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影喰 - KAGEGUI - 白鷺の夜鳴き【推理ホラーゲーム風味】  作者: 臂りき
第3章-Bルート(Aルート合流) 学院神社 ―― 影と祓いの境
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3-4 三つの影と、呼ばれた名

 祓所から戻り、境内に広がる白砂の上に立った。


 鳥居から漏れる薄い光が、石畳の中央だけを照らし出している。


 だが、その光は“自然の灯り”ではない。


 まるで、

 誰かがわたしをここに誘導するように

 意図的に敷かれた光。


(ここ……来いって言われてるみたい)


 影が足もとで震えた。

 緊張しているようにも、怯えているようにも見える。


 そのとき。


 白砂の上に、何かが現れた。


 三枚の“影の板”。


 黒い長方形。

 光を吸い込み、輪郭を曖昧にした板。


 その前に巫女少女が立っていた。


 風もないのに袖が揺れ、

 髪が静電気に引かれるようにふわりと浮く。


「……始めるの?」


 わたしは息を呑む。


「始める、って……推理のこと?」


 少女は首を縦に振る。


「三ツ影ノみつかげのぎ

 人間の影、怪異の影、そして“呼ばれた影”。

 三つが揃った場所でしか、できない推理」


 少女は静かに言う。


「あなたの影は“汚れ”も“光”も両方を抱いている。

 だからこそ、ここで確かめるべき」


 わたしは言った。


「わたし……答えたい。

 紗灯は、誰に追い詰められたのか。

 どうして儀式に巻き込まれたのか」


 少女は微笑んだ。


 それは優しさではなく、

 試す者の微笑み。


「では、置きなさい。

 あなたの“証拠”を」


 わたしは腰のポーチから

 三枚のカードを取り出した。



 カードをかざすと、

 鳥居の光がそれに反応し、

 カードの文字が淡く浮かび上がる。


SSR:紗灯の屋上メモ(完全版)

R:涙の足跡(拝殿)

SR:三ツ影ノ儀(木簡)


 これらはわたしの記憶と影を通じて手に入れた証拠。


 神社の光は三枚のカードを包むように照らし、

 静かに震え始めた。


 巫女少女が言う。


「石畳の上に、順番に置いて」


 石畳の中央へ進む。


 その瞬間――


 石畳が“変質”した。


 黒い線がひとりでに走り、

 三つの印が刻まれる。


(……推理を置く場所……)


 わたしは息を整えた。


(順番を間違えたら……影が狂う。

 ここは、ゲームじゃなくて本物の神域……)


 影が震え、

 足もとで細く波紋を描く。


 巫女少女が静かに告げる。


「カードを置く順番で、

 儀式の“真相の層”が変わる。

 正解なら、紗灯さんの声が届く。

 間違えれば、影があなたに噛みつく」


 背がぞくりと震えた。



 わたしは一番大事なものから順に置いた。


【Aスロット】


『紗灯の屋上メモ(完全版)』

・「三人」

・紗灯の筆跡で書かれた言葉


 これが全ての核心。


 石畳に置いた瞬間、

 光が黒く濁ったように揺れた。


(これが……最初の鍵)


【Bスロット】


『涙の足跡(拝殿)』

・小さな足跡

・紗灯が泣きながら神社に駆け込んだ痕


 カードを置くと、境内の空気が少し震えた。


 少女は言う。


「“どう動いたか”が次の鍵」


【Cスロット】


『三ツ影ノ儀(木簡)』

・儀式の構造そのもの

・三つの影が揃うとき“扉”が開くと書かれた古記


 わたしが置こうとした瞬間――


 ザ……ザ……ザ……


 影が石畳の下から這い上がってきた。


 六本指の影の手。

 祓所で見た“影写しより深い何か”の欠片。


(邪魔……しようとしてる?)


 影の手が木簡のカードに触れようとした瞬間、

 わたしは影を踏みつけ、腕を伸ばしてカードを置いた。


 石畳が光り、三枚のカードが線で繋がる。


 鳥居の光が集まり、

 境内の影がすべて石畳へ吸い込まれた。


 少女が静かに呟く。


「——推理、成立」



 大地が震えた。

 灯子の足もとから黒い風が立ち上がり、

 三つの影が“立ち上がる”。


 ひとつめ。

 細長く、影写しに酷似した濁った黒。

 → 怪異の影(影界)


 ふたつめ。

 人間の影と同じ形をしているが、揺らぎが強い。

 → 人間の影(加害者の一人)


 みっつめ。

 影の輪郭が異様に薄く、

 紗灯に寄り添うかのように揺れている。

 → 呼ばれた影(紗灯自身の影の残響)


 息を呑んだ。


(紗灯……

 あの日、“二つの影”から挟まれてた……?)


 巫女少女が頷く。


「そう。

 妹さんは押されたんじゃない。

 “影の狭間に引きずり込まれた”の」


 胸が痛む。


(三つの影……

 これが《三ツ影ノ儀》の本質……?)

                                                                              

 少女は静かに続ける。


「あなたが追うべきは三つの影。

 でも——そのうち一つは“人”。

 そしてもう一つは“あなたを今も見ている”」


 わたしは拳を握った。


「名前は……分かるの?」


 少女は首を横に振った。


「影が、名前を隠している。

 でも——“性質”なら分かる」


 少女は指を一本ずつ立てていく。


 1本目。

「普通の子だったはずが、集団の中で変質した影」

 —— A群:普通の子の影


 2本目。

「怒りや妬みを抱え、影が濁りやすい子」

 —— B群:闇を抱えた子


 3本目。

「明るい笑顔の下で、影が笑わない子」

 —— C群:陽気だが裏がある子


 胸がざわつく。


(この学院には……

 この“3タイプ”の子が確かにいる……)


 少女はゆっくりとわたしを見つめた。


「——三人のうち、一人は“C”。

 笑っているのに、影だけが笑っていない子」


 背に冷気が走る。


 あのタイプの子。


 クラスにも。

 中庭にも。

 旧校舎に行く途中にも。


 “誰か”がいた。


 その顔が、薄く脳裏に浮かぶ。


(……あの子……?

 あの笑顔……どこかで……)


 影の輪郭がわたしの足もとで鋭く尖る。


【推理成功:中級推理クリア】

【影落ち:62% → 60%(安定化)】

【次章解放フラグ:《裏山・禁足地》】

【犯人候補群が3タイプに絞られる】

【灯子の記憶領域に“顔のぼかし”が発生】


 巫女少女は最後に告げた。


「次は、裏山の“禁足地”。

 そこに、紗灯さんが最後に“抗った痕跡”が残っている」


 わたしはカードを胸に抱き、

 静かに息を吐いた。


「紗灯。

 あんたを傷つけた影……

 絶対に暴いてやる」


 神社の闇は、わたしを裏山へ誘うように揺れた。


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