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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この世界に、さようならを。

作者: おかゆ

生きにくいと感じる人へ。


「なんでわかってくれないの?」


目の前で泣き崩れる親友に言われた。


(なんでわかってもらえると思ったの?)


喉まで出かけたその言葉をぐっと飲みこむ。


「わかってるよ。」




本当はわかってない。


そんなこと、知らない。


自分の固定概念を押し付けているだけのように感じる。




「なんでわかってくれないの。」


「なんでわからないの?」


「貴方に人の心はあるの?」




今までの人生で耳に胼胝ができるほど言われてきた。


”なんで”


その言葉に縛り付けられる。





わかってあげなきゃいけない。


じゃないとおいて行かれる。


そんな恐怖心。




皆はそれを”普通”にこなしている。




人の心なんてわかるわけがない。


わかる人、それはただ、


わかった気になっているだけだ、


そう思う。





今日も言われた。


「なんで人の気持ちを汲み取れないの?」


何でかなんて私が知ってるわけないじゃん。


「普通にしなさい。」


”普通”ってなに?


「世間が許さないぞ。」


”世間”ってなに?




「もう疲れた。」




いつの間にか口に出ていた。


今私は屋上にいる。


誰か止めてくれないかな、


とか、


人って死にたいって思ったら


あっけなく死ぬもんなんだな


と思ったり。


この世界に心残りなんてなかった。


何も期待していなかった。


「なんで、そんなに追い詰められてるの?」


私だってわからない。


私にもう、聞かないで。




ずっと人を欺いて生きていた気がする。


いつの間にか、


本当の自分を出せなくなっていた。




”普通”、”世間”


わからなくなった。


”普通”という言葉。


皆は普通で私は普通じゃない。


”世間”という言葉。


それは実際にあるものじゃない。


自分たちの意見を正当化するための盾だ。


上手く使っているだけで、


他人を傷つけ、貶めているとは誰も思っちゃいない。




それでも私は向き合ってきた。


”世間”や”人間”と。


私は人間じゃない。




「信じてるから。」




そんな言葉に裏があるんじゃないか、


この人が私にどれだけの時間で失望するのか、


そんなことを考える。




私は異質だ。


この世界の雑音、不要物。




「高層ビルの屋上ってこんなに風吹いてるんだ。」




この世界にさようならを言う。


この世界に、生まれ変わりませんように。


私のような人がこれ以上増えませんように。


そんな願いを込めて。




足が空を蹴る。


ふわりと、体が空に溶けていく、


体が宙に投げ出される。


風が優しく抱きしめて、まるで見えない腕が導いてくれるようだった。




「ああ、気持ちいい……」




ビルの灯りがきらめき、星のように瞬く。


まるで宇宙を旅しているみたいだ。


体が軽くなる。世界が広がる。


手を伸ばせば、光が指先に触れるような気がする。


風が頬を撫で、髪をくすぐりながら、耳元で誰かがささやく。




「ほら、自由だよ」




この世界に、さようなら。


心の奥から湧き上がる幸福感に身を任せ、目を閉じた。

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