表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 日浦海里
12/13

第12話 夜空の下

時が止まるように感じるのは

こういうときなんだろうか

『繋がっていて欲しいのは

 虹だけだった?』


青葉くんが不意に告げたその問いかけに

私は、辺りが薄暗くなりはじめるまで

何も返せずにいた


最初は意味を理解出来ずに

次は気持ちが整理できずに

最後に気持ちを言葉に出来ずに

何も返すことができなかった


夕陽が沈んでしまった今、

青葉くんはかざした手を降ろし

私をじっと見つめてた


「君と繋がっていられたら

 この先ずっと続いていけたら

 そんな風に願ったよ」


魂ごと吐き出すかのような気持ちで

薄く、細く息を吐き出したあと

彼にそう答えた私の鼓動は

お見舞いに行ったあの時よりも

ずっと激しく音を鳴らして

私は無意識の内に

片手で胸を押さえてた


『二人を繋ぐこの距離が

 ほんの少しでも縮まりますように』


そんな事を、ただ願うだけじゃなく

いつものようにただ手を握るだけじゃなく

青葉くんに触れてしまったから

踏み込みすぎてしまったから

繋がっていたい、と望んでいた

私の願いはもう叶わなくなるのかな


それは信じられないぐらいに

私の胸を締め付けた

壊れてしまいそうなほど

強く、強く締め付ける

そんな私の想いの鎖は

彼の笑顔が断ち切った


「同じだよ

 ずっと繋がっていたいって

 そんな風に思ってる」


そう言うと、

青葉くんは一歩、二歩と歩み寄り

私の隣に並んで立った


いつも伸ばしてもらった手

ずっと繋がっていたいと

そんな風に願った手


すぐ届く距離にあるその手に

私は触れていいのかためらって

自分の手のひらを開いたり握ったりしていた


それに気付いたのか、

青葉くんは少し困ったような、からかうような表情をして笑みを浮かべると

何も言わないまま、私の手をそっと握る


私は青葉くんの顔を見て

何も言わずに握り返すと

恥ずかしさから、彼の顔から視線を逸らす


アーチを描くことの無い距離

肩と肩が触れ合う距離が

彼の温もりを伝えてくれる


「お見舞いの時

 よくわからない内に

 青葉くんの家に向かってた」


風に消えそうな小さな声で

私は青葉くんにそう告げる


「心配だったからなのか

 わからないけど、

 ただ、そうしなくちゃって」


私と繋がる彼の手が

ぎゅっと強く握りしめられる


「もっと傍にいてほしかった

 たくさん話をしていたかった」


私もその手を握り返す


「お願いごと、叶うかな」


彼の言葉に私は微笑む


「お願いごとは必ず叶うよ

 私の願いは今、叶ってる

 この繋がりがずっと続きますように、って

 そんな風に願っていたから」


いつの間にか夕暮れは

すっかり夜の空へと変わり

いくつもの星達が

雨上がりの空に輝いていた

最後までお読みいただきありがとうございます


次回完結です

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ