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かませ犬、目立つ

「はっ、この程度俺にかかれば余裕だな!」


 これが俺の口癖だった。

俺の名前はカマーセ、まあそこら辺によくいる冒険者だ。


 実力に何か特徴がある訳でもなけりゃ見た目がいい訳でもない。

中肉中背の黒髪黒目、歳は25と冒険者の平均年齢でランクはCランクとこれまた1番目立たない。

そんな俺だったのだが……

「おぉ! すげぇぞ、流石カマーセさんだ!」

――キラキラキラキラ


 そんな効果音が聞こえてくるようだった。

何故俺がこんな目を向けられることになったのかと言うと……色々あったんだ。

まぁ少し聞いて言ってくれ。






「おいカマーセ! 何そんなしけた面してやがんだ! こっち来て一緒に飲もうぜ〜!」

「色々あるんだよ、モヒーオ。ほっといてくれ」


 こいつは俺の親友のモヒーオ。

髪型がモヒカンなの以外特徴のない優しいやつだ。

今だって俺が悩んでるのを見て話しかけて来てくれた。


 ……でも悪いな、モヒーオ。

俺の悩みは相談してもどうにもならねえ。

そう言おうと、俺がモヒーオの方を見ようとした時……


「お! カマーセ、新人だぞ!」


モヒーオが話しかけてくる。


「ん? あぁ、もうそんな時期か……」


 俺たちはギルドマスターに頼まれこの時期増える新人にちょいと試練を与える事になっていた。


 というのも、この世界では15になると近くに住む者達が教会に集まり祝福の儀というものが受けられて、それを受けてからギルドに入るまでがセットになっているのだ。(別にギルドに入らなくてもいいんだが……)


て事で力を授かり全能感溢れる少年少女の鼻っ柱をへし折るのが俺たちの役目なのだ。


「行くか、モヒーオ」

「おう!」


そして俺はギルドに入ってきた少年に声をかけた。


「おいおい、お前みたいな子供がこの冒険者ギルドに何の用だ?」

「お前みたいなのは家でママのミルクでも飲んでな!」


 そして定番の絡みをする。

まあ、怖がらせて申し訳ない気もするがこれも本人の為と思い飲み込む。


「なんだ?お前達……ってそうか! これがテンプレだな! 楽しみにしてた異世界、早速こんな事があるなんて……最高だぜ!」


 その少年はなんか変なことを呟いていたが俺らはいつも通りに絡む。


「何言ってんだ? いいからとっとと帰りな。

それとも……俺と戦うか? ギャハハハハハ!」


 モヒーオが大笑いで屈辱感を与える。

こうすると調子に乗っている若いヤツらは大抵乗ってくる。


「ふっ、2人がかりでもいいぜ?」


 やはり少年は乗ってきた。

そのため俺たちは模擬戦場に行き戦うことに。

流石に2対1をしたらギルマスに怒られるためモヒーオから戦うことに。


「さぁ、行くぞガキンチョ!」


「どっからでも来いよ!」


 2人が白熱している。

俺はすることもないので魔力をいじって遊ぶ。

自慢じゃないが俺は魔法が使えてそこそこ得意だった。


 まあジョブは魔法騎士なので本職ほどでは無いのだが……

そして俺が魔法弄りに夢中になっているといつの間にかモヒーオと少年が戦っており、モヒーオが押されていた。


 俺は負けたら自分も戦わないといけないのでモヒーオを応援していたのだが……


「くそ! なんて強さだお前……」


「世間の厳しさを俺に教えてくれよおっさん!」


 とまあむちゃくちゃに舐められている。


(この後に戦うとか……キッツゥ〜)


 俺は少し先のことを考えて魔法への意識を疎かにした。

その結果、当然の様に魔法は暴発した。


……が、しかし、俺の魔法が暴発する少し手前で少年の火魔法の流れ弾が観客の方に向く。

そこに俺の風魔法が炸裂した結果……


「キャァァ!」


 突風が吹き荒れる。

新人の中の才能を見つけにここまで来ていた、ここの土地を治める貴族の娘に当たりかけた魔法を俺の魔法が弾き飛ばす。


 といってもほんとに少しズラす程度だったのだがタイミングが完璧過ぎた。

貴族の子に当たる事は無かったがギリギリだったので逆になんか凄いみたいな空気が流れ始めた。


 勿論俺の魔法が当たるまでは確実に当たる軌道だったので全員が原因である俺を見た。


「カマーセ……お前……」


 おいやめろ。

お前までそんな反応すると……くそ!かませ犬の血が疼く……


「はっ、俺にかかれば余裕だな!」


――ォォォォォォオ!


 全員が雄叫びをあげる。

俺も何となくガッツポーズをするが心の中は冷や汗ダラダラ。


 そしてそんな俺の場所に貴族の子が近づいてきて、話しかけてきた。


「あなたのおかげで助かったわ。後日何らかの褒美を取らせるから名前を教えてもらえる?」


「俺はカマーセ! 貴方が無事で何よりです!」


 貴族の子は何故か顔を赤くして帰って行った。

そして……


「俺が貰うはずだった名声を……おい! 覚えておけよ!」


 何故か新人の子にも目の敵にされる始末……

俺はただかませ犬として生きてきて、適当な嫁でも作り生きたかっただけなのに!


 そして俺の物語の歯車が回り出した。






ちなみに冒頭のカマーセの悩みは大したものじゃ無いです。

もしかしたら次の話とかで話題にでるかも?程度です。

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