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03 詩 最後の箱
「引っ越しの準備にとりかかるぞ」
「さあ、荷物を運び出そう」
最後に残された箱
部屋の中に残された箱
誰かが運ぼうとしても
その箱は移動を拒否する
ここにいたいからと
ここにまだいたいからと
最後に残された箱
他の箱に別れを告げて
とうとう一人ぼっち
おいていかれてしまった箱
それでも これで良いのだと
自分に言い聞かせて 残り続ける
「本当にあの箱はおいていくのか?」
「ああ、本人ーーじゃなくて本箱が望んでいないからな」
「ストーリー」
家の主人がなくなった。
箱の中身の思い出の品は、ここに残りたいと言っている。
建物が解体されて、運命を共にするとしてもかまわない。
俺達の主は、あの主人だけだからと言っている。