BAD END①「影置換(かげちかん)エンド」――『灯子、消える』
【灯子が”紗灯影を抱こうと手を伸ばした”場合の分岐】
紗灯の影が、風のない屋上の中央で揺れていた。
その揺れ方は、幼い子が両手を伸ばして
“抱きしめてほしい”と願っているみたいだった。
胸の奥を掴まれるような痛みに負けるように、
灯子はそっと手を伸ばした。
「紗灯……もう、離さないから……」
その瞬間だった。
黒い影が、花が咲くみたいにひらりと形を変えた。
音が無かった。
ただ、世界の“線”だけがふっと消えた。
紗灯影の輪郭が灯子の手を優しく包み込み──
そのまま、灯子の腕を “飲み込んだ”。
「……あれ……?」
引き抜けない。
影の中に沈むように、
皮膚ごと吸い込まれていく。
『……おねえ……ちゃん……
いっしょ……だよ……?』
優しい声。
でも、その優しさは“死の誘い”だった。
灯子の身体がずぶずぶと沈む。
膝。
肩。
胸。
影の中へ沈んでいく。
「紗灯……やめ──」
叫びは影に飲まれた。
最後に見えたのは、
紗灯影の中で静かに笑う紗灯の姿。
『……もう、だいじょうぶ……
もう、こわくない……
だって……おねえちゃんも……いっしょ……』
影は完全に閉じた。
屋上には、
灯子の影だけが、薄く揺れて消えた。
●BAD END:影置換エンド
灯子の存在は紗灯影に吸収され、
誰の記憶からも“汐見灯子”の名前が消える。




