第2話 空色の傘
自分の部屋に入るのが
少し楽しく
少し苦しい
部屋の片隅に
隠れるように
ぽつんと置かれた空色の傘
結局あの日、駆け去った青葉くんに
傘を返すことは出来ず
「持ってって」は、
「君にあげる」か
「君にあずける」か
そんなことすらわからないまま
クラスで毎日顔は会わせるけど
これまで用事がなければ話しかけなかった相手に
突然話しかけるのって
周りから変に思われないかな、なんて
余計なこと考えてしまうから
なかなか話しかけられないままで
日にちが経つうちに余計話しかけづらくなっちゃって
でも、青葉くんからも何も言って来ないっていうことは
「君にあげる」
そういうことかな?
周りからは不思議な子
そんな風に言われてる
話しをしても
見た感じでも
不思議の意味が分からなかった。
少なくとも、私は不思議と思ってなかった。
けれどあの日の彼を見ると
不思議な子なのも納得できる
あの日、青葉くんは本当に
虹を見るため走っていったのかな?
もしもそうなら、
ほんの少し
一緒に行ければ良かったのに
そう思っている自分がいる
傘なんかを渡さないで
「虹を見に行こうよっ」て
そう言ってくれたら
どうしただろう
いきなりのことで
呆気に取られて身動きできない気もするけれど
もしかしたら自分もそのまま
一緒に走り出せたかも
同じクラスにいるのに
周りの目を気にして
うだうだ話しかけられない私に
そんなことできるはずないか
部屋の片隅に目を移す
隠れるように
ぽつんと置かれた空色の傘
ぱんっと広げて窓へとかざす
太陽の光を受け止めて
綺麗な色に明るく変わる
いつか、ちゃんと返さなきゃ…
最後までお読みいただきありがとうございます。
自分一人の心だって持て余すのに
自分ではない誰かの心の機微を表すことって難しいなって思います