第8話 雨音の記憶
夢と現の狭間の中でうつらうつらと
記憶なのか
夢なのか
頭が重くて
身体がだるくて
熱はない
風邪なんだろうな
そう思いながら
ぐるぐるする頭で
出掛けるための準備をする
窓の外から雨の音
叩きつけるように
激しい音は
今日一日続くと聞いた
準備を終えて
階下に下りたら
様子を見かねた母に止められ
気づけば布団に戻ってた
今日は出来れば
休みたくない
ぼんやりしながら
そんなことを
誰にでもなく
呟いた
そんな気がする
何をしてたか
記憶にないけど
様子を見に来た母と何度か
会話らしい会話をしたと
なんとなくそう思う
小太鼓のように
小刻みに
激しく早く
雨の音
まるで子守唄に聞こえないのに
なぜかそれが心地いい
幾度目かの浅い眠りと
それを遮る浅い覚醒
もやのかかった頭と視界
そうして熱を持った身体と右手
どこから夢で
どこから現か
何もわからないままに
母が私ではない誰かと
一言 二言
言葉を交わしている気がした
何かが額に触れる感触
それはとても冷たくて
けれど優しく柔らかく
包まれている気持ちのままで
意識が深く落ちていく
落ちていくその最中
頬にも同じ冷たさを
わずかに感じた
そんな気がした
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