第6話 虹への願い
薄れゆく虹の姿を
青葉くんと一緒に見つめていると
彼がゆっくりと手を合わせ
虹に向かって小さくお辞儀をしていた
「願いが届きますようにって
改めてお願いしただけ」
不思議そうに彼を見つめた私に気づいて
照れたように青葉くんは笑った
「そっか」
私は彼を真似るように
両手を合わせて虹に向かって小さくお辞儀する
顔を上げ、細く長く息を吐き出す
お祈りするときの私のクセ
お祈りする前に息を吸って
お祈り中は息を止めて
終えたらゆっくりと息を吐く
生の気を取り込んで
生の気で満ちた状態でお祈りして
終わったら、お礼と共に吐き出していく
その方がなんとなく届きそうな気がする
根拠のない私の決まりごと
「何をお願いしたのかな?」
背伸びをした後、彼に聞いてみる
「この小さな幸せが
これからもずっと続くように」
青葉くんは笑顔でそう返す
「この小さな幸せ?」
そう思ったけれど、
そのことを考え込むより早く
青葉くんから話かけられる
「何をお願いしたの?」
聞いたのだから当然返ってくる質問
…だけど、その時の私は本当に興味本位で聞いただけだったから、聞き返されるなんてこと、まったく考慮してなかった。
心の準備が出来ていなくて
少しわたわたとしてしまう
青葉くんは、そんな私を見てか、
面白そうに笑った
「聞いたら困る?」
私は少し考え込んで、数度頭を横に振る
「この虹の架け橋が
ずっと繋がっていますように」
さらにしばらく時間を置いて
そんな答えを返してみる
特に嘘は言ってない
そのままの言葉じゃないだけで
「虹はいつか消えちゃうよ
お願い事を届けるために
空にまた還るから」
青葉くんはそう言うと、
楽しそうにまた笑う
そして私に手を差し伸べる
私はその手をためらうことなく
離さないようぎゅっと握る
「この繋がりが
ずっと続きますように」
彼の手の温もりを感じながら
心の中でもう一度
私は本当のお願いを繰り返した
年齢設定は特にありません。
だから、もしかしたら小学生かもしれないし、
高校生かもしれません。
高校生だとしたら
これで付き合ってないとか嘘でしょ?
と思っちゃいますけど