夜のサーカス
感情に任せてささっと書きました…
至らない点があるかも知れませんが、是非読んでみてください。
トイレの窓から見える空はもうすっかり暗くなって、まだ読めない時計は、てっぺんで2つ重なっている。ぼくはねむいけど、我慢してテレビを見ていた。ニュースばかりで、ちっともおもしろくない。でも、そんな時間ももうすぐおわり。もうすぐしたら、お母さんがサーカスから帰ってくる。ピーッピーッという笛の音と、ブオンブオンというゾウの声が聞こえた。ぼくはお母さんを驚かせようと、そう、驚かせようとして、押し入れに隠れる。そわそわしながら、ぼくはお母さんが今日はどんなピエロを連れてくるのか考えた。お母さんは、ほとんど毎日、違ったピエロをサーカスから連れてくる。ぼくのために。やさしい顔のピエロや、こわい顔のピエロ。
お母さんが帰ってきた。押入れの隙間からこっそりそれを見る。今日は、ふとったピエロだ。昨日も来たやつだ。でもそのピエロは、昨日ほどやさしい顔をしていなかった。しばらくすると、お母さんとピエロはぼくのために演奏会をしてくれた。ピエロはシンバルで、お母さんはおうた。ガッシャーン。ガッシャーン。演奏をするとき、ピエロとお母さんは、決まって赤い顔をしている、演奏は派手なのに、お母さんはいつも泣いている。きっと悲しい歌なんだろう。つられてぼくも悲しくなる。
演奏が終わると、お家はすっかり静かになる。お母さんは疲れてソファーで眠る。ぼくは疲れているお母さんを起こさないようにそっと、片付けを始める。疲れていると、お母さんはすごく機嫌が悪いから、起きた時片付けをしてなきゃ怒られてしまうんだ。散らかしたピエロが片付ければいいのに、気づけばいつもいなくなっているので、仕方なく僕が片付ける。
ようやく片付けが終わったぼくは、お母さんが寝ているソファーの側の、カーペットに横たわる。大きくゴロゴロと音を立ててぼくの体に響き渡る雷に、ヘソを取られちゃわないよう、手できつくお腹を抱えて、僕は目を瞑る。ぼくは、深い、深い、底のない海に沈んでゆく。苦しいけど、こんなの我慢できる。海を抜けると、今度は空へ来た。黄色いぽかぽかとした光がぼくを包む。それがなんだか気持ちが良くて。光に包まれ、たかく、たかく、登ってゆく。苦しさは、もうない。消えゆく意識の中で、少年は思った。こんなに心地いい所があるなんて。こんど、お母さんに教えてあげよう。
ーーーーこうして、夜のサーカスは幕を閉じた。
小学校の頃の友人が親から虐待を受けていたらしく、今は施設にいるそうです。
よく宿題を忘れて先生から叱られていた彼を思い出します。
彼は大の嘘つきでしたが、みんなから愛されていました。
多分もう彼と会う事はないでしょう。
たとえ会ったとして、僕は前と同じように彼に接せられるでしょうか。
そんな感情を抱いてしまう僕に、僕は嫌になります。
どんな事があったとして、残酷にも一日はあっという間に過ぎていきます。それは彼も同じ。あなたも。私も。
こうしているうちにも、時間は経過しているのです。ほら、1秒。また1秒。
そうして僕は段々とあの頃の思い出から離れていく。置いてけぼりにされている気がして、悲しく、不安になります。
読んでいただき、ありがとうございました。