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プロローグ

〈プロローグ〉

 昔々、あるところにウィリアム・テーラーという少年がいました。ウィリアムは十五歳になったばかりでした。

ある秋の昼前、ウィリアムは農具等が置いてある納屋の裏で薪割をしていました。少し疲れたので水筒の水を飲みつつ汗を拭き休憩していると、納屋から話し声が聞こえてきました。


「今年の秋の収穫はいつもよりも少なかったわね。」


「そうですね。いつもの半分くらいしかありませんわ。」


「この冬を五人が越すのに貯えが足りなくなるかもしれないわね。」


「ええ。どうしましょう。」


それは、ウィリアムのお母さんとコーエン夫人の声でした。ウィリアムのお父さんはブドウ農園を経営していましたが、二年前に病気で亡くなりました。それからはお母さんがお父さんのブドウ農園を引き継ぎました。農園では、お母さんとウィリアム、それからお父さんが元気な頃から農園の仕事を手伝ってくれているコーエン夫妻とその娘のシンシアの五人が働いています。

ウィリアムは耳を壁にピタリと張り付けて話を聞きました。納屋でのひそひそ話は続きます。


「仕方がないわね。今のうちから何とか切り詰めて、春を迎えられるように備えましょう。」


「はい。」


足音と戸が閉まる音がして、納屋の中は静かになりました。

壁から耳を離したウィリアムは苦々しい気持ちで眉をひそめました。


(今年の収穫は、そんなに少ないのか。夏の間、僕はさぼりがちだった。もっとしっかりと働いていればこんなことにはならなかったかもしれないのに。)


川辺での魚釣り、水遊び、草原で野ウサギを追いかけたこと。楽しかった夏の思い出は色あせ、押し寄せる波のような後悔の念にさらわれて崩れるように消えていくようでした。


(ぼくが何とかしなければいけない。そうだ・・・・・・)


ある考えを思いついたウィリアムは薪割りを放り出して、走り出しました。








お読みいただき、ありがとうございます。

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