第11話 魔法の時間の終わり
どんなに綺麗な景色だって
時と共に移り変わってく
人の心も、関係だって…
その日は昼過ぎに雨が止み
帰る頃には空は澄み切っていた
少し早めに上がれたから
夕陽を眺めに行こうか、と
いつも虹を見る場所に
風の吹く中一人で向かう
もうすぐ春が近いからか
吹き上げてくる風が強い
いつもの坂を登りきると
そこには彼はが立っていた
虹の出そうなそんな日は
一緒にここに向かうこと
それだけが暗黙の了解で
それ以外は出会えた時だけ
それが青葉くんと私との距離
ほんの少しの例外が
私が彼の家に行った
あの日のお見舞いぐらいだった
避けてたわけではないけれど
あの日以降は顔を合わせ辛かった
意識していた訳ではないけど
彼と視線が合わせるのが
なんとなく怖く思えた
だからこんな風に会うと
どうしていいか分からなくなる
そんな私を知ってか知らずか
彼はいつも通りに微笑む
「綺麗だよね
つい来ちゃったよ」
そう言いながら
その手の平を
夕日に向けてかざしている
指の隙間をすり抜けて
彼を照らす光の膜が
その姿を輝かせていて
眩しさに目を細めてしまう
「お見舞いの時
寝てしまってごめんね」
夕日の方を見つたままで
「来てくれて嬉しかったよ」
青葉くんは独り言のように
「大丈夫だと思ったんだけどなぁ」
言葉を続けていく
「こんなのでも風邪引くみたいだよ」
いつもと少し違う感じ
「これからは気をつけます
ごめんなさい
心配かけてしまいました
お見舞いの時
何も出来なかったね
本当にごめん
せっかく来てくれたのにって
お母さんにも呆れられたよ」
いつもよりも饒舌だから
いつもと違うと感じるんだ
聞いている内にそう感じた
「何かあった?」
言葉の切れ目を突くように
私は青葉くんに問いかける
彼の事を見れなくなってた、
そんな自分は忘れてた
夕陽が彼方に姿を消して
空が真っ赤に染まりはじめる
世界が闇に呑まれる刹那の
世界が輝く魔法の時間
「この虹の架け橋が
ずっと繋がっていますように」
君が不意に呟いた言葉は
いつか私が虹に願った
君との繋がりを願う言葉
「繋がっていて欲しいのは
虹だけだった?」
吹き抜ける風が不意に止まり
魔法の時間は終わりを告げる
消えゆく真っ赤な空の上
1番星が輝いていた
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