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5,戦技《圧縮:段階A》。

 


《可愛い妹とエッチできる》スキルは発動された。らしいが、感覚的に何か変わった、ということはない。もしかして不発だろうか。念のためステータスカードを見てみる。


 全体戦闘評価 レベル測定不能

 物理攻撃力 9999

 物理防御力 9999

 魔法攻撃力 0

 魔法防御力 9999

 通常スキル 無し

 固有スキル《妹えっっ》

 上記スキルが発動により、専用の特殊アビリティが自動発動、また戦技の使用も許可された。戦技一覧を開示しますか?

 特殊アビリティ《無の地》→全ての状態異常の攻撃を無効化する。


 なんだかなぁ。9999とか、やりすぎ感があって、逆に胡散臭い。やっつけ感さえ感じる。

 このステータスカードって、当てになるのか? じっくりと考えこんでいたところ、わが従者、メイジのライラは、魔杖を棍棒がわりにし、強行突破をはかろうとしていた。対峙するのは、騒ぎを鎮静化しようと出張ってきた、治安局の連中。

 ライラはメイジのため、ファイターなどの通常スキルは使えない。しかし異常に高い物理攻撃だけで、保安局の隊員程度ならば無双できる。ぶんぶん振り回す魔杖がヒットするたびに、隊員たちが吹っ飛ばされ、伸びていった。


 しかし時間稼ぎにはなったようで、ライラが指し示した先で、名も知らぬわが妹が、貴族家の飾り立てられた馬車に放り込まれる。


「あぁ、救世主さまがハメハメする妹さんが、馬車に乗せられてしまいました!」

「そういうことは公衆の面前で言わないでくれるか。犯罪臭しかしない」

「ですがご安心を。あの馬車には貴族家の紋章が記されていました。どこの者かは分かりましたので、たとえ馬車を見失っても追跡は可能です。しかしながら、ここで追いついて、妹さんを救助したほうが話が早いですね」

「確かに」


 だが追いかけようとしたところ、まだ動ける治安局の隊員が立ちふさがる。そいつは上背が2メートルはあり、両手にナックルダスターを装備していた。


「おい、てめぇら。うちのボスが主催している奴隷オークションを邪魔しようとするとは、いい度胸だな」


 まてよ。この大男は、治安局の隊員ではない。奴隷オークションを主催していた組織のものだ。感じからして、用心棒ということか。腕はたちそうだな。


「オレを、そこいらの治安局の奴らと一緒にしねぇことだな。オレはロット。元冒険者、Dランクのファイターだぜ」


 ライラがぷぷっと笑う。

「おっと、かませ犬っぽいのがきましたね。救世主さまのお手を煩わせることはありません。ここは、わたしが手早く撃破しましょう」

「大丈夫か? この流れだと、まずお前がボコられるぞ」

「ご安心ください。わたしはメイジです。物理特化のファイターごときに、遅れは取りませんよ! 《ファイアストーム》をお見せしましょう!」


 これにはロットも、なんだと、という顔。

「てめぇ、ファイアストームを撃てるレベルのメイジだというのか!」


 ライラは不敵に笑うが、ここまで棍棒として酷使してきた魔杖が寿命を迎えた。ぽきりと折れて、地面に落ちる。


「あ、すみません救世主さま。あとはお任せします」

「……」


 ライラが戦線離脱し、ロットも余裕を取り戻す。ナックルダスターをがんがん叩き合わせて、臨戦態勢に入った。


「へっへっ。ここのところ、誰も殴り殺してしなかったからな。いい獲物がきてくれたもんだぜ」


 近接戦は嫌だなぁ。物理防御9999が本当なら、ランクC程度の敵、ノーダメだろうが。まったく信用していない。何か遠距離攻撃はないものか。

 戦技というのは、《可愛い妹とエッチできる》スキル発動中のみ使える技らしい。ようはスキルの入れ子構造。

 この戦技一覧を表示すると、とんでもない量が表示される。だが今どきは標準装備の検索絞り込み機能があった。

『遠距離』『即発動』で検索。さらに上位に出たものを選択。


 戦技《圧縮:段階A》、発動。


 ロットが殴打しようと突撃してきた。

「おらぁぁぁ、くらいやがれぇぇぇ!」

 瞬間。大男のロットの身体が、圧縮された。缶詰に入るくらいに。グチャグチャの肉塊となってしまった。

 グロいな。

 にしても、そこは心優しいのが売りのおれである。さすがに用心棒していただけで、肉塊のミンチENDは気の毒すぎる。


「あーーー、やりすぎた。なんか、これはあんまりだから、戻してあげる戦技はないのか!」


 ここで、ある野良犬を紹介しよう。この野良犬、行きつけのゴミ捨て場が、城塞都市の美化団体により清掃されてしまい、今日はまだ餌にありついていなかった。おかげで腹をすかせて広場に来たところ、いいときにミンチとなった人肉を発見。

 生肉である点は目をつむろう。こっちは空腹だワン。

 というわけで、この野良犬が、ロットの肉塊をくわえ、走り去っていった。


 おれは唖然として見送ったが、まぁ一匹の犬の空腹を満たせてやれたのだ。いいことしたものだ。


「とりあえず戦技《圧縮:段階A》は封印だな。手あたり次第に人間を肉の塊にしていると、グロすぎて、昼飯と夕飯しか喉を通らない」

「夜食は喉が通らないのですね、分かります」

「で、妹を連れていったのは、どこの貴族家だって?」

「城郭都市ゴルの五大貴族の一角ですね。このレベルの貴族家なら、通常はこんな公開オークションに参加せずとも、美女奴隷をいくらでもゲットできるはずですが。きっとご子息が、市井のオークションに参加してみたかったのでしょう」

「ふむ。まずは、話し合いで妹を返してもらえないか試そう。もうミンチは無し、死人も、暴力も無しだ」


「フラグをたてるのがお上手ですね、救世主さま!」

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