聞こえる。


 破片が床に散らばり、

 その下に広がった影が“異様に濃い”。


(天井灯の破損……

 これ、“影による現象”!?)


 の胸を冷たい戦慄が走った。


 そして──

 散らばった破片の影の中に、

 ほんの一瞬だけ、

 “人の手の形”が浮かび上がった。


(……黒幕……見てる……)


 わたしが気づくと同時に、

 その影はすっと消えた。



(結の影も……

 しずくの名前の欠落も……

 紗灯への干渉も……

 全部“第二段階”のための準備)


(黒幕は

 “名前を奪って器を作る”儀式を完成させようとしてる)


(だったら、

 わたしはまず“旧資料室”を洗う)


 紗灯影がわたしに寄り添う。


『……いける……?

 おねえちゃん……むりしないで』


「行くよ。

 紗灯と一緒に」


 影はふわりとわたしの影に重なった。

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